
「隣の庭の木の枝が我が家の敷地に伸びてきて困っている」「自宅の木が隣家に越境してしまい、クレームを受けた」こうした樹木の越境トラブルは、一見些細な問題のようでいて、放置すると深刻な近隣紛争に発展することがあります。
本記事では、樹木の越境問題に関するトラブルの適切な対処法や解決方法を弁護士が解説します。

植木の越境に関する法的ルール
植木が越境した際の法的な問題は、「相隣関係」として民法で規律されています。基本的なルールは、以下のとおりです。
ルール1:越境してきた枝は、その植木の所有者に切除させることができる。
ルール2:越境してきた根は、越境先の土地所有者が切除できる。
また、2023年4月1日の民法改正以降は、以下のいずれかの場合に限り土地所有者が自ら越境した枝を切除することも可能になりました(ルール1の例外)。
1.植木の所有者へ切除するよう催告したのに、相当期間内に切除しないとき
2.植木の所有者又はその所在が分からないとき
3.急迫の事情があるとき
植木の越境は、枝や根の切除という問題は生じますが、直ちに違法となるわけではありません。ただし、越境によって近隣に損害を与えた場合には、違法性が認められ損害賠償等の問題が生じる恐れもあります。
生じやすいトラブルの例
植木が越境してきた場合のトラブルとしては、以下のようなものが挙げられます。
枝が越境し、屋根や壁に傷をつけてしまう
越境した枝から葉が落ちてゴミになる
越境した枝が駐車の邪魔になる
越境した植木に虫や鳥が集まる
枝の伸びきった植木が景観を損ねる
このように、主に枝が越境した場合に伴うトラブルが多数です。もっとも、上記のとおり、越境してきた枝を自己判断で切除するには一定の条件を満たす必要があります。そのため、越境トラブルについては、慎重に対処しないと法的問題を招く恐れがあると言えるでしょう。
正しい対処のポイント

■まずは木の所有者が切除するよう相談する
多くの場合、植木の越境トラブルは、木の所有者に枝を切除してもらう方法によって解決を図るのが適切です。そのため、まずは当事者間で相談を試み、木の所有者が快く切除する方法での解決を目指しましょう。
■感情的な対立を防ぐ
植木の越境トラブルは、対応を誤るとその後の近隣関係に悪影響を及ぼし、生活に支障をきたす可能性もあります。特に、越境トラブルが原因で感情的な対立が生じてしまうと、トラブル自体が収束できたとしても望ましい状況とは言えません。冷静かつ丁寧な対応に努め、感情面での関係悪化を招かないよう配慮しましょう。
■やり取りの経過や越境の状況を記録化する
双方が正しく対処し、解決を目指すためには、やり取りの内容や越境した植木の状態を記録しておくことも有効です。記録したものを改めて確認してみると、双方の不適切な対応を改めるきっかけになることも少なくありません。
■枝に果実があった場合
越境していた枝に果実がある場合、その果実は木の所有者のものであることが通常です。そのため、越境先の土地所有者側が独断で果実を取得してしまわないよう注意しましょう。
■枝や根を切り取った場合の費用負担
枝や根を切り取る際には一定の費用が発生することも考えられますが、どちらが切り取ったかに関わらず、必要不可欠な費用は植木所有者の負担となるのが通常です。もっとも、費用があまりに大きくないか、枝を切り過ぎではないか、といった点がトラブルになる可能性もあるため、発生する費用の内容などは事前に当事者双方で協議しておくことが望ましいです。
トラブルの予防策
■早期の話し合いと取り決め
植木があり、枝の越境が想定される場合には、早期の段階で話し合いを行い、越境した場合の取り扱いを決めておくことが有力な予防策になります。特に、自身が植木をする場合には、自ら隣家に話し合いを試みることで、隣家との感情的な対立を未然に防ぐ効果も期待できるでしょう。
■再発防止
越境トラブルは、繰り返されるとそのたびに対立が激しく、感情的になってしまう傾向が見られます。一度越境があった際には、再発防止の方策を検討し、講じることが重要です。再発防止の努力があれば、万一再度の越境トラブルがあったとしても、感情的な争いが大きくなる可能性は低くなりやすいでしょう。
まとめ
勝手に植えた木の枝が隣家に伸びてしまった場合、すぐに違法とは限りませんが、放置すれば法的責任や近隣トラブルに発展する恐れがあります。越境が起きたときは、冷静な対応で感情的な対立を避け、円満な解決と良好な近隣関係を保ちましょう。
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