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確定拠出年金があると退職金がもらえない?どんなケースがある?


同じ会社で長年働いている人にとって、退職金は老後資金や資産の形成に役立つものです。しかし、退職金は必ず受け取れるものではなく、制度そのものが存在しない会社も見られます。

本記事では退職金をもらえないケースや、よく代用されている確定拠出年金の仕組みを解説します。退職後に受け取れるお金を早めに確認し、余裕のあるうちに将来の計画を考えておきましょう。

退職金がもらえないケース

退職金がもらえないケースとしては、以下の4つのパターンが考えられます。勤務先の就業規則や賃金規定もチェックして、どのパターンに該当するかを確認しておきましょう。

もともと退職金がない

退職金の支払いは義務化されていないため、もともと退職金規定が存在しない会社もあります。厚生労働省が公表した平成30年の就労条件総合調査(※)によると、約2割の企業には退職給付制度がありません。

(※)2018年1月に調査を実施したもの。有効回答数は3,697社。

従業員数退職給付制度(一時金または年金)がある企業の割合
1,000人以上92.3%
300~999人91.8%
100~299人84.9%
30~99人77.6%
全体80.5%

(参考:厚生労働省「3_退職給付(一時金・年金)制度」)

大企業のように従業員数が多い会社は、退職一時金ではなく退職年金(確定拠出年金など)の導入率が高い傾向にあります。退職金制度を見直すケースもあるので、過去に支給されていたとしても制度の有無は確認しておきましょう。

退職金を確定拠出年金などで代用していた

厚生労働省の同資料によると、回答した企業のうち26.7%は退職年金を導入しています。退職金をもらえない場合は、以下の制度が導入されていないかを確認してみましょう。

<退職年金の種類>
・確定給付企業年金
・確定拠出年金
・厚生年金基金

中でも、近年では確定拠出年金の加入者が増えており、個人型(iDeCo)と企業型を合わせると1,000万人を超えています。

退職金制度が確定拠出年金に移行した

退職給付に係る債務を減らすなどの目的で、退職金制度から確定拠出年金(企業型DC)に移行する企業も見られます。実際の移行では、これまでの退職金資産が4~8年度に分けて企業型DCに移される場合もあるので、勤務先の方針はきちんと確認しておきましょう。

なお、確定給付企業年金や厚生年金基金についても、会社と従業員が労使合意を交わした場合に限って、確定拠出年金への移行が認められています。

受給に必要な勤続年数が足りなかった

退職金を受け取るには、退職金規定の勤続年数を超えている必要があります。厚生労働省の資料によると、退職金の受給に必要な最低勤続年数については、「3年以上4年未満」としている企業が多い傾向にあります。

退職金の受給に必要な最低勤続年数回答企業の割合
(会社都合)
回答企業の割合
(自己都合)
1年未満8.5%3.2%
1年以上~2年未満21.8%15.0%
2年以上~3年未満8.7%9.7%
3年以上~4年未満42.2%56.2%
4年以上~5年未満1.1%1.6%
5年以上9.3%10.9%

(参考:厚生労働省「退職手当制度がある企業の割合」)

勤続年数に3ヵ月や10日などの端数がある場合は、原則として1年に切り上げて計算をします。まだ退職をしていない人は、現時点での勤続年数と勤務先の退職金規定をチェックし、「受給条件をいつ満たせるのか」を確認しておきましょう。

退職金・確定拠出年金がもらえない会社の割合

退職金や確定拠出年金は、各企業が独自に制度として実施するものです。勤務先に規定がない場合は受け取れませんが、実際に退職金や確定拠出年金をもらえない企業はどれくらい存在するのでしょうか。

退職金制度の場合(一時金)

平成30年の就労条件総合調査によると、退職一時金をもらえない企業は全体の1割程度です。

従業員数退職一時金のみを導入している企業の割合退職一時金がある企業の割合
1,000人以上27.6%75.2%
300~999人44.4%81.9%
100~299人63.4%87.5%
30~99人82.1%94.6%
全体73.3%91.4%

(参考:厚生労働省「3_退職給付(一時金・年金)制度」)

「退職一時金制度がある」と回答した企業は、どのような方法で退職金の資金を準備しているのでしょうか。以下のデータは、上記と同じ資料の回答結果をまとめたものです。

従業員数退職一時金の支払準備形態(複数回答可)
社内準備中小企業退職金共済制度(中退共)特定退職金共済制度(特退共)その他
1,000人以上91.4%0.5%2.6%8.9%
300~999人81.6%15.1%9.0%7.6%
100~299人67.9%36.5%9.5%9.7%
30~99人49.8%50.8%12.7%11.1%
全体57.0%44.0%11.5%10.5%

(参考:厚生労働省「3_退職給付(一時金・年金)制度」)

