某有名タレントさんが、「俺は、相続放棄しています」とTVでコメントしたことに対し、ネットで「生前に放棄なんかできない」と騒がれていました。
相続放棄していますが、なにか
筆者も、あのタレントの高名な父は、たしか「生きていたよね」と頭をめぐらせたうえ、おそらく「遺留分の放棄をしたのだな」と思いました。
ネットでは、なぜか「遺留分の放棄なんかしていない」と書いています。
「相続が発生後、なにももらうつもりはない」という事であれば、「相続放棄」も「遺留分の放棄」も結果的に同じことです。
「遺留分の放棄」は遺言書とセットです
遺言書を生前に書いても、相続人(故人のきょうだい・おい・めい以外)には遺留分があります。
相続発生後の場合は、相続人が遺言書の内容に異議を申し立て(遺留分侵害額請求)をしなければ、事実上「遺留分を放棄」したことになります。
この場合は、相続人が故人の遺産を確認し、遺言書の内容を見たうえで、遺留分侵害額の請求を行うか否か選択できるものです。
相続発生前に「遺留分を放棄」する場合は、相続発生時の遺産は不明のまま「遺留分の放棄」し、また遺留分権利者に不当な圧力をかからないよう、家庭裁判所の許可が必要な手続きになります。
生前に遺留分を放棄するケース
推定相続人が生前に自ら放棄の申立てを家庭裁判所に申し立てをすることは、それなりの事情がなければ、あり得ません。
ありうるケースとしては、遺留分相当の贈与を生前にしてもらうケースです。
この場合のメリットは、相続発生前に推定相続人が先に財産をもらえることです。
といった主張も可能です。
「生前贈与」と「遺留分の放棄は」残された相続人にとってハッピー
遺言書を作成している場合、相続開始後、遺言書の内容を確認し、相続人が遺留分以下の財産しかもらえないのか、侵害額請求をするのかしないのか検討するといった流れになります。
侵害額請求すれば、相続人間の関係も難しくなります。
侵害額の額を決めるに、不動産の評価とか、特別受益(生前贈与)の加算の有無でも問題となりやすいです。
生前に贈与をしておいて、「遺留分の放棄」の手続きをしてもらい、遺言書を作成しておけば、後日の「遺留分侵害額請求」もないわけですから、残された相続人の関係もハッピーに終わります。
もちろん、あげる側にもそれだけの財産がある場合が前提になると思います。
某タレントが、遺留分を放棄していたら
高名な父ですので、それなりの資産管理をするブレーンもいるかと思います。
となると遺言書作成の提案もされていると思いますし、生前に贈与し、遺留分を放棄してもらうといった提案も当然ありうると思います。
もしそうであれば、気を付けていただきたいのが、相続発生時の税金です。
贈与時には、相続時精算課税制度という、2,500万円までは非課税で、超える金額については20%の贈与税がかかるといった制度があります。
ただし、贈与された財産は、相続時に加算され、先に払った贈与税と精算をするため、相続時に、一切の財産をもらわなくても、過去にもらった贈与財産ついて相続税がかかる可能性があります。
1億円の財産があり、相続人が二人の場合
2,500万円を相続時精算課税でもらえば、贈与税はかかりません。
しかし相続発生時には、なにも相続しない場合でも、2,500万円に対する相続税として192万5,000円(贈与時と相続時の財産の増減なしとして)かかります。
ここをお忘れなく…(執筆者:FP1級、相続一筋20年 橋本 玄也)