2022年6月28日、「目標達成に向けて一体感を生み出すチームビルディング」というタイトルで無料のオンラインセミナーを開催しました。
セミナーには、マーケティング部の柳澤とインサイドセールス部の岩崎が登壇。本稿では、今回のセミナーのレポートをお届けします。
チームビルディングの目的
突然ですが、チームビルディングの目的について、どのようなチームが望ましいと考えられるでしょうか? 例えば、全員がエキスパートの最強チームでしょうか。それとも、目標を確実に達成するのがいいチームでしょうか。
すでにご存じかもしれませんが、実は、チームというのは、「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」のほうが重要だといわれています。こちらは、Google社が2012年から4年に亘って「効果的なチームとはどのようなチームか」を調査・分析した結果によるものです。
つまり、効果的なチームにおいて個々のスキルや経験はそれほど重要ではなく、それよりも「協力的なチーム」を作ることが大事であるといえます。
*参考文献:石井遼介,『心理的安全性のつくりかた: 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える』, 日本能率協会マネジメントセンター, 5p, 2020
チームビルディングの効果・事例
続いて、チームビルディングの効果と事例について見ていきます。
まず、チームビルディングの効果について、上図の通り企業側は「人材の定着」や「教育コストの削減」「ナレッジの蓄積」などのメリットが期待できます。それに対して従業員側は、「会社や上司を信頼できるようになる」、「意義目標や業務に対する積極性を持てるようになる」などのことがメリットです。
また、従業員エンゲージメントが向上することでチーム力も向上し、「メンバー同士の理解が深まり、助け合いが生まれるようになる」といった効果も期待できます。さらに、「チーム同士のブレストが活発になる」、「ナレッジ共有ができるようになる」といった効果も見込めます。
これらにより従業員のチーム力が向上することで、会社側はチームの目標達成や売上・組織力の向上、組織の判断や決断に従業員がついてくるスピードが速くなるといったメリットが享受できるようになります。
とはいえ、いいチームを作ることは簡単ではありません。上図のように、チームビルディングは緊急度が低いものとなっているため、業務が忙しいと、どうしても後回しにされてしまいがちです。
しかし、最終的には、チームビルディングは従業員エンゲージメントとともに業績に跳ね返ってくるといわれています。したがって、チームビルディングは取り組む価値が大いにあるものといえるでしょう。
チームビルディングの事例
次に、チームビルディングの事例として、JR東日本テクノハートTESSEI 様の取り組みを紹介します。この事例は、TESSEI 様が行った「新幹線の清掃員のチーム変革」が主題となっています。
「7-Minute」というのは、新幹線が到着してから清掃員が乗車し、掃除を始めてから終えるまでの時間のことを指しています。
このたった7分の間に清掃員の方たちが取り組むパフォーマンスがあまりにも素晴らしいということで有名になり、従業員の意欲を高める経営例として、ハーバードビジネススクールの必修教材にまでなりました。TESSEI 様の事例は、それほどまでに高い評価を得ている事例です。
*参考文献:麻野耕司, 『THE TEAM 5つの法則』, 幻冬舎, 46~48p, 2019
その変革過程について、初めのうちは目標が設定されておらず、チームのメンバーのモチベーションも低い状態で、「自分の仕事に誇りを持てない」という方が多くいらっしゃったそうです。
そこで、意義目標や成果目標などの再設定をしたところ、チームとして、自主的・主体的にアイデアを出すように変化しました。
季節に合わせた制服の変更は、その事例のひとつです。
TESSEI 様では、目標の再設定後、現場メンバーからの提案で「季節感溢れる制服や髪飾りを身に付けて“おもてなし”を行う」といったアイデアが生まれました。夏に、アロハシャツや麦わら帽子などのアイテムを制服に用いることで季節感を演出し、お客様におもてなしの心を表現しています。チームメンバーの行動に主体性・自主性が生まれた結果の事例といえるでしょう。
このように意義目標は、何をやるべきかだけではなく、なぜやるべきかを設定するだけで、メンバーは自らの産むべき成果や取り組むべき行動に意志を持てるようになります。
