VIS Research Memo(3):プラットフォーム事業とパイプライン事業を展開
1. 事業内容
Veritas In Silico<130a>は独自のAI創薬プラットフォーム「aibVIS」の高い汎用性と拡張性を生かし、これまで主軸として展開してきたプラットフォーム事業に加えて、2025年から始まる中期計画の中で、ハイブリッド型ビジネスに転換した。
プラットフォーム事業では、共同創薬研究契約を締結することで、契約一時金のほか研究支援金、研究の進展によって得られる研究マイルストーンなど創薬初期段階から安定的な収益を期待できる。また、開発ステージに移行後は開発の進展によって得られる開発マイルストーン、上市後は販売高に係るロイヤリティ収入や累計売上高により設定された売上マイルストーンを得るビジネスモデルである。開発ステージに移行する際には開発・製造・販売ライセンス契約も締結することになるが、これらの条件も含めて基本的に共同創薬研究契約の締結時に盛り込まれている。現在、4社との共同創薬研究契約に基づく既存プロジェクトが全て成功した場合には、契約一時金・研究支援金・研究マイルストーンで最大総額約19.4億円(取得済み総額9.21億円)、開発マイルストーンで最大総額約80.5億円、売上マイルストーンで最大総額約1,050億円を得られることになっている。ただし、創薬開発の成功確率は低く、現実的にすべてのプロジェクトが成功するわけではない点には留意が必要だ。
一方、パイプライン事業では、他社との創薬では実績のある「aibVIS」を用いて自社で創薬を進める事業となり、研究・開発のいずれかの段階で製薬会社にライセンスアウトし、契約一時金と開発マイルストーン、上市に成功した場合はロイヤリティ収入や売上マイルストーンを得るビジネスモデルである。
AI創薬プラットフォーム「aibVIS」により効率的な創薬研究を実現
2. プラットフォーム事業
同社は、独自のAI創薬プラットフォーム「aibVIS」を活用し、契約相手先の製薬会社と共同でmRNA標的低分子医薬品の創出を目的とする創薬研究を実施している。「aibVIS」は、AI創薬技術を活用してmRNA上の創薬標的となる部分構造を探すRNA構造解析の技術などと、標的構造に結合する化合物を探索するスクリーニング法をはじめとする生物学的な実験技術を集約したプラットフォームである。同社が持つRNAに特化した構造解析技術により、創薬においてmRNAを標的とできる。さらに、mRNA標的構造と低分子化合物の相互作用をスーパーコンピュータで徹底的に解析することで、mRNA標的に対して高い活性と選択性を持つ低分子化合物を合理的に設計支援することが可能である。こうした「aibVIS」を活用することで、従来できなかったmRNAに対する創薬を具体的に実施し、医薬品候補化合物の取得が可能になる。
なお、「aibVIS」が提供するmRNA標的低分子医薬品の技術は、従来のタンパク質を標的とする創薬では治療薬の開発が困難とされていた疾患を含め、幅広い疾患に適用できる可能性があるという点が画期的である。同社によれば、疾患に関連するタンパク質は5,068種類あり、このうち約6割を占めるのが、タンパク質標的創薬では不可能だがmRNAを標的にすることで医薬品の開発の可能性があるとされるタンパク質である。現在、医薬品として認可されている疾患関連タンパク質の4.7倍の種類にのぼり、mRNA標的低分子創薬の研究開発に関する潜在的なポテンシャルの大きさが窺える。
「aibVIS」では様々な疾患に適用可能ではあるが、特に低分子医薬品の開発が望まれているがん領域や中枢神経疾患でのニーズが高い。がん領域は従来のタンパク質標的創薬では治療できないがんが多いためだ。数多くのがん患者のために、抗体医薬品などと比べて製造コストが相対的に低い低分子化合物の創薬が望まれている。また、中枢神経疾患についても抗体医薬品等では血液脳関門(BBB)※でブロックされてしまうため、BBBを通過する低分子医薬品の開発が強く望まれている領域である。
※ 血液脳関門(Blood brain barrier):血液と脳の組織液との間の物質交換を制限する機構。
製薬会社との共同創薬研究においては、同社が主にスクリーニングと細胞実験、化合物合成以外のプロセスを担当する。製薬会社は同社が技術供与したスクリーニング法を用いてスクリーニングを実施し、細胞実験による効果測定(スクリーニング結果の検証)、化合物の合成展開、薬物動態及び安全性研究、化合物の効果を検証する動物実験などを担当する。同社では、これまでに実施した複数の共同創薬研究に基づくRNA構造解析データをはじめ、一連のスクリーニングや実証実験の実績、さらに社内研究によるリード化合物最適化での実効性証明などの高度な研究データを数多く蓄積している。これらを学習データとして「aibVIS」に組み込むことで、候補化合物の特定に至るプロセスの効率化を実現している。このスクリーニング手法は、日欧に続いて米国でも2025年7月に特許が成立しており、創薬の基礎研究段階における他社との差別化要因である。
なお、mRNA標的低分子医薬品の開発を進めている企業は、国内では同社及びその提携先くらいだが、海外では米国に少なくとも3社※存在する。いずれの企業もまだ未上場で、また各社が扱う化合物群もまだ臨床開発ステージまでには到達していないものの、大手製薬会社とライセンス契約を締結しており、今後の開発動向には注目しておきたい。上市実績ができれば、mRNA標的低分子医薬品に対する注目度が一気に高まるためだ。
※ Arrakis Therapeutics、Ribometrix、Anima Biotechの3社。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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