最近のニュースサイトを見ると、2024年6月に開始される定額減税に関する記事が多く取り上げられている印象があります。
定額減税ほどは話題になっていませんが、定額減税補足給付金(調整給付)という給付金の支給もあるようです。
両者の制度を5つの視点で比較してみたら、給与計算を実施する企業などの事務負担がかなり大きいという事実に気が付きました。
職業によって手続きの難易度が大きく違うというのも、事実ではないかと思うのですが、具体的には次のようになります。
視点1:対象者
会社員の給与、年金受給者の老齢年金(障害年金と遺族年金は非課税)、個人事業主の事業収入には、原則として所得税や住民税が課税されます。
これらの税金は年収(1月~12月までの収入の合計)が、一定の基準額を超える方に課税されます。
例えば収入が給与だけの場合は年収が103万円を超えると、所得税が課税される場合が多いのです。
定額減税は所得税や住民税が課税されている国内居住者を対象にして、その税金を減らす制度です。
ただ会社員であれば年収が2,000万円を超える方などの、一部の高所得者は対象外になります。
また次のいずれかの状態に該当するため、所得金額調整控除の適用を受ける年収850万円超の会社員は、年収が2,015万円を超えると対象外になります。
納税者本人が特別障害者に該当する
23歳未満の扶養親族がいる
特別障害者の同一生計配偶者や扶養親族がいる
一方で定額減税補足給付金は課税されている所得税や住民税が少ないため、すべてを減税できない方が対象です。
例えば4万円の減税を受けられる場合、減税対象の期間に課税される税金が3万円しかないと、1万円が余ってしまいます。
この1万円を給付金として支給するのが、定額減税補足給付金という制度なのです。
1万円未満は1万円に切り上げる方針なので、例えば1万2,000円が余った場合には、2万円の定額減税補足給付金が支給されます。
視点2:金額
定額減税として減税される金額は、納税者本人と配偶者を含めた扶養親族1人につき、所得税が3万円で住民税が1万円になります。
例えば扶養する配偶者と子供が1人いる方は、所得税が9万円(3万円×3人)、住民税が3万円(1万円×3人)の減税です。
16歳未満の子供は年末調整や確定申告の際に、扶養控除の対象になりませんが、定額減税の際には含めて計算します。
ただ16歳未満か否かを問わず、年収103万円以下などの要件を満たす必要があります。
このようにして定額減税の金額を算出するため、扶養親族の有無や人数で減税される金額が大きく変わるのです。
定額減税補足給付金は減税しきれない余りを支給する制度なので、扶養親族の有無や人数だけでなく、課税されている所得税や住民税によって金額が変わります。
視点3:開始時期
会社員は2024年6月の給与(賞与を含む)から、所得税の定額減税が始まります。
住民税については通常あれば6月から、給与からの天引き額が変わりますが、2024年6月は天引きが実施されず、7月の給与から定額減税が適用された住民税が天引きされるようです。
年金受給者は2024年6月の年金から所得税の定額減税、10月の年金から住民税の定額減税が始まります。
個人事業主
2025年2月~3月頃の確定申告の際に、所得税の定額減税を受けるため、かなり先の話になります。
納付する見込みの所得税が一定額以上になるため、予定納税の対象になっている方は、2024年7月の第1期分から自動的に、納税者本人の所得税の定額減税を受けられます。
扶養親族を対象にした所得税の定額減税は確定申告の他に、予定納税額の減額申請という手続きによって、第1期分から受けられるようです。
個人事業主の住民税
2024年度の第1期分から定額減税が始まるため、確定申告の時期まで待つ必要はなく、特に手続きも必要ありません。
定額減税補足給付金は余った分を給付金として支給する制度のため、まだ先の話になりますが、準備が整ったら対象者に対して、市区町村から必要な書類が送付されます。
視点4:手続き
給与から所得税や住民税が天引きされている場合、定額減税の手続きは勤務先の企業などが実施します。
年金から所得税や住民税が天引きされている場合、定額減税の手続きは日本年金機構などが実施するため、ほとんどの会社員や年金受給者は特に手続きは必要ありません。
勤務先に提出済みの「給与所得者の扶養控除等(異動)申告」の中に、記載がない扶養親族がいる会社員は、「源泉徴収に係る定額減税のための申告書」を勤務先に提出します。
個人事業主
所得税の定額減税を受けるために、予定納税額の減額申請や確定申告が必要になります。
年の途中で定額減税の対象になる扶養親族に、変更があった年金受給者も、確定申告が必要になる場合があります。
定額減税補足給付金は市区町村から書類が届いたら、それを記入して返送する必要があるため、会社員や年金受給者でも手続きが必要になります。
マイナポータルなどから公的受取口座の登録を済ませている場合には、手続きを不要にしている市区町村もあるようです。
そのため手続きの有無や申請期限などを、住所地の市区町村の公式サイトで確認した方が良いと思います。
視点5:確認方法
政府は企業などに対して、給与明細に定額減税の記載を義務付ける方針なので、会社員は給与明細を見れば減税額などがわかるはずです。
勤務先から年末調整の後に配布される「給与所得者の源泉徴収票」、6月頃に配布される住民税の「税額決定通知書」も参考になります。
一方で年金受給者に6月頃に送付される「年金額改定通知書・年金振込通知書」には、減税された後の金額だけが記載されているため、減税額などがわかりにくいようです。
そのため翌年1月頃に送付される「公的年金等の源泉徴収票」、6月頃に送付される住民税の「税額決定・納税通知書」などを、参考にした方が良いのかもしれません。
個人事業主
予定納税や確定申告の書類、6月頃に送付される住民税の「税額決定・納税通知書」によって、減税額などを確認するのです。
定額減税補足給付金は手続きが完了すれば、各人の銀行口座などに振り込まれるため、通帳の入出金明細を見るというのが、もっとも簡単な確認方法だと思います。