*参考文献:麻野耕司, 『THE TEAM 5つの法則』, 幻冬舎, 46~48p, 2019
TESSEI 様がこのような会社になった最大の理由について、TESSEI 様いわく「自分たちの仕事を再定義したから(*1)」とのことです。仕事として、「清掃」ではなく「お客様に快適な空間を提供すること」という再定義を行いました。
実際に入社される方のモチベーションについても、制度上、最初の1年はパート社員として勤務することが必要ですが、その後は試験を受ければ正社員になれるといった制度が設けられており、こういった制度が現場のやる気をますますアップさせることに繋がっているそうです。
一般的に清掃の仕事は、3K「きつい・きたない・きけん」という扱いを世間一般的にはされていますが、実際に入られた方が「プライドを捨ててここにきたけれど、ここで新たなプライドを得た」といったように、TESSEIでの仕事に誇りとプライドを持てていることがこの事例では伝えられています。
このような制度改革が、現場のパフォーマンスやモチベーションに繋がってくるといえるでしょう。
*1 引用:新幹線 お掃除の天使たち | イベントレポート | スルガ銀行 Dバンク支店, https://www.surugabank.co.jp/d-bank/event/report/130306.html
チームビルディングの取り組み方
次に、「チームビルディングの取り組み方」についてみていきたいと思います。
これまで説明させていただいた内容も含め、本ウェビナーでは、株式会社リンクアンドモチベーション取締役 麻野耕司さんの著書「THE TEAM 5つの法則」を参考に内容を作成しています。この著書は、精神論や経験則ではなく、理論的かつ体系的な法則で科学的に解き明かされている内容となっており、これからご紹介する内容も同書を参考に構成したものとなっています。
偉大なチームに必要なのは『リーダー』ではなく『法則』
「偉大なチームに必要なのは『リーダー』ではなく『法則』」というところで、チームの法則は「ABCDE」の5つがあるのでまずはこちらを説明します。
Aim(目標設定)
初めの「A=Aim(目標設定)」について、いいチームとは「目標を適切に設定する」チームといえます。
目標設定には、「行動レベル」「意義レベル」「成果レベル」といった3つの分類があり、上図の左側にある図においては、「行動目標」が最もわかりやすいです。例えば、「今から教会をつくりましょう」というのが中間に位置する場合、「レンガを積んでください」というのが行動目標になります。「レンガを積む」というアウトプットをすればよいので、アクションが非常にわかりやすいのが特徴です。
それに対して「意義目標」というのは、アクションの抽象性が高いので、わかりづらくなりがちです。しかし、ブレイクスルーといった革新的なことや、社員からのアイデアが生まれやすくなるといった効果においては、意義目標が最も重要とされています。
残る成果目標は、意義目標と行動目標の中間という位置づけです。
参考文献:麻野耕司, 『THE TEAM 5つの法則』, 幻冬舎, 34~40p , 2019
Boarding(人員選定)
「B=Boarding(人員選定)」について、チームは「環境の変化度合い」と「人材の連携度合い」によって、4つのタイプに分けることができます。
例えば、「環境の変化度」と「人材の連携度」が大きいタイプは、「サッカー型」と呼ばれ、具体的にはスマホアプリの開発チームなどが挙げられます。スマホアプリはランキングが刻一刻と変わる非常に変化の早いビジネスかつ、プロダクトマネージャーやデザイナー、エンジニアなど、さまざまな職種の人間が密に連携し議論しながら開発を進めていくため、「環境の変化度」と「人材の連携度」、ともに大きいという領域に分類されるわけです。
また、上図左側の左上にある「柔道団体戦型」の場合、こちらはビジネスに置き換えると、生命保険の営業チームになります。こちらも、環境としてはいろいろな顧客に合わせてサイクルを回していくので、「環境の変化度」は大きく、ただし業務は一人の営業パーソンが完結させることが多いので、「人材の連携度」は小さいという分類になります。
このように、チームのタイプは4種類に分類することが可能です。
参考文献:麻野耕司, 『THE TEAM 5つの法則』, 幻冬舎, 56~82p , 2019
チームは4つのタイプに分類できると説明しました。では、各タイプに対してどのようなアプローチを行うべきか。
