ファンペップ Research Memo(2):独自開発した抗体誘導ペプチド技術で新薬開発に挑む
1. 技術概要
ファンペップ<4881>は2013年に、大阪大学大学院医学系研究科にて確立された機能性ペプチド※のデザイン・創製・最適化の技術を実用化する目的で設立された大阪大学発のバイオベンチャーである。社名のファンペップの由来は、機能(function)を持つペプチド(peptide)の可能性を追求し、医薬品や化粧品、医療機器として届けることで、誰もが健康で明るく、楽しい(fun)人生を送り、元気(pep)あふれる社会を目指す、との想いを込めて名付けられた。
※ アミノ酸が2~50個程度つながった化合物をペプチド、さらに多くつながった化合物をタンパク質と呼ぶ。ペプチドのなかにはインスリンやグルカゴンなどホルモンとして体内の器官の働きを調整する情報伝達を担う物質もある。特定機能を持たせることを目的に人工合成したものを機能性ペプチドと呼び、食品や化粧品分野でも注目され製品に使用されている。
同社の機能性ペプチドはヒト由来の抗菌ペプチド「AG30」※1を起源としている。安定性や製造コストの最適化に取り組むなかで、現在の主要パイプラインの1つである「SR-0379」や、抗体誘導ペプチドのキャリアである「AJP001」※2、抗菌及び消毒剤分野で需要が見込まれる抗菌ペプチド「キュアペプチン」※3を開発している。「AJP001」に標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープ※4を組み合わせることで、標的タンパク質の働きを阻害する抗体誘導ペプチドを作製し、医薬品として開発を進めている。また、「AJP001」よりも短い機能性ショートペプチド「OSK9」※5は、美容やアンチエイジングなどの非医療分野で展開している。なお、抗体誘導ペプチドは同社の登録商標である。
※1 「AG30」はアミノ酸を30個つなげたペプチドで、血管新生作用や抗菌活性の機能を持つ。
※2 「AJP001」は抗体誘導ペプチドのキャリア(自己タンパク質に対して抗体を産生させるアシストの役割を持つ)となり、標的タンパク質(自己タンパク質)のエピトープと組み合わせることで、多様な抗体誘導ペプチドの作製が可能となる。
※3 「キュアペプチン」は、天然型アミノ酸で構成する合成ペプチドで、細菌の細胞膜を破壊することにより抗菌作用を示す。広い抗菌スペクトルを有していることが確認されている。
※4 エピトープは抗原決定基とも呼ばれ、免疫系、特に抗体、B細胞、T細胞によって認識される抗原の一部。
※5 「OSK9」は、線維芽細胞の増殖を促進し、ヒアルロン酸やコラーゲンの産生を促進する効果が確認されている。
「体外」で人工的に製造する抗体医薬品に対し、抗体誘導ペプチドは体内で抗体を産生させるという優位点を持つ。このため、抗体誘導ペプチドは(抗薬物抗体を原因とする)効果の減弱が起こらず、長期にわたる治療効果の維持が期待できる。免疫細胞が一定期間抗体を産生するため、薬剤の投与間隔が長くなり(数ヶ月に1回の注射投与)、服薬アドヒアランス(服薬遵守)や利便性の改善により患者のQOL向上に寄与する。さらに、化学合成による大量生産で低コスト化が可能となるため、高額な抗体医薬品と差別化できれば患者負担の軽減だけでなく、年々深刻化する医療財政負担の軽減にも貢献するため開発意義は大きい。
また、抗体誘導ペプチドの競合技術との比較において、既存の生物由来のキャリア(高分子)が抱える課題点を解消できることも、「AJP001」の優位点として挙げられる。生物由来の既存キャリアは、反復投与時に効果が減弱する可能性がある(標的タンパク質よりもキャリアに対して抗体が産生されるリスクがある)ほか、製造上の品質確保の難易度が高く(生物由来で高分子のため品質管理が難しく、キャリアとエピトープの制御も難しい)、アレルギーやアナフィラキシーなどの副作用リスクも抱えている。
知財戦略も進めており、「SR-0379」は日米、欧州の主要国で特許を取得したほか、「FPP003」やそのほかのパイプラインについてもそれぞれ日米、欧州の主要国で特許が成立または出願中である。直近では2025年5月に抗IgE抗体誘導ペプチド「FPP004X」の組成物に関する物質特許が日本で成立したほか、同年8月に抗IL-17A抗体誘導ペプチド「FPP003」の物質特許について、欧州にて分割出願していた特許が成立し、「FPP003」の権利の強化を図っている。また、知財の管理体制も最適化が進む。「AJP001」に関する特許は大阪大学が保有し、独占的使用権を(株)ファンペップへルスケアが保有していた。抗体誘導ペプチドの開発品については「AJP001」の特許が含まれるため、同特許を含む開発品のライセンス交渉において、サブライセンス形態による権利構造の複雑さが制約となっていたが、同社は2022年10月に株式交換により完全子会社化した。これにより、今後の提携交渉がよりスムーズに進展することが期待される。
ファンペップヘルスケアは、(国研)科学技術振興機構(JST)の「研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム」に基づき、大阪大学の中神教授の研究成果である「AJP001」及び機能性ショートペプチド群の実用化のために、2016年に設立された。現在は美容分野を中心に事業を展開しており、アンチエイジング機能を持つ機能性ショートペプチド「OSK9」は、大手化粧品メーカーの高級化粧品に採用されるなどの実績を持つ。2022年にファンペップヘルスケアを子会社化したことを機に、創薬以外のビジネス(機能性ペプチドの化粧品分野などへの販売業務等)を子会社に移管して事業効率を高め、創薬以外の事業を育成することで創薬事業の開発費の一部を確保するねらいである。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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