C&W、2022年Q3のリテール市況、ハイストリートにおける賃料はコロナ前水準への回復の見通し
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需給
2022年第3四半期の小売販売高は前年同期比3.6%増の約38.1兆円。うち、全国百貨店(既存店)は同17.2%増、百貨店における衣料品は同23.3%増となっており、富裕層を中心とした堅調な高額消費の傾向がうかがわれる。地域別にみると、外出が抑制されてきた東京23区(同26.6%増)、大阪市(同27%増)などでの百貨店消費やコロナ前からの落ち込みが大きかった婦人服などの売上回復が著しい一方、全国ドラッグストア(同5.9%増)、全国コンビニエンス・ストア(同3.7%増)などの最寄り品の消費傾向は数量ベースでは概ね変わらず。耐久財消費などは前年同期比3.5%減となった。都心部への人流回帰やインバウンド需要の回復はプラスではあるが、中間所得層以下では物価高から生活必需品以外の消費削減を余儀なくされる状況が続いている。
一方、新規開発案件のアナウンスをみると、経済活動再開を受けて増加傾向。都内では2023年だけでも、東急歌舞伎町タワー(延床面積:26,500坪)、ドン・キホーテが旗艦店となる道玄坂通プロジェクト(延床面積:12,700坪)、東急不動産が主導する渋谷駅桜丘口再開発事業(延床面積:76,800坪)の開業が予定されている。地方都市においては、 2024年に、名古屋の中日ビル(延床面積:34,000坪)、大阪の梅田三丁目計画(延床面積:69、000坪)うめきた2期開発(延床面積:169,000坪)などの竣工が予定されている。併せて、2025年以降には駅前立地の百貨店再開発事業がそれぞれ計画されていることなどからも、アクセスに見劣りするセカンダリー物件などにおいては、相応の二次空室の発生を見込んでおくべきであろう。
アウトルック
全体の賃料は下落傾向:好立地のハイストリートの賃料は、コロナ前水準への回復が継続する見通し。しかし、今後二年間の全体の賃料水準は、景気減速を反映して賃料下落サイクルが続くことを弊社では見込んでいる。経済回復の遅れる日本では、個人消費の15%程度を占める対人サービス消費は依然としてコロナ前の2019年平均の水準を下回っている。一方、労働者の人出不足は既にコロナ前の水準を上回っているため、客単価の向上を通じた価格転嫁を実現できる高付加価値施設以外においては、コストの高騰、消費の伸び悩み、価格競争の激化、補助金効果の剥落などからテナント賃料負担能力の減退を見込むべきであろう。
訪日観光客消費の約4割はゼロコロナ政策の続く中華圏が占めてきた:訪日観光客の消滅に伴い、ハイストリートの空室率が15%前後まで急増していた心斎橋などでは、ドラッグストアなどの閉店に伴い賃料調整も相応に進んだことから、空室率も徐々に低下傾向にある。しかし、コロナ前の訪日観光客の約37%はゼロコロナ政策が続く中国が占めてきたことを鑑みると、訪日観光客がコロナ前の水準に戻ることが見こまれるのは、早くとも2024年後半以降となる。
景気サイクルに影響をうけない資産への入替は継続、売買規模は増加傾向:資産クラス別にみれば、景気サイクルの影響が相対的には限定的で、近隣住民の日常消費を支える食料品店などを旗艦店に据えた近隣型商業施設(NSC)については、賃料、空室率、売買はほぼ変わらず、依然として底堅く推移している。また、 立地改善を目的としたREITの物件入れ替えは継続。国内金利の大幅な上昇も見込みがたい環境下、コア投資家に対しては、NSCの推奨を継続する。
一方、都心18区においては物流施設としての坪単価が旧来型店舗としての坪単価を上回る事例も増加傾向にあり、バリュー・アッド投資家については用途転換も踏まえた幅広い検討を推奨している。
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