- 年収1,200万円の手取り:約847万円(ボーナスなしの場合)
- 年収1,200万円は25人に1人の割合
- 年収1,200万円の生活レベル
- 独身実家暮らし(神奈川県在住、家族構成:本人独身28歳会社員、父60歳、母55歳)
- 独身一人暮らし(東京都在住、家族構成:本人30歳独身会社員)
- 夫婦二人暮らし(東京都在住、家族構成:本人32歳会社員、妻28歳パートタイマー)
- 妻と子どもと三人暮らし(埼玉県在住、家族構成:本人50歳会社役員、妻45歳専業主婦、子ども15歳中学生)
- 年収1,200万円の貯蓄・家賃・住宅ローンの金額は?
- 年収1,200万円の所得税・住民税・社会保険料
- 年収1,200万円で生活が楽にならない理由
- 年収1,200万円で投資を利用した税金対策・年収アップ法
- 年収1,200万円の手取りに関するQ&A
年収1,000万円超を目指している人も多いのではないか。しかし高収入の人は、多くの税金が給与から差し引かれるため、手取り額は900万円を切るともいわれる。本コラムでは、年収1,200万円を得ている人の割合や生活のレベルを紹介していく。
年収1,200万円の手取り:約847万円(ボーナスなしの場合)
はじめに年収1,200万円の人は、手取りでどれくらいの収入を得られるのかを確認しておこう。ここでは、手取り計算ツールを使ってシミュレーションする。
【設定条件】
・住所:東京都在住
・年齢:40歳
・税込年収:1,200万円
ボーナス込み、ボーナスなしの手取り
年収1,200万円にボーナスを含んでいる場合と含んでいない場合の手取り額をシミュレーションすると以下のとおりだ。
ボーナスの金額については年収1,200万円の場合、ボーナスの支給額を税込月収の2ヵ月分と設定。税込月収約85万円に対し税込170万円とした(約85万円×12ヵ月+170万円=約1,200万円)。
・ボーナス込みの手取り年収(ボーナス170万円の場合)
年収にボーナスが含まれている場合、手取り年収は835万1,896円となる。
・ボーナスなしの手取り年収
ボーナスを考慮しない場合、手取り年収は847万5,984円となる。ボーナスなしのほうが手取り年収は若干多くなるという結果が出た。
月収の手取り:約71万円(ボーナスなしの場合)
次に手取り月収もシミュレーションしてみよう。同じくボーナスを含んでいる場合と、含んでいない場合の手取り額をシミュレーションすると以下のとおりとなる。
・ボーナス込みの手取り月収(ボーナス170万円の場合)
年収にボーナスが含まれている場合、手取り月収は約59万9,912円、手取りボーナスは約115万2,956円となる。
・ボーナスなしの手取り月収
ボーナスを考慮しない場合、手取り月収は70万6,332円となる。
年収1,200万円は25人に1人の割合
年収1,200万円の人は、どれくらいの割合いるのだろうか。国税庁が行った「令和4年分民間給与実態統計調査」によると年収1,200万円が該当する所得区分「1,000万円超1,500万円以下」の給与所得者に占める割合は約201万9,000人で4.0%だった。給与所得者全体約5,077万6,000人の約25人に1人の割合である。
・男性で年収「1,000万円超1,500万円以下」の割合:6.2%
同調査によると男性で年収1,200万円を含む「年収1,000万円超1,500万円以下」の割合は、約180万4,000人(6.2%)である。
・女性で年収「1,000万円超1,500万円以下」の割合:1.0%
同様に女性で年収1,200万円を含む年収「1,000万円超1,500万円以下」の割合はわずか約21万5,000人(1.0%)で、女性にとってはまだ狭き門となっている。
・会社員で年収「1,000万円超1,500万円以下」の割合:4.0%
会社員で年収1,200万円を含む年収「1,000万円超1,500万円以下」の割合は、約201万9,000人で4.0%となる。
・個人事業主で年収1,200万円の割合:5.8%