人材の連携度合いが大きいチームというのは、メンバーが異なるタイプを揃えることが好ましいです。例えば、野球やサッカーはポジションがいろいろあるかと思いますが、それぞれ得意分野があって、集合体として集まっているので、そういったイメージで、メンバーが異なるタイプを揃えたほうが効果を発揮するとされています。
反対に、人材の連携度合いが少ないチーム、例えばメーカー工場の生産チームだったり、生命保険の営業チームだったりは、均一性の高いチームなので、メンバーは似たタイプを揃えたほうが効果が得られやすいといわれています。
このようにチームの属性に応じてアプローチを変えることが望ましいでしょう。
参考文献:麻野耕司, 『THE TEAM 5つの法則』, 幻冬舎, 72~77p , 2019
Communication(意思疎通)
次に、「C=Communication(意思疎通)」について、「心理的安全性」という言葉をよく耳にすることがあるかと思うのですが、心理的安全性をチーム内に作り出すことで、メンバー間の情報共有ができるようになり、そこで解決策を立案し課題を乗り越え、目標達成ができるチームになっていきます。
「どうせ、所詮、やっぱり、この場で言っても無駄だ」というネガティブな感情をメンバーが抱いてしまう環境が、アイデアを妨げる要因となります。
だから、コミュニケーションとしてこのようなネガティブな感情を排除し、積極的な発言や行動を促すために「心理的安全性を重視した組織運営」に取り組んでいくことが重要です。
上図のように、メンバーが「いうべきではないNGワード」を思ったとしても言わないようにしたりだとか、あとは、リーダーであるマネージャーなどが「チームが作り出すべき機会(上図イメージ画像の右から2列目)」を作り出していけると、チームビルディングを成功に導くことができます。
参考文献:石井遼介,『心理的安全性のつくりかた: 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える』, 日本能率協会マネジメントセンター, 22~23p, 2020
参考文献:麻野耕司, 『THE TEAM 5つの法則』, 幻冬舎, 129~135p , 2019
Decision(意思決定)
「D=Decision」は、意思決定を意味します。チームの意思決定には3つの方法があり、どの方法にもメリットとデメリットがあるので、状況に応じて使い分けることが大切です。
その意思決定の3つの方法とは、「独裁」「多数決」「合議」の3つです。それぞれ「決定スピード」や「メンバーの納得感」が異なるので、チームの状況に応じて使い分けていきましょう。
参考文献:麻野耕司, 『THE TEAM 5つの法則』, 幻冬舎, 151~156p , 2019
Engagement(共感創造)
「E=Engagement(共感創造)」について、エンゲージメントを高めるためには、「Philosophy(理念・方針)」「Profession(活動・成長)」「People(人材・風土)」「Privilege(待遇・特権)」の4Pを高めることが重要とされています。
はじめの3つは「感情報酬」や「意義報酬」に分類され、Privilegeは「金銭報酬」にカテゴライズされます。
では実際に労働者は、「どのような企業」の「どの“P”」に惹かれるのでしょうか。上図は、共感創造の企業例です。このように、特徴的な“P”をもつ企業にはその“P”に合った人材が集まります。
参考文献:麻野耕司, 『THE TEAM 5つの法則』, 幻冬舎, 183~185p , 2019
かつての日本は社会全体が成長段階にあったので、「会社に何を求めますか?」と聞くと、1位が給料、2位が昇進でした。
しかし、社会全体が豊かになるにつれて「食べるために働く」という感覚は薄れつつあり、いま新入社員に同様の質問をしても、まずは「仕事のやりがい」、2位が「自己成長」で、3位が「職場のつながり」と答えるそうです。
正しい・正しくないにかかわらず、今の時代においては、金銭や地位以外に、「感情報酬」や「意義報酬」を生み出せるチーム作りが求められていることが伺えます。
参考文献:麻野耕司, 『THE TEAM 5つの法則』, 幻冬舎, 179~199p , 2019
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ITトレンド上半期ランキング2022 - 社内SNS・ビジネスチャット
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