年金額や給与から天引きされる際に基準となるものとして、「標準報酬月額」があります。標準報酬月額は同じ年金制度の国民年金には存在せず、厚生年金(健康保険にも)に存在する制度です。
今回は標準報酬月額とはどのようなものかを解説します。
標準報酬月額とは
まず、標準報酬月額の「報酬」とは法律上、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受ける全てのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない」とされています。なお、健康保険についても同趣旨です。
次に「報酬月額」とは、〇円以上〇円未満といった形で一定の区分が設けられているもので、「標準報酬月額」は、1等級から始まり、報酬月額毎に定められた等級区分を指しています。当然、長い職業生活において、給与は変動するのが常であるため、標準報酬月額は必ず年に一度は見直すこととされています。
言うまでもなく、報酬と保険料が実態とかけ離れていないかを精査することが目的です。
保険料の算出
保険料の算出方法は端的には標準報酬月額毎に決められた率を乗じた額が記載されています。
厳密には健康保険料率は都道府県ごとに異なりますので、都道府県ごとによって多少の保険料の差は生じています。尚、国民年金は必ずしも会社員というわけではなく、自営業者やフリーランサーといったケースもあるため、標準報酬月額という制度そのものがなく、保険料自体は毎年見直しがあるものの、全国共通となります。
なお、民間企業に勤める厚生年金被保険者の保険料率は現時点では既に上限に達しているため、法律の変更がない限りは保険料の上昇はありません。
年金額算出方法
2003年4月以降に大きな改正があり、現在は次のとおりです。
平均標準報酬額×5.481/1,000(原則)×被保険者期間の月数
2003年4月から「総報酬制」が導入され、給与だけでなく、賞与も年金額の基礎となることとなったために算出方法も変更となりました。
月額改定
毎年実施される「算定基礎届」のみでは、年の途中で給与体系等が変更になった場合、正確な保険料とはならないため、月額改定と呼ばれる標準報酬月額の改定があります。
算定基礎を定時決定、月額改定を随時改定と呼ぶこともありますが、意味としては同じです。月額改定の契機となるのは固定的賃金が変動になった場合がトリガーになります。また、変動月以後引き続き3か月共に給与の支払基礎日数が17日以上あり、標準報酬月額が2等級以上変動することが要件です。
すなわち、固定的賃金が変動になり、変動月以後引き続き3か月共に給与の支払基礎日数が17日以上あったとしても、標準報酬月額が1等級しか変動しない(例外的に1等級でも月額改定に該当するケースはあり)ケースは月額改定の対象にはなりません。
また、誤解が多い部分として、固定的賃金が変動になる場合の範囲ですが、昇給や降給があった場合はもちろん、給与の基礎単価の変更や家族手当や役職手当等の固定的に支払われる手当が変動した場合も固定的賃金の変動にあたるため、その後3か月間は月額改定の対象になるか注視する必要があるということです。
特に役職が上がった場合等は昇給だけでなく、併せて支払われる手当額の変動(手当の増加)もあることが一般的ですので、注意が必要です。
非常に重要な標準報酬月額
標準報酬月額は健康保険、厚生年金においては非常に重要な意味を持ちます。なお、等級上の範囲は健康保険の方が上限も下限も広く設定されているもの、料率は厚生年金の方が高い為に保険料は厚生年金の方が高く設定されています。