国税庁が行った「令和3年分申告所得税標本調査」によると、事業所得者で年収1,200万円が含まれる所得区分「1,000万円超2,000万円以下」の人は約10万1,000人で、事業所得者全体の約5.8%にあたる。
年収1,200万円の生活レベル
年収1,200万円の人は、どのような生活な水準のか気になるところだ。3つの家族構成で見てみよう。ここでは、ボーナスなし手取り月収70万円と仮定して考える。金額は一例であり、実際の支出は各家庭によって異なる。
独身実家暮らし(神奈川県在住、家族構成:本人独身28歳会社員、父60歳、母55歳)
支出項目 | 支出金額 |
---|---|
家賃 | - |
実家への生活費補助 | 5万円 |
水道光熱費 | - |
通信費 | 1万円 |
食費 | 3万円 |
教育費 | - |
交際費 | 3万円 |
娯楽費(趣味に使うお金) | 5万円 |
車両費 | 5万円 |
雑費 | 3万円 |
合計 | 25万円 |
実家暮らしで年収2,000万円の場合、かなり余裕のある生活ができる。
実家で暮らす場合は、家賃・光熱費がかからないため、実家への生活費補助・食費・交際費・通信費・雑費で25万円程度に収まるだろう。給与の大半50万円弱が残るため、趣味に使うお金やマイカーローンがあったとしても、40万円程度は貯蓄に回せるはずだ。
独身一人暮らし(東京都在住、家族構成:本人30歳独身会社員)
支出項目 | 支出金額 |
---|---|
家賃 | 13万円 |
水道光熱費 | 2万円 |
通信費 | 1万円 |
食費 | 3万円 |
教育費 | - |
交際費 | 3万円 |
娯楽費(趣味に使うお金) | 5万円 |
車両費 | 5万円 |
雑費 | 3万円 |
合計 | 35万円 |
独身一人暮らしでは、実家暮らしと比較して家賃や光熱費が加算される。このケースでは東京都のワンルームマンションに住んでいるため、家賃は比較的高めの設定である。生活費の合計は、35万円程度になると予想されるため、マイカーローンなどの固定での出費がなければ30万円程度の貯蓄は可能となる。
夫婦二人暮らし(東京都在住、家族構成:本人32歳会社員、妻28歳パートタイマー)
支出項目 | 支出金額 |
---|---|
家賃 | 20万円 |
水道光熱費 | 2万円 |
通信費 | 2万円 |
食費 | 5万円 |
教育費 | - |
交際費 | 3万円 |
娯楽費(趣味に使うお金) | 6万円 |
車両費 | 5万円 |
雑費 | 4万円 |
合計 | 47万円 |
こちらは夫婦共働きで合計年収約1,200万円という場合である。住まいは交通の利便性を考え東京都の2LDKなので高めの家賃を支払っている。夫婦二人暮らしの世帯なので、教育費は想定しないものとする。生活費の合計は47万円程度になると予想される。夫婦二人暮らしであれば比較的まだ余裕があるため、20万円程度の貯蓄は可能だろう。
妻と子どもと三人暮らし(埼玉県在住、家族構成:本人50歳会社役員、妻45歳専業主婦、子ども15歳中学生)
支出項目 | 支出金額 |
---|---|
住宅ローン | 17万円 |
水道光熱費 | 2万円 |
通信費 | 3万円 |
食費 | 7万円 |
教育費 | 5万円 |
交際費 | 5万円 |
娯楽費(趣味に使うお金) | 7万円 |
車両費 | 5万円 |
雑費 | 5万円 |
合計 | 56万円 |
こちらの家庭は本人が会社役員で、1人で1,200万円を稼いでいる場合である。住まいは持ち家一戸建てでローンを支払っていると想定する。子どものいる家庭は教育費がかかる分支出が多くなる。生活費の合計は56万円程度を見込んでおいたほうがよいだろう。養育費によって多少前後するが、10万円程度の貯蓄は確保できそうだ。
結論としては、いずれの家族構成でも一定の貯蓄をすることは可能である。また貯蓄だけでなく投資に回す人もいるだろう。
年収1,200万円の貯蓄・家賃・住宅ローンの金額は?
