VIS Research Memo(1):低分子創薬に加え核酸医薬品を新規DDSと組み合わせ、新たな治療法の確立を目指す
Veritas In Silico<130a>は、独自開発のAI創薬プラットフォーム「aibVIS(エイアイビス)※1」を基盤にした2016年設立のAI創薬バイオベンチャーである。この「治療できないを治療できるにする」技術は、希少疾患向けの核酸医薬品だけでなく、多くの患者さまが抱える疾患に対応する低分子医薬品の創出も可能にしている。複数の製薬会社等と共同創薬研究契約を締結してmRNA標的低分子医薬品※2の創出に取り組むプラットフォーム事業で成長、2024年に東京証券取引所(以下、東証)グロース市場に上場した。2025年より核酸医薬品の自社パイプライン創出に取り組むパイプライン事業を開始している。
※1 従来、「ibVIS(アイビス)」と呼んでいたが、これまでのルールベースAIに加え、蓄積してきた研究データなどを学習データとしてAIエンジンに組み込んだ複数の新規データ駆動AIの利用も開始したことで、創薬研究がさらに進んだことから、2026年1月より「aibVIS」に改称した。
※2 mRNA:遺伝子情報やタンパク質合成など生命の基盤を形成する重要な分子であるRNA(リボ核酸)のうち、DNAの情報をリボソーム(タンパク質を合成するための細胞内の構造物)に運び、タンパク質の合成を指示する役割を担う。mRNAは、細胞内でタンパク質が合成される際の設計図であり、各タンパク質に対応してそれぞれ個別のmRNAが存在する。mRNA標的低分子医薬品:疾患の原因となるタンパク質に直接作用する従来型の低分子医薬品とは異なり、疾患原因タンパク質の情報をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)に作用することでそのタンパク質の生成を阻害し、疾患の抑制などの従来型の低分子医薬品と同等の治療効果を得る医薬品。そのうえで、タンパク質に作用する低分子医薬品が作れなかった疾患が、mRNAを標的とする低分子医薬品によっては治療できるようになる可能性があることから、世界的に注目されている。
1. プラットフォーム事業の動向
プラットフォーム事業における2025年12月期の事業トピックスとしては、塩野義製薬<4507>との共同創薬研究において、従来のタンパク標的創薬では創出を成し得なかった特異的な作用を示す高活性のヒット化合物を取得し、マイルストーンを達成した点が挙げられる。今後はリード化合物を経て医薬品候補化合物まで最適化するフェーズに進む。mRNA標的低分子医薬品については世界でも上市実績がなく、今後の開発動向が注目される。2026年12月期は外部環境の変化に対応しつつ、新たに農薬市場への展開も視野に入れており、2件の新規契約締結を目指している。
2. パイプライン事業の動向
パイプライン事業における2025年12月期の事業トピックスとして、同社初の自社パイプラインとして心臓血管手術後に惹起される虚血性急性腎不全の発症を予防する核酸医薬品に決定したことが挙げられる。現在は急性腎不全の発症を防ぐ有効な予防法がなく、アンメットメディカルニーズの強い領域である。まずは発症リスクの高い65歳以上の高齢者を対象に開発する予定だが、国内の想定市場規模はピーク時の売り上げとして毎年150億円程度を見込んでいる。開発に成功すれば海外への展開や他の虚血性疾患への適応拡大なども検討する。2026年12月期に動物実験を開始する予定で、早ければ2028年からの臨床試験入りを目指す。また、2本目のパイプラインも2026年12月期に決定する。共同研究先である三菱ガス化学<4182>の製造技術も活用して、業界動向に先だちQbD※の考え方により設計段階から品質、製造コストを考慮して開発を進める。同社では2027年までに3本のパイプライン創出を目標としている。
※ QbD:製品設計の段階から製造コストにかかわる製造のしやすさや品質の高さを意識した製品を作り出すための開発プロセス。
3. DDS「Perfusio」について
同社は2026年に新規事業開発室を設置し、カテーテルを用いたDDS※「Perfusio(パーフュージオ)」の事業化に着手した。同社が独自に想起したもので、日本での特許も既に取得した。「Perfusio」の特徴は、薬剤を必要な部位にのみ投与・回収できるため全身への投与に比べ、治療効果を高められること、副作用リスクが大幅に軽減できること、薬剤の投与量を極小化できるため薬剤コストを圧縮できること、さらに臨床開発期間を短縮できる可能性などが挙げられる。同社は、まず自社のパイプラインと組み合わせて使用することで保険収載を目指す。また、他の製薬会社においても、これまでに副作用問題などで開発を断念した候補化合物が、「Perfusio」を使用することにより再開できる可能性もあることから、「Perfusio」を第三者へライセンスアウトして収益を獲得することも想定している。まずは、認知度の向上に向けて共同研究のデータを学会などで積極的に情報発信する予定だ。
※ DDS(ドラッグ・デリバリー・システム):必要な薬物を必要な時間、適切な場所に届けることを可能にする技術。
4. 業績動向
2025年12月期の業績は事業収益が前期比53.2%減の91百万円、営業損失が396百万円(前期は212百万円の損失)となった。マイルストーン収入の減少が主な減収要因となり、研究開発費や販管費の増加もあって損失額が拡大した。
2026年12月期の業績は、事業収益が前期比24.2%増の113百万円、営業損失は569百万円を見込んでいる。事業収益はプラットフォーム事業における研究支援金とマイルストーン収入を見込む。新規共同創薬研究等の契約一時金は計画には織り込んでおらず、新規契約が決まれば上振れ要因となる可能性がある。一方、費用面では研究所移転にかかる一時費用の発生、パイプライン事業の強化に伴う研究開発費の増加、並びに人件費の増加を見込んでおり、損失が続く見通しだ。
なお、2026年4月に武田薬品工業<4502>との共同創薬研究に関する契約終了を発表したが、業績に与える影響は限定的なため、業績計画に変更はない。
5. 中長期の成長戦略
同社は中長期の成長戦略として、プラットフォーム事業とパイプライン事業によるハイブリッド型のビジネスモデルを展開することで成長を目指す。当面は先行投資段階ではあるものの、2028年以降は共同創薬研究プロジェクトの進捗で開発マイルストーンの増加が見込まれるほか、パイプライン事業についても2031年以降は契約一時金やマイルストーン収入などの獲得が期待できる。将来的には研究開発・販売機能も備えたスペシャリティファーマへ進化することによる持続的な成長を目指す。なお、既存の共同創薬研究のプロジェクト※がすべて成功した場合、研究支援金及び研究・開発マイルストーンで最大約100億円、上市後の売上マイルストーンで最大約1,050億円の収益が見込まれている。
※ 東レ<3402>、塩野義製薬、ラクオリア創薬<4579>、武田薬品工業とがん領域や中枢神経疾患、感染症領域等のプロジェクトを進めている。
■Key Points
・2025年5月に塩野義製薬とのプロジェクトでマイルストーン達成
・心臓血管手術後の虚血性急性腎不全を対象とした核酸医薬品の開発に着手
・2026年12月期業績は保守的に策定、研究開発費の増加で損失が続く見込み
・ハイブリッド型ビジネスで事業を拡大、2028年以降に成長軌道に
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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