デリカフHD Research Memo(6):外食・中食産業のインフラ事業者として売上1,000億円を目指す(1)
■デリカフーズホールディングス<3392>の今後の見通し
2. 第5次中期経営計画の進捗状況
(1) 第5次中期経営計画の概要と業績進捗状況
2025年3月期からスタートした第5次中期経営計画では「keep on trying 2027」をテーマに掲げ、1) 各種ポートフォリオの変革、2) 青果物サプライチェーンの構造変革、3) 研究部門・開発部門への投資拡大の3点に取り組んでいる。最終年度となる2027年3月期の業績目標として、売上高600億円、経常利益18億円、ROE10.2%を設定したが、既述のとおり2026年3月期に1年前倒しですべての目標を超過達成し、2027年3月期の業績もさらに拡大する見通しとなっている。
(2) 事業戦略の進捗状況
a) 各種ポートフォリオの変革
各種ポートフォリオ(事業・顧客・商品)の変革に関する進捗状況を見ると、事業ポートフォリオの変革については、BtoC事業が想定よりも伸び悩んでいるものの、物流事業が順調に拡大しており、業務用の青果物事業に依存しない体制の構築が着々と進んでいる。物流事業では「2024年問題」により物流費が上昇するなかで、受託物流サービスの顧客獲得も順調に進んでおり、2026年秋以降は3PL事業も新たに開始する予定で、さらなる成長が見込まれる。BtoC事業では、新設した食品事業部において付加価値型商品の開発・販売を強化しており、物流事業とBtoC事業をあわせた売上構成比を2024年3月期の12%から2027年3月期に15%まで引き上げる。売上規模としては100億円程度となるが、2026年3月期までの進捗状況からすると達成可能な水準と見られる。
顧客ポートフォリオについては、将来性や収益性をもとに取引口座数の適正化を進めているほか、市場環境の変化に対する耐性が強いポートフォリオへの変革に取り組んでおり、これまで順調に進んでいるものと評価される。商品ポートフォリオについては、従来のホール野菜やカット野菜に加えて、加熱野菜や冷凍野菜、加工野菜、ミールキットやスープ・調味液も含めた「加工度の高い商品(=付加価値商品)」を開発・育成することで収益性の向上を図り、これら商品を海外やBtoC市場など新規市場でも拡販することで事業規模のさらなる拡大を目指している。
b) 青果物サプライチェーンの構造変革
従来のサプライチェーンを抜本的に見直し、持続可能かつ機能的な青果物流通インフラへの変革を推進する。主に、輸入比率の高い野菜の国内調達比率引き上げや、安定供給体制の強化に向けた長期保存技術の確立と貯蔵センターの整備を進めている。
輸入野菜の国産化の目的は、国内における農業従事者の高齢化により国内農業の衰退が危ぶまれるなかで、持続可能な農業を実現することにある。国内産に切り替えることで仕入コストは上昇するが、顧客と売価交渉を進め、粗利益に影響を与えない範囲で、徐々に転換する。取り組みの第一弾として、大阪茨木工場を玉ねぎ加工専用工場にリニューアルし、2025年4月より稼働を開始した。愛知、大阪、兵庫、奈良の事業所の玉ねぎ加工ラインを集約化し、皮むきからカット、包装、最終商品まで一気通貫の生産ラインを構築した。最終的には年間売上規模で10億円程度に拡大する見通しだ。加工工程を1ヶ所に集約化することで原料調達コストの低減や、単品大量生産に適した自動化・省人化ラインの導入による生産性向上が見込まれる。既存事業所で空いたスペースは、その他の青果物の製造加工に活用し、グループ全体の能力増強を図っている。玉ねぎの製造加工が軌道に乗れば、他の輸入野菜の国産化にも挑戦していく予定だ。
持続可能な農業の実現に向けたそのほかの取り組みとして、既述のとおり2025年9月より自社栽培による農業に参入し、赤系トマトや種無しピーマンを栽培している。農業を自ら実践することで、今まで見えなかった農業の実態や経営課題を把握し、仕入先となる契約農家に対して双方が満足できる最適なソリューションの提案や次世代農業の可能性を追求する。
また、野菜の安定供給体制構築に向けた施策として、既述のとおり「東海マザーセンター」を新設し2026年4月より稼働を開始した。西日本エリアの大型原料を同センターに集約することで、一括調達による調達・物流・在庫管理におけるコストメリットを創出するほか、長期貯蔵技術を実装し安定供給体制を構築する。まずはトマトからスタートしており、成熟前のトマトを収穫し、庫内で温度や湿度など保存環境をコントロールしながら、1ヶ月程度で出荷可能な状態まで成熟させる技術の確立を目指す。将来的には対象となる品目を拡大しながら長期保存技術の実用化を目指している。
さらに、同社は「東日本マザーセンター(仮称)」(埼玉県幸手市)を2027〜2028年ごろに新設する計画を進めている。長期保存技術に対応した貯蔵施設を設置するほか、首都圏にあるFSセンターなどで行っているカット野菜の前処理工程を同センターに集約化する計画だ。前処理工程を集約化することで、各事業拠点のカット野菜の製造能力増強と生産性の向上を図る。ここ数年は、需要拡大が続く首都圏におけるFSセンターの能力増強が課題となっていたが、同マザーセンターの立ち上げにより課題を解消する。総投資額は40億円超となる見通しだ。
そのほか、「持続可能な農業の実現」に向けて就農支援プラットフォームの構築を進める。日本の農業従事者は高齢化が進むとともに減少傾向が続いており※、新規就農者の増加に向けた仕組みづくりが急務となっているため、同社もその支援に取り組む。具体的には、業務加工用野菜と稲作の二毛作による複数年契約により、同社及び業務提携先の(株)神明ホールディングスなどで買取保証を行い、就農から独立・拡大までを支援する取り組みとなる。同社では将来的に農産物市場は人手不足により売り手市場になると見ており、就農支援を行うことで国内農業の衰退を防ぐとともに、将来の仕入れ先となる「生産者の囲い込み」を行う。就農支援用プラットフォームには、将来的にe-ラーニング機能も実装する予定としており、生産者だけでなく教育機関などへの導入を進めていく。収益化はプラットフォームを完成させたのちに、自治体や外食企業、農機具メーカーなどから会費制として一定額を徴収することを想定しているが、同サービスで収益拡大を主目的とはしていない。
※ 2022年時点で平均年齢は68.4歳となっており、全体の80%以上が60歳以上で占められている。また、2025年の農業従事者は103万人で、2005年の220万人から半減している。
c) 研究部門・開発部門への投資拡大
既存事業の継続的な改善、事業領域の拡大に向け、各種研究・開発部門の強化を図り、将来の成長エンジンへとつなげる。開発テーマとしては、青果物の長期保存技術の確立や高付加価値商品の開発、青果物を基軸とした新規事業の開発などがあり、デザイナーフーズやデリカフーズの食品事業部で研究・開発を推進する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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