VIS Research Memo(6):心臓血管手術後に惹起される虚血性急性腎不全の予防を対象とした核酸医薬品の開発へ
2. パイプライン事業
(1)2025年12月期の進捗状況
同社は、心臓血管手術後に惹起される虚血性急性腎不全の予防を対象とした核酸医薬品を1本目の社内パイプラインとして決定し、2025年12月に国内で特許出願した。心臓血管手術では一時的に血流を止めるため、虚血により臓器が損傷するリスクがある。特に虚血の影響を受けやすい腎臓は急性腎不全を惹き起こしやすい。現在有効な予防法はなく、開発に成功すれば患者の術前・術後のQOL向上に大きく貢献することになる。
対象遺伝子となるp53の発現が腎臓細胞の予期しないアポトーシス※1に関与していることから、p53を抑制することで腎不全を予防できることが知られている。同業他社が開発中のsiRNA医薬品※2の候補物質で実施された第2相臨床試験では、p53の抑制による腎不全の予防に優位な効果が確認されている。同社が開発した候補品は同業他社の候補物質より安価かつ低毒性を期待できるだけでなく、それを上回る活性を持つ(p53の抑制力が強い)ことから、さらに有効な治療が期待できるものと思われる。同社では2026年より動物実験を開始し、早ければ2028年の臨床試験入りを目指している。なお、動物実験では新たに開発したDDS「Perfusio」を用いることで、さらに薬効が高く副作用の少ない治療法の開発を進め、上市時には「Perfusio」の利用も併せた新規治療法として保険収載をねらっている。
※1 アポトーシス:生物が個体を健全に保つために、古くなった細胞や不要な細胞が計画的に自滅する仕組みのこと。細胞自身が小さく縮み、断片化して他の細胞に不用物として回収されるように処理するシステムで、炎症を起こさず、体を正常に保つための必須の働き。
※2 siRNA 医薬品:特定のmRNAに結合して分解を促進し、病気の原因となるタンパク質が体内で生成されないようにして疾患の発生を抑える「核酸医薬品」の一種。
ピーク時売上高は年間約150億円を想定している。国内における心臓血管手術が年間約5万件あり、このうち発症リスクの高い65歳以上の高齢者が35%(17,500件)を占める。同社ではまずは65歳以上の患者を対象に開発を進める。このうち実際の使用率を85%(14,900件)、薬価100万円を前提とすれば売上高は約150億円となる。開発に成功すれば、海外への展開や高齢患者以外への適用、その他の虚血性疾患に対する適応拡大などを進める予定で、売上規模はさらに拡大することになる。
そのほか、パイプライン事業では、同年11月には島根大学と肺移植後の機能不全を抑制する新たな医薬品の研究開発を目的とした共同研究を開始しており、新たなパイプラインの候補となる可能性がある。そのほか、2026年1月に東京慈恵会医科大学と共同研究を進めていた筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)向け治療薬となる核酸医薬品の物質特許が公開された。ALS治療薬の開発については難易度が高く、研究開発費も嵩むことから同社単独で進める計画はなく、関心を示す製薬会社があればライセンスアウトする方針だ。
(2)2026年12月期の目標と「Perfusio」の事業化について
2026年の目標として、2本目の社内パイプライン創出に取り組むほか、核酸医薬についての各種課題を抜本的に解決できる可能性のあるDDS「Perfusio」の事業化に向けた取り組みを積極的に推進する。
「Perfusio」は既に認可済みのカテーテルと閉塞用バルーンカテーテルを組み合わせた構造となっている。仕組みとしては対象臓器につながる動脈と静脈に特殊なバルーンカテーテルを入れた後、バルーンを膨らませて血管を一時的に閉じ体血流より対象臓器を独立させ、その状態で対象臓器へ動脈側から薬を含む液体を流し、対象臓器に集中的に届ける。そして、静脈側から使い終わった薬を回収する。これにより、対象臓器に確実に必要量の薬剤を届けることが可能となる。また、静脈注射の場合は全身に薬剤が回るため副作用リスクが増大するが、「Perfusio」は対象臓器のみに必要量分だけ投与し回収するため、副作用リスクが大幅に軽減できることもメリットとなる。過去に副作用が発生し開発を断念した化合物も「Perfusio」を使うことで、開発を再開できる可能性も出てくる。
同社では社内パイプラインでの利用だけでなく、製薬会社へのライセンスアウトによる収益化も目指している。まずはカテーテルメーカーとパートナー体制を構築し、全身のどの臓器でも利用できるような汎用の医療機器として、製造販売体制を整備する考えだ。また、「Perfusio」の認知度を高めるために、共同研究先である東京慈恵会医科大学で研究成果の外部発表も積極的に進める。「Perfusioを用いて、(全身投与で認可されている)既存の医薬品を使う」ことは医師の裁量の範囲で可能であるが、臨床現場で自由に使用可能とし、医療機関からはライセンス料を取らない方針としている。
自社での利用については社内パイプラインに「Perfusio」をはじめから利用する前提で開発する。他社が医薬品開発で「Perfusio」の利用を希望する場合には、臨床試験時等にライセンスアウトする。対象疾患としては副作用の強い治療薬の多い固形がんなどが想定される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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