ファンペップ Research Memo(6):「FPP003」はオプション契約終了で新パートナーを探索
3. FPP003(乾癬、強直性脊椎炎)
「FPP003」は、大阪大学大学院医学系研究科及び住友ファーマとの共同研究により同社が創製した開発化合物で、IL-17Aを標的タンパク質とする抗体誘導ペプチドである。IL-17Aは免疫反応に関するサイトカインの1つであり、幅広い免疫性疾患に関与しており、主なところでは乾癬※1や強直性脊椎炎※2などの疾患原因となっている。
※1 慢性の炎症性皮膚疾患で主な症状は、表皮細胞が異常増殖し、紅斑が生じて表面に鱗屑が付着・剥がれ落ちる。患者数は国内で約43〜56万人、米国で800万人以上とされている。治療法は軽症から中等症は塗り薬などの局所療法が、中等症から重症患者に対しては光線療法(紫外線照射)や内服療法が行われるが、これらの治療法が効かない場合は、「コセンティクス(R)」や「ヒュミラ(R)」などの抗体医薬品が使用されている。
※2 強直性脊椎炎とは、青年期に発症する脊椎と仙腸関節を主な病変部位とする全身性の慢性炎症性疾患を指す。病変部位で靭帯と骨との付着部位に炎症・骨化が起こり、疼痛・膨張・運動制限などが見られる。症状が進行すると脊椎が強直(骨性に固まり動かなくなる)して日常生活能力が著しく低下するケースもある。原因は不明で根治療薬がなく、国の指定難病となっている。治療法としては、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)が使用されるが、効果が不十分な場合や副作用の問題がある場合には「コセンティクス(R)」や「ヒュミラ(R)」などの抗体医薬品が使用される。
乾癬を適応症としてオーストラリアで実施した第1/2a相臨床試験の結果(2023年12月発表)によると、安全性及び忍容性に問題はなく、抗体の産生も確認されるなど主要評価項目を達成した。しかし、探索的評価項目(有効性)については一定の改善傾向が確認されたものの、症例数が少なかったこともあり、有効性を明確に判断するまでには至らなかった。また、2023年8月より(国研)日本医療研究開発機構(AMED)の助成金を使って進めてきた強直性脊椎炎を適応症とした医師主導の臨床試験は、2025年5月に終了した。住友ファーマでは、自社パイプラインの開発方針などにより、2025年10月にオプション契約の終了を決定した。これを受けて、同社は新たなライセンス先を探索することにしているが、現在は「FPP004X」「SR-0379」の開発にリソースを傾注していることもあり、同社における開発活動は控える方針としている。
新規パイプラインの創出にも注力
4. その他の開発動向
同社はアカデミアとの共同研究なども行いながら複数の開発候補品を抱えており、このなかから少なくとも1品目について新規開発化合物を決定し、2025年内の前臨床試験開始を目指していた。ただ、開発候補品の潜在価値や製薬企業への導出の可能性などを従来以上に熟慮して検討を進めており、現時点で新規開発化合物は決定していない。有力候補としては従来と変わりなく、良好な研究データを取得できている片頭痛や熊本大学との共同研究による脂質異常症(標的:ANGPTL3)※を対象とした抗体誘導ペプチドなどが挙げられる。
※ 脂質異常症とは血液中の脂質の値が基準値から外れた状態であり、一般的に過食や運動不足などの生活習慣によって生じることが多い。家族性高コレステロール血症のように、遺伝子変異が原因で遺伝的に脂質異常症を有するケースもある。
アカデミアとのそのほかの共同研究として、2023年11月に大阪大学大学院医学系研究科とアルツハイマー病(標的:リン酸化タウタンパク質)を対象としたワクチン開発に向けた共同研究、2024年2月に東京大学大学院医学系研究科と心不全(標的:IGFBP7)を対象とした治療薬の開発に向けた共同研究を進めている。いずれも対象患者数が多く市場規模の大きい疾患となるだけに、今後の動向が注目される。
そのほか新たな取り組みとして、次世代創薬技術として期待されている特殊ペプチド(非天然アミノ酸を含む環状ペプチド)による創薬研究を開始した。特殊ペプチドは、低分子医薬品と高分子医薬品の間の中分子医薬品に該当する。低分子医薬品では結合できない標的分子を対象にできる一方、高分子医薬品より安定性や組織浸透性が高い。これにより従来のモダリティ(創薬技術)ではねらえない標的分子を対象にする創薬研究が可能となるほか、注射投与に限定されていた抗体医薬品を経口剤として開発できる可能性もある。同社は2025年4月に、特殊ペプチドの探索サービスを行う富士フイルム和光純薬と研究委託契約を締結し、特定の標的分子に強く結合する特殊ペプチドの探索を開始した。また、AI創薬支援サービスを行うゼウレカとコンサルティング契約を締結し、AIを活用することで特殊ペプチドの創薬研究を加速させている。今後は研究の進展にあわせ、ゼウレカとの共同研究契約締結も視野に入れている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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