上記の「中退共」や「特退共」は、国が実施している退職金制度です。これらの制度を通して退職金が支払われる場合は、退職後の手続きが必要になるので注意しましょう。

退職年金制度の場合(企業型確定拠出年金を含む)

次に同じ資料から、退職年金制度の導入率を見ていきましょう。

従業員数退職年金のみを導入している企業の割合退職年金がある企業の割合
1,000人以上24.8%72.4%
300~999人18.1%55.6%
100~299人12.5%36.6%
30~99人5.4%17.9%
全体8.6%26.7%

(参考:厚生労働省「3_退職給付(一時金・年金)制度」)

退職一時金に比べると、退職年金を導入している企業は少ない傾向があります。年金をもらえない企業は全体の73.3%であり、特に中小企業の導入率が低い結果となりました。

退職年金制度についても、資金の準備方法を見ていきましょう。

従業員数退職年金の支払準備形態(複数回答可)
厚生年金基金確定給付企業年金確定拠出年金企業独自の年金
1,000人以上7.2%62.4%63.9%4.5%
300~999人9.7%59.7%50.6%3.3%
100~299人13.6%49.2%46.6%2.7%
30~99人30.5%30.0%44.5%4.6%
全体20.0%43.3%47.6%3.8%

(参考:厚生労働省「3_退職給付(一時金・年金)制度」)

2013年の調査結果に比べると、確定給付企業年金や確定拠出年金の割合が増えています。一方で、厚生年金基金と回答した企業は25%ほど減っており、退職年金の準備方法が変わってきていることがうかがえました。

・退職年金制度の種類

退職年金制度には3つの種類があり、それぞれ仕組みや特徴が異なります。予備知識として、各制度の概要も押さえておきましょう。

<厚生年金基金>
厚生労働大臣の認可を受けた法人(厚生年金基金)が、年金資産の運用や管理をする制度です。加入者は老齢基礎年金の一部に加えて、基金独自の上乗せ分を受け取れるため、本来より受給額が増えることもあります。

加入条件を満たしやすい制度でもありましたが、2014年4月以降は法改正によって新規設立ができなくなりました。

<確定給付企業年金>
事前に受給条件を取り決めて、その内容に基づいて退職年金が支払われる制度です。「DB(Defined Benefit Plan)」や「給付建て年金」とも呼ばれており、運営形態によって以下の種類に分けられています。

基金型:厚生労働大臣の認可を受けた法人(企業年金基金)が実施する制度。
規約型:労使合意の年金規約をもとに、事業主が年金資産を管理する制度。

いずれの種類でも、将来的に支払われる額は確定しているため、従業員にとっては資産計画を立てやすいメリットがあります。仮に年金資産の積立不足になった場合は、企業が掛金を追加拠出しなければなりません。

<確定拠出年金>
毎月拠出した資産を使って、投資信託や保険などの金融商品を運用できる制度です。企業が実施するものは「企業型DC」、個人で加入するものは「iDeCo」と呼ばれており、各制度には以下のような違いがあります。

主な違い企業型DCiDeCo
実施主体事業主国民年金基金連合会
目的退職年金の一環として企業が実施する老後への備えとして個人が加入・運用する
加入対象者実施企業の従業員国民年金の被保険者
掛金の拠出者事業主加入者本人
手数料の支払者事業主加入者本人
拠出限度額毎月2万7,500円または5万5,500円
(※確定給付企業年金の有無で変動)
毎月1万2,000円~6万8,000円
(※職業や退職年金の加入状況によって変動)
運用商品会社共通の取り扱い商品各金融機関の取り扱い商品
掛金の取り扱い全額を損金算入できる全額が所得控除の対象
税務申告不要個人払込の場合は必要

退職年金として活用される企業型DCには、加入者個人が掛金を上乗せできる「マッチング拠出」と呼ばれる制度があります。上限金額はあるものの、個人で拠出した掛金には全て所得控除が適用されます。

また、2022年10月の法改正によって、現在では会社規約で併用を認められていないケースでも、企業型DCとiDeCoの同時加入ができるようになりました。

確定拠出年金は退職金の代わりになる?

