国税庁は、令和3年11月に「令和2事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を公表しました。
資料では、インターネット上のプラットフォームを介して⾏うシェアリングエコノミー等新分野の経済活動に対し、積極的に税務調査を実施していることを明らかにしています。
そこで今回は、シェアリングエコノミー等新分野の経済活動に該当する範囲と、実際の調査状況について解説します。
確定申告をしていなくても税務署から電話がかかってくる可能性あり 3つのケースを紹介
シェアリングエコノミー等に対する税務調査の状況
シェアリングエコノミー等新分野の経済活動(以下、「シェアリング等」)とは、
・ シェアリングビジネス・サービス
・ 暗号資産(仮想通貨)取引、
・ ネット広告(アフィリエイト等)
・ デジタルコンテンツ
・ ネット通販
・ ネットオークション
などの経済活動をいいます。
令和2事務年度の調査件数は、新型コロナウィルスの影響もあり前事務年度より減少していますが、1件当たりの申告漏れ所得金額は1,872万円と、前事務年度比148.1%と大幅に増加しています。
シェアリング等に対する税務調査の状況は以下の通りで、1件当たりの申告漏れ所得金額が最も多いのは、FXや仮想通貨取引などのネットトレードです。
1件当たりの申告漏れ所得金額
種類 | 主な取引例 | 1件当たりの 申告漏れ所得金額 |
シェアリングビジネス | 民泊、クラウドソーシング | 1,208万円 |
デジタルコンテンツ | アプリ作成・配信、有料メルマガ | 1,572万円 |
ネット通販等 | ネット通販、ネットオークション | 1,166万円 |
ネット広告等 | アフィリエイト | 2,253万円 |
ネットトレード | FX、仮想通貨 | 2,456万円 |
その他 | 上記に該当しない新分野の経済活動 | 1,966万円 |
平均:1,872万円 |
参照元:国税庁「令和2事務年度 所得税及び消費税調査等の状況(pdf)」
シェアリングエコノミーが税務署から狙われている3つの理由
シェアリング等が、国税庁・税務署から狙われている理由は3つあります。
1. 確定申告を行っていない割合が高い
1つ目の理由は、確定申告を行っていない方の割合が高いことです。
新しく生まれた業界は、既存の業界より納税意識・知識が低い(少ない)ことが多いです。
年末調整済みの方は副業等の所得金額が20万円以下までなら申告不要ですが、20万円を超える所得が発生した場合には確定申告をしなければなりません。
しかし所得が20万円を超えたとしても申告していない方や、本業としてシェアリング等に関する事業を行っていても申告していない人もいますので、税務署は税務調査により申告漏れを指摘しています。
2. 申告漏れの所得が高額であること
2つ目の理由は、申告漏れとなっている所得が高額であることです。
アフィリエイトや有料メルマガにより、個人でも数百万円から数千万円の売上を生み出すことは少なくありません。
また仮想通貨ブームの際、「億り人」のワードが誕生したように、既存の事業よりも短期間で高額な所得を得ることができるのもシェアリング等の特徴でもあります。
税務署の立場で考えると、高所得者の申告漏れから優先的に税務調査を実施しますので、無申告だと、ある日突然調査担当者から連絡が来ても不思議ではありません。
3. 申告漏れの事実を把握しやすいから
3つ目の理由は、税務署が申告漏れの事実を把握しやすいからです。
スマホ決済などが一般的になりつつある現在でも、脱税手法の1つとして現金による売上を自宅や事務所に保管する方がいるように、現金商売の申告漏れを摘発するのは税務署でも一苦労します。
それに対しネットビジネスは、インターネット上に取引などの履歴が残っていますので、申告漏れの証拠を把握しやすい側面があります。
今後税務調査が実施されることが見込まれる業種等
今後税務調査が実施される見込みがある業種等は、次の通りです。
2. 転売ヤー
3. ウーバーイーツ
4. Youtuber
新しい業界・業種は、法整備や法的解釈が不十分なことも相まって、税務調査を受けやすい傾向にあります。
税務調査で申告誤り・申告漏れを指摘されれば、本税以外に加算税・延滞税を支払うことになりますし、悪質とみなされれば重加算税の対象となります。
重加算税は本税に対する課税割合が35%(40%)と非常に高く、お金を使い切った人は税金の支払いが困難になる可能性もあります。
ただ税務署は納税額をオマケしてくれることはありませんので、本業・副業問わず収入を得た人は忘れずに申告手続きを行ってください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)