不慮の事故は、誰にでも起こりうることです。
突然死もあります。
ある町内で、役員をバリバリやっていた佐藤さんが、交通事故で突然お亡くなりになった際のお話です。
当然、その役員の欠員の問題もあったわけですが、佐藤さんは会計を担当していたため、
- その町内のお金をどこに保管していたのか
- 通帳はどこにあるのか
- 印鑑の保管場所、出納簿がどこまで記載されていたのか
- 立替金はないのか
など、当面のさまざまな問題が出てきました。
任意団体の通帳の所在が不明
自治会の通帳は、代表者か会計担当が持っていることが多いかと思います。
佐藤さんの地区では、佐藤さんが通帳を管理していました。
その町内の通帳の所在が不明であることが、時間の経過とともにわかりました。
他の役員さんも故人の自宅にお悔やみに行くとともに、それとなくお尋ねしましたが、お金のことは佐藤さん1人で行い、妻にも知らせていなかったようでした。
金融機関に相談に行きましたら、通帳の代表者が佐藤さんになっており、代表者が亡くなっているのであれば、団体の代表者の変更をしたうえで、通帳の再発行の手続きを行ってくださいとのことでした。
その際、代表者の変更の事実が確認できる書類が必要になるとのことでした。
ちなみに、通帳に記載済みの履歴を発行するのに1か月ごとに330円(某金融機関)の手数料がかかるとのことでした。
何かと必要な通帳の履歴
自治会の通帳は当然ですが、年度ごとに決算が必要です。
決算を行うには、通帳の履歴が必要になります。
届出印も所在が不明ですと団体の規約が必要になり、役員の名簿を求める場合(金融機関の規約による)もあるようです。
つまり自身の突然の死は、自治会にご迷惑をかけることになりかねないということです。
団体の役員の立場になり、通帳・印鑑等を預かった場合は、少なくともその保管場所を家族で共有するのが大切です。
通帳は自身の相続でも大切です
相続人が1人であれば、残ったものを独り占めするだけですから問題ありませんが、相続人が複数いて(通常はいます)遺産分けでもめたりすれば、通帳の開示の必要が出てきます。
その通帳の履歴の開示は、相続人であれば取得が可能ですが、費用がけっこう掛かります。
相続税調査でも7年分は調査します。
仮に7年分であれば、330円×12か月×7年=2万7,720円かかります。
遺産分割で特別受益(生前贈与)に争いがあれば、何年でもさかのぼります。
最近は、通帳自体がペーパレスにしている方もあるかと思います。
そういう意味では、通帳の履歴の確認は、家族で確認できるようにしておいた方が良いのかもしれません。
へそくり通帳は、金融機関名のみ知らせておく
団体の通帳・印鑑の保管場所は、家族で共有認識して保管すべきですが、その残高までは知らせる必要はないと思います。
自身の預金は、結婚されていれば夫婦で管理されている家庭が多くなっているようです。
ただ、夫婦間でも知らせたくない「へそくり」(予備費)は必要かと思います。
生きている間は、この予備費の残高は知らせる必要はありませんが、その金融機関支店名までは相手に知らせておきましょう。
金融機関さえ特定できれば、相続発生後、残高も確認でき、相続人は相続手続きにて取得できます。(執筆者:FP1級、相続一筋20年 橋本 玄也)