確定拠出年金では、原則60歳になると「掛金の積立額+運用益」で計算される金額を受け取れます。毎月一定額の年金形式に加えて、一括で受け取る一時金も用意されているため、確定拠出年金は退職金の代わりになるでしょう。

また、確定拠出年金の運用益には税金がかかりません。通常の投資では20.315%の税金が課されますが、確定拠出年金では全てのリターンが非課税となるため、効率的に資産形成をしたい人にも向いています。

ただし、元本保証のない金融商品で運用する場合は、資産を減らすリスクもあるので注意してください。

どちらの受け取り方でも控除が適用される

確定拠出年金を一時金で受け取る場合は、以下の退職所得控除が適用されます。

退職所得の金額=(源泉徴収前の収入額-退職所得控除額)×1/2

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×加入年数(※80万円が下限金額)
20年超800万円+70万円×(加入年数-20年)

60歳で受け取った一時金を2,000万円として、加入年数が20年・25年の退職所得の金額を計算してみましょう。

<加入年数が20年の場合>

40万円×20年=退職所得控除額
=800万円

(2,000万円-800万円)×1/2=退職所得の金額
=600万円

<加入年数が25年の場合>

800万円+70万円×(25年-20年)=退職所得控除額
=1,150万円

(2,000万円-1,150万円)×1/2=退職所得の金額
=425万円

また、確定拠出年金を年金として受け取る場合も、以下の公的年金等控除が適用されます。

<公的年金等以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合>

受給時の年齢公的年金等の収入額雑所得の計算方法
65歳未満60万円以下0円
60万円超~130万円未満収入額-60万円
130万円以上~410万円未満収入額×0.75-27万5,000円
410万円以上~770万円未満収入額×0.85-68万5,000円
770万円以上~1,000万円未満収入額×0.95-145万5,000円
1,000万円以上収入額-195万5,000円
65歳以上110万円以下0円
110万円超~330万円未満収入額-60万円
330万円以上~410万円未満収入額×0.75-27万5,000円
410万円以上~770万円未満収入額×0.85-68万5,000円
770万円以上~1,000万円未満収入額×0.95-145万5,000円
1,000万円以上収入額-195万5,000円

<公的年金等以外の合計所得金額が1,000万円超~2,000万円以下の場合>

受給時の年齢公的年金等の収入額雑所得の計算方法
65歳未満50万円以下0円
50万円超~130万円未満収入額-50万円
130万円以上~410万円未満収入額×0.75-17万5,000円
410万円以上~770万円未満収入額×0.85-58万5,000円
770万円以上~1,000万円未満収入額×0.95-135万5,000円
1,000万円以上収入額-185万5,000円
65歳以上100万円以下0円
100万円超~330万円未満収入額-50万円
330万円以上~410万円未満収入額×0.75-17万5,000円
410万円以上~770万円未満収入額×0.85-58万5,000円
770万円以上~1,000万円未満収入額×0.95-135万5,000円
1,000万円以上収入額-185万5,000円

<公的年金等以外の合計所得金額が2,000万円超の場合>

受給時の年齢公的年金等の収入額雑所得の計算方法
65歳未満40万円以下0円
40万円超~130万円未満収入額-90万円
130万円以上~410万円未満収入額×0.75-7万5,000円
410万円以上~770万円未満収入額×0.85-48万5,000円
770万円以上~1,000万円未満収入額×0.95-125万5,000円
1,000万円以上収入額-175万5,000円
65歳以上90万円以下0円
90万円超~330万円未満収入額-90万円
330万円以上~410万円未満収入額×0.75-7万5,000円
410万円以上~770万円未満収入額×0.85-48万5,000円
770万円以上~1,000万円未満収入額×0.95-125万5,000円
1,000万円以上収入額-175万5,000円

(参考:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」)

ただし、いずれの受け取り方でも他の所得と合算されるため、同一年内に会社からの退職金や老齢基礎年金などを受給する人は注意してください。

退職金・確定拠出年金の有無を確認する方法

退職金や確定拠出年金の有無が分からない場合は、どのように調べれば良いのでしょうか。入社前と入社後に分けて、これらの制度の確認方法を見ていきましょう。

入社前は求人票を確認する

入社前の場合は、各企業の求人票から導入されている制度を確認できます。退職金制度や企業年金に関する欄が見当たらないときは、「加入保険等」の欄をチェックしましょう。

また、企業によっては公式サイトや求人サイトに記載していることもあります。インターネットを使って就活や転活をする人は、これらのページも確認してみてください。

入社後は就業規則を確認する

退職金や確定拠出年金を実施する企業は、原則として就業規則にその旨を記載しなければなりません。従業員が常時10人未満の場合、就業規則の作成義務はないものとされていますが、多くの企業ではトラブル防止のために作成しています。

就業規則は分かりやすい形で掲示または交付されているため、まずは社内の共有フォルダやポータルサイト、入社時に受け取った冊子などを確認してみましょう。もし見当たらない場合は、会社の総務部や人事部などに問い合わせてみてください。

各制度の詳細を確認しよう

退職金や確定拠出年金の仕組みは、勤めている会社によって異なります。これから入社をする人は、求人票などで導入されている制度をチェックし、気になる点は入社前に確認しておきましょう。

すでに入社している人も、会社の財務状況によっては制度が変更される可能性もあるので、定期的に就業規則を確認した上で計画を立てることが大切です。

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