Zenken Research Memo(8):2030年6月期に営業利益30億円を目指す(1)
Zenken<7371>は2025年8月に中期経営計画「Road to 250」を公表した。最終年度を2030年6月期とし、事業ポートフォリオの転換と収益力の大幅な向上を通じて、時価総額250億円の実現を目指す。従来はマーケティングセグメントが収益の中心であったが、今後は海外人材セグメントを成長ドライバーに位置付け、より高付加価値かつストック性の高い収益構造へ転換する方針である。
1. 全社の定量目標
2030年6月期の数値目標は、売上高130億円(2025年6月期実績55.3億円)、営業利益30億円(同3.8億円)、親会社株主に帰属する当期純利益20億円(同3.4億円)である。営業利益は約7.8倍への拡大を見込んでおり、収益性の抜本的改善を前提とした計画である。2025年6月期対比の営業利益の増減要因は、戦略コンテンツマーケティング・セールス実行支援がプラス9億円、人的資本マーケティングがプラス9億円、海外人材紹介がプラス17億円などである。配当は中期経営計画の進捗に合わせ、将来的に1株当たり80円水準を目指す方針である。ROEは2.8%から13%以上へ改善し、株主資本コストを安定的に上回る水準を目指す。財務面ではD/Eレシオを0.05倍から0.6倍へ引き上げる計画であり、保有不動産を活用した約100億円の追加借入余力を成長投資に振り向ける。M&A投資枠として100億円を設定し、のれん償却後ベースでEPSの増加が見込める案件を厳選する方針である。
2. セグメント別の成長戦略
セグメント別売上高目標は、マーケティングセグメント69億円(2025年6月期実績37.1億円)、海外人材セグメント56億円(同13.6億円)、不動産セグメント・その他5億円(同4.6億円)である。海外人材の構成比が大きく高まり、収益ポートフォリオの重心が移る計画となっている。
マーケティングセグメントの中核戦略は「ニッチトップマーケティング」である。専門性の高い分野に特化したWebメディアを基盤とし、顧客企業の売上拡大に直結する支援へと進化させる。近年は生成AIの普及や検索アルゴリズムの高度化によりSEO依存モデルの不確実性が高まっているが、同社は動画・SNS・多言語展開などチャネルの多角化を進めていく。また、集客支援にとどまらず、商談設定後の追客支援や営業代行など下流工程まで関与することで、収益力強化を図る。KPIはトータルコンサルティング提供企業数970社、海外マーケティング提供企業数360社、1顧客当たり年間平均売上高490万円であり、単価上昇と継続率向上を図る計画である。
人的資本マーケティングも重要な成長領域である。企業の人材投資は採用偏重から定着・活躍重視へとシフトしている。政府もリスキリングや人的投資の開示拡充を推進しており、人的資本経営への関心は高い。同社は職業ブランディングメディア、現職社員の口コミメディア「VOiCE」、エンゲージメンターを組み合わせ、採用から定着までを一気通貫で支援する体制を整える。職業ブランディングメディア運用数400件、「VOiCE」掲載企業数650社、エンゲージメンター実施企業数累積130社を目標とする。コンテンツ制作力と業界特化の知見を生かし、顧客企業の売上拡大と組織力向上を同時に支援するパートナーへの進化を目指す。
海外人材セグメントでは、日本国内の構造的な人材不足を背景としてIT・機械・電気エンジニア、土木建築業界で人材不足が深刻化していることから、インドのベンガルールの大学やインド政府系機関とのネットワークを基盤に、紹介機能と定着支援機能を一貫して提供する。単発の人材紹介にとどまらず、祖業の強みを生かした語学教育を紹介後の定着支援として担うことで、フロー型収入とストック型収入の両立を図るモデルを強化する戦略である。
エンジニア人材領域では、インドのベンガルールにおける51の提携大学(2025年6月末時点)との連携を軸に、IT・機械・電気エンジニア、土木建築業界のエンジニア人材を日本企業へ紹介する体制を強化することに加え、技術者不足が深刻な土木・建築業界への展開を拡大する。大学内キャリアセンターの設置や実務に直結する日本語検定支援を進め、採用から入社後の活躍までを一気通貫で支援する。入社後は生活オリエンテーション、定期カウンセリング、企業向け英語研修などを提供し、紹介手数料に加えて日本語教育料、サポート料、各種支援料などを積み上げるモデルを確立する。特定技能人材領域では、インドネシアの送出機関との独占契約やインド政府系機関との提携を生かし、介護分野を主軸に宿泊分野等へ展開を広げる。海外人材への基礎的な語学教育や異文化教育を実施する。入職後は管理サポート、定期面談、介護福祉士試験対策講座の提供などにより定着率を高める。紹介経由以外の人材にも語学教育支援を提供し、支援人数を拡大することで管理手数料やサポート料などの継続収入を積み上げる構造を強化する。中期経営計画後半にかけては、紹介後支援売上高の積み上がりが加速する見通しである。入社・入所後の基礎的日本語教育、生活支援、定期カウンセリング、資格取得支援講座などを継続的に提供することで、期末時点の支援人数が増加し、ストック型収入比率を高めていく。
KPIとして、エンジニア人材については紹介人数(単年)500人、紹介企業数(累積)600社を掲げる。特定技能人材の紹介人数目標は介護分野が1,600人、宿泊分野が600人、支援人数(期末時点)4,200人を目指し、紹介後支援の積み上げを成長ドライバーと位置付けており、規模拡大と収益安定性の向上を目指す。
不動産セグメントは安定的な賃料収入を確保しつつ、資産価値に裏付けられた借入余力を活用して成長投資を支える役割を担う。単体での高成長を追求するのではなく、バランスシート戦略の中核として機能させる方針である。安定キャッシュ・フローを基盤にレバレッジを最適化し、連結ベースでの資本効率向上を図る。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林 拓馬)
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