不二精機 Research Memo(5):2026年12月期は粗利率は保守的ながら、増収増益を積み上げる局面へ
1. 2026年12月期の業績見通し
2026年12月期の業績予想は、売上高8,836百万円(前期比1.3%増)、営業利益494百万円(同4.2%増)と、小幅な増収増益を見込む計画である。全体の設計としては、売上は伸ばしつつ、利益率は保守的に置きながらも、販管費の落ち着きで営業増益を確保するというものにある。具体的には、売上総利益は1,731百万円(同3.9%減)、売上総利益率は19.6%(同1.1ポイント低下)と、粗利率の低下を織り込む一方、販管費は1,237百万円(同6.8%減)と減少を見込み、結果として営業利益率は5.6%へ小幅に改善する計画となっている。前期に先行して増加したEV向け複合成形品の立上げ準備に伴う試験研究費や、人材確保を含むコスト増が一巡し、とりわけ日本で研究開発費が落ち着く前提で、粗利率の低下を販管費側で吸収する構図である。将来投資をやめて利益を作るのではなく、投資は継続しつつ費用の山を超えた分を利益に戻す一年として位置付けられる。
2. 事業部門別の業績見通し
(1) 射出成形用精密金型及び成形システム事業
射出成形用精密金型及び成形システム事業は、売上高3,230百万円(前期比4.5%増)を計画している。日本・中国で増収を目指すとしており、前期に業績を牽引した中国医療機器向け大口案件の経験も踏まえつつ、金型領域での受注積み上げを全社の成長ドライバーとして位置付ける計画である。案件の検収タイミングによる振れはあり得るものの、同社の収益基盤として確度を高めていくフェーズと言える。
(2) 精密成形品その他事業
精密成形品その他事業は、売上高5,607百万円(前期比0.4%減)と横ばいから微減を見込む。東南アジアで減収の見込みとしており、需要環境や顧客の生産動向を慎重に織り込んだ前提となっている。したがって2026年は、数量の大幅増で伸ばすというより、既存量産の安定運営を優先しつつ、EV関連を含む次の高付加価値品の立上げに向けた準備を進める局面と整理できる。
総じて2026年12月期は、射出成形用精密金型及び成形システムで増収を目指し、成形品は保守的な推移を見込むことで、粗利率低下を織り込みつつも販管費の抑制で営業増益を確保する計画である。焦点は、射出成形用精密金型及び成形システムの検収の確度を高めると同時に、精密成形品その他事業で東南アジアの減収を最小減に留めつつ、次世代の柱として期待されるEV向け新製品開発の成果を具現化できるかにある。
■中長期の成長戦略と株主還元
資本効率を意識した経営への転換。利益率改善と安定配当の両立へ
1. 中長期の成長戦略
(1) 営業利益率10%達成を最優先とする収益性重視の経営
同社は中長期的な成長戦略として、営業利益率10%以上の達成を最優先目標に掲げている。各事業部において毎年1%以上の改善を積み重ねることで実現を目指している。
同社の経営方針の最大の特徴は、売上金額や営業利益の絶対額ではなく、常に「率」で評価している点にある。社内では売上金額目標を掲げず、営業利益率の向上に注力している。スケールの拡大よりも体質強化を重視する姿勢が明確である。現状、鈴鹿工場でのEV向け複合成形品事業は赤字を生み出しているが、既存の射出成形用精密金型及び成形システムと精密成形品その他事業がしっかりと利益を確保することで、全体として収益性向上を図る方針である。
(2) 資本コストを意識した経営への転換
同社は現状、PL偏重の経営であることを認識しており、資本コストを意識した経営への転換を推進している。純資産に対する必要利益水準の達成が株価向上に不可欠であることを共有している。同社の現在のROEは2025年12月期で6.4%にとどまっており、さらなる改善が必要との認識のもと、企業価値向上に向けた意識改革を段階的に進めている。
(3) 成長分野への注力
既存の射出成形用精密金型及び成形システム事業と精密成形品その他事業で安定的に利益を確保しながら、将来の成長を担うEV向け複合成形品事業への投資を継続している。鈴鹿工場は現在赤字を生み出しているが、将来の柱として育成中である。大手Tier1との共同開発や大手Tier1 2社からの開発案件受注など、次世代事業の基盤構築を進めている。既存事業の収益力で次世代事業を支える形となっている。
2. 株主還元方針
同社は長らく無配が続いていたが、2016年12月期にインドネシア子会社の営業損益が黒字化したことを1つの転機として、13期ぶりに配当を再開した。以降は毎期の配当を継続することで、株主への姿勢として「安定配当」を明確にしてきた。もっとも、配当性向を見ると61.3%から13.4%まで大きく振れている。これは、同社の事業構造が、金型の大口案件の検収タイミングや、成形品の地域・顧客ミックス、立上げ局面のコスト先行などにより、利益が年度ごとに振れやすい性格を持つためである。配当性向を判断基準にすると、結果として安定配当が成立しにくい。配当性向の変動幅は、その構造的な事情を反映したものと整理できる。こうした前提の下で同社は、当面の還元方針として配当額ベースを重視し、1株当たり7円の配当を基本軸として据えている。利益の上下に応じて配当を増減するのではなく、配当水準を金額的に一定に保つことで株主の見通しを高め、同時に成長投資や人材確保といった中長期の施策も両立させる狙いである。なお、2021年には記念配当が実施されており、基本配当の安定運用を維持しつつ、節目の年には上振れ還元も行う余地を残している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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