続いて年収1,200万円の人は、貯蓄・家賃・住宅ローンにどのくらいの金額を支出しているのか、具体的な金額を見てみよう。
・貯蓄:10万円(家族3人の世帯)
年収1,200万円の人の貯蓄額は、前述したように家族構成によって大きく変わる。独身者のうち実家で暮らしている人は40万円、独立して住んでいる人は30万円、夫婦二人暮らしの世帯は20万円、三人暮らしの家庭は10万円が目安となる。
・家賃:17万円
年収1,200万円の人が賃貸住宅に住む場合、家賃の目安は手取り月収の25%程度であれば、余裕を持って支払っていけるといわれている。手取り月収が70万円の場合は17万5,000円程度となる。
・住宅ローン:17万円
年収1,200万円であれば住宅ローンを利用して住宅を取得することが可能だ。住宅ローンは、一般的に世帯年収の5~7倍程度まで借入れできるといわれている。年収1,200万円に当てはめると、6,000万~8,400万円程度の融資が可能だが、無理なく返済できるかは借り入れ条件や返済期間による。
例えば6,000万円の住宅ローン(元利均等払い)で融資期間35年、金利1.0%で返済する場合、毎月の返済額は約16万9,371円だ。これは、賃貸で住む場合の数値とほぼ同じ水準となる。上限にあたる8,400万円の住宅ローンを同じ条件で受ける場合は、毎月の返済額が約23万7,119円となる。
年収1,200万円の所得税・住民税・社会保険料
年収1,200万円の人は、所得税・住民税・社会保険料をどの程度負担しているのだろうか。先に紹介した「手取り計算ツール」でシミュレーションすると下表のようになる。
【設定条件】
・住所:東京都
・年齢:40歳
・税込年収:1,200万円(ボーナス170万円)
項目 | ボーナスあり | ボーナスなし |
---|---|---|
所得税 | 118万1,900円 | 122万4,400円 |
住民税 | 80万400円 | 81万8,900円 |
健康保険 | 61万3,000円 | 58万8,000円 |
厚生年金 | 86万9,250円 | 71万3,700円 |
介護保険 | 11万1,566円 | 10万7,016円 |
雇用保険 | 7万1,988円 | 7万2,000円 |
年収1,200万円で生活が楽にならない理由
「年収1,200万円あるけど生活が楽にならない」と聞くと不思議に思うかもしれない。しかし所得水準が高い家庭は、支出もそれなりに多くなるという事情がある。
教育費用がかかるから
高収入の家庭は、小学校から私立校に通わせるなど教育費が一貫して多くかかる傾向がある。加えて年収1,200万円の場合は、児童手当が受けられない可能性が高い。ただし2024年12月以降は、年収制限が撤廃され支給対象も高校生まで拡充される予定のため、今後は考慮される可能性がある。
納税額が高いから
▽所得税税率表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
所得税は累進課税のため、所得が多いほど納税額も増える仕組みだ。年収1,200万円で給与所得控除や所得控除された金額が900万~1,799万9,000円のケースでは、33%の税率で課税される。かなり重い負担といってよいだろう。
住宅や車など各種のローンがあるから
年収が高い家庭は、住宅ローンやマイカーローンなど各種ローンを抱えているケースもあるだろう。住宅ローンの月収に占める返済負担率は、一般的に税込年収の30~35%が目安とされている。借入額が多ければ毎月の支払いも大きな金額になり、加えて車を持っていれば維持費もかかる。
年収1,200万円で投資を利用した税金対策・年収アップ法
年収1,200万円あれば、ある程度の金額を投資に回すことは可能だろう。投資を利用した税金対策や年収がアップする方法を考えてみよう。
iDeCoでの税金対策のメリット・デメリット
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で選んだ金融商品へ掛金を拠出し運用する私的年金制度だ。iDeCoには、以下の3つの税優遇制度が設けられているため、メリットは大きい。
- 掛金全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になる
- 通常運用益に課税(源泉分離課税20.315%※)される譲渡所得税が非課税になる
- iDeCoは年金か一時金(金融機関によって併用も可能)で受け取るが、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象になる
※復興特別所得税を含む
ただし一方で以下のようなデメリットもあるため、把握してから始めたほうがよい。
- 年金制度のため、60歳にならないと引き出せない
- 投資信託等で運用した場合、資産価値の変動リスクがある
- 加入時・移管時手数料、口座管理料、信託報酬などの経費がかかり、年金として受け取る場合は、都度振込手数料もかかる
不動産投資での税金対策のメリット・デメリット
なかには、不動産投資を税金対策に利用する人もいる。不動産投資における主なメリットは以下のような点が挙げられる。
・給与所得と不動産所得の損益通算で節税につながる
投資した不動産の建物部分は、時間の経過とともに価値が下がっていくため、減価償却費として必要経費に算入できる。減価償却の結果、不動産所得が赤字になった場合は、赤字金額分を給与所得から差し引く「損益通算」の制度を利用でき所得税・住民税の節税につながるだろう。
・相続税対策が期待できる
相続の際に現金で相続させると相続税評価額は額面通りの100%だ。しかし不動産で相続すると相続税評価額(固定資産税評価額)が、国土交通省が毎年1月1日時点で定める公示価格の70%程度に、相続税評価額(路線価)では80%程度に軽減される。そのため結果的に相続税の節税につなげることが期待できる。
半面、以下のようなデメリットもあるため、注意して投資することが必要だ。
- 不動産の取得時に不動産取得税、保有期間中に固定資産税などの税金がかかる
- 長く保有していると減価償却が終わり、ローンの支払い利息額も減っていくことで経費にできるものが少なくなっていく。結果利益が増えて税金を多く支払うことになる
- 5年未満の短期で売却すると短期譲渡所得税30%+復興特別所得税2.1%が課税され、長期譲渡所得税15%+復興特別所得税2.1%より多くの税金を支払うことになる。併せて、住民税も長期譲渡所得5%に対し、短期譲渡所得は9%と税率が高くなる。
ふるさと納税、NISAは節税にならないことに注意!
「ふるさと納税や新NISA(少額投資非課税制度)が節税になる」というイメージを持っている人は多いだろう。しかし以下のような理由で節税にならないという考え方もあるため、注意したい。
・ふるさと納税
上限の範囲内で寄附した金額から2,000円を差し引いた金額が所得控除の対象になる。実質2,000円で返礼品を受け取ることができる。ふるさと納税した年の所得税と翌年の住民税から2,000円を差し引いた寄付金額が控除される。しかしこれは、所得税・住民税を寄附金という形で前払いしているだけのため、節税になっていないという見方ができる。
「あくまでも返礼品を受けた分が得になる」ということだ。
・新NISA
新NISAは、運用益や配当金などが非課税で受け取れる制度である。もともとNISA口座内で売買したものに関しては非課税であるため、iDeCoの掛金のように投資した金額を所得から控除され所得税・住民税を節税できるわけではない。
これらのうち不動産投資と新NISAを利用した投資は、家賃収入、配当金、売却益などによる年収アップの方法としては有効である。
年収1,200万円の手取りに関するQ&A
Q.年収1,200万円の月の手取りはいくら?
年収1,200万円にボーナス(2ヵ月分170万円として計算)が含まれている場合、手取り月収は約59万9,912円、手取りボーナスは約115万2,956円となる。一方、ボーナスを考慮しない場合、手取り月収は約70万6,332円となる。
Q.年収1200万円の人は何人に1人?
国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると2022年における年収1,200万円が該当する所得区分「1,000万円超1,500万円以下」の給与所得者に占める割合は、約201万9,000人で約4.0%だった。給与所得者全体約5,077万6,000人の約25人に1人の割合である。
Q.年収いくらあれば勝ち組か?
年収1,000万円は、勝ち組の目安といわれてきた。国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」を見ても年収1,000万円超は約5.4%しかいないため、十分に勝ち組といえる。
※記事中の税率やシミュレーションは一例ですので、参考程度にご覧ください。
宮路 幸人
会計事務所での長い勤務経験で培った豊富な実務知識により、会計処理・税務処理および経営や税務に関する相談など、さまざまな問題に対応。宅地建物取引士、マンション管理士等の資格を保有し、不動産と相続関連に強みを発揮する。特に相続関連では、税務面だけでなく、家族の幸せを重視したトータルでの提案を行っており、軽いフットワークでお客さまのニーズに応えることをモットーとする。離島支援活動にも積極的。
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