1stコーポ Research Memo(6):2028年5月期に売上高500億円、営業利益35億円を目指す
1. 中長期ビジョンの全体概要
ファーストコーポレーション<1430>は創業20周年を迎える2031年5月期を見据え、初の中長期ビジョン「First VISION 2031」を策定し、2026年1月に公表した。本ビジョンは、過去の中期経営計画「Innovation」の流れを継承しつつ、2031年5月期までの6年間を2つのフェーズに分け、成長を段階的に加速する構想である。建設業界ではゼネコン不足が常態化しており、不動産開発と建築施工の両輪を持つ同社の事業機会は一段と拡大している。こうした環境下で、組織的な成長余地が明確になったことを背景に、持続的成長への確実性を高めるためこのタイミングでの公表に至った。
初期3ヶ年のフェーズ1(2026年5月期~2028年5月期)は「足場固め・基盤構築」と位置付け、売上高500億円、営業利益35億円を目標とする。続くフェーズ2(2029年5月期~2031年5月期)では「進化と飛躍」を掲げ、売上高1,000億円、営業利益率8%以上の実現を目指す。これらの達成に向け、人材確保を通じた施工能力拡大を最優先とし、DXや人材育成による業務効率化を通じて収益力の向上を図る方針である。同社は、中長期ビジョンの達成を通じて、東証プライム市場への再上場を目指す。
なお、本ビジョンでは成長目標を、2027年5月期において売上高44,000百万円、営業利益3,080百万円、経常利益2,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,000百万円としており、これは2024年7月に策定した3ヶ年の中期経営計画「Innovation2024」における2027年5月期の数値目標(売上高40,000百万円、営業利益2,950百万円、経常利益2,800百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,940百万円)を上回る水準である。
2. 重点施策
(1) 人的資本投資
同社は、売上高1,000億円体制への移行に向けた最大の成長ドライバーとして、人的資本への大幅な投資を経営の最優先事項としている。2031年5月期までに、従業員数を現在の約180名から300名以上へ拡充する計画であり、特に若手人材の確保を重視する。2027年卒以降の新卒採用は毎年30名以上とし、従来実績を大きく上回る規模での採用を進める。
人材の確保と定着を支える施策として、「給与・希望・かっこいい・休暇」を軸とした「新4K」の実現を掲げている。給与・処遇面では、業界平均を大きく上回る水準を維持し、加えて、35歳以下の若年層に対して住宅手当を支給するなど、手厚い処遇を整備している。
教育・キャリア面では、トレーナー制度や階層別・事業別研修を通じて成長環境を整備するとともに、資格取得を支援している。離職率については、2025年5月期実績の11.8%から、2028年5月期に6.0%、2031年5月期には5.5%に引き下げることを目標としている。
また、人材確保の選択肢の1つとして、建設業や不動産業を中心としたM&Aについても機動的に検討する方針である。
(2) 事業推進
1) 造注方式及び共同事業の推進
同社の強みである造注方式をさらに深化させ、高利益率の確保を図る。加えて、従来の建物引渡で完結するビジネスモデルから、マンション販売まで関与する「共同事業」へのシフトを加速する。2031年に向けて、収益機会を最大化できる共同事業の比率を過半数まで引き上げる方針であり、不動産開発から建築施工、販売までを一貫して担うことで、バリューチェーン全体での利益獲得を目指す。
2) 建築種別の拡大
主力の分譲マンションに加え、建築種別の多様化を推進する。住宅分野では、若手所長の育成に適した賃貸マンションの受注を増やし、施工部門全体の底上げを図る。また、非住宅分野では、ホテルや商業施設に加え、データセンターなどの特殊分野への参入も検討している。賃貸マンション及び非住宅案件の売上は、現在それぞれ約3%ずつとなっているが、2028年5月期にはそれぞれ10%、2031年5月期には20%まで引き上げる計画である。再開発事業は、JR前橋駅北口の実績をモデルケースとして、自治体と連携しながら事業参画を強化し、中長期的な安定収益源として育成する。
賃貸マンションは、福岡市博多区で2件、東京都足立区及び中野区の合計4件が進行中であり、再開発事業は、青森県弘前市、横浜市緑区、長崎県大村市におけるプロジェクトに参画している。
3) 見送り案件への対応(施工キャパシティの制約解消)
同社の成長余地として注目されるのが、施工管理体制の制約によって受注できていない「見送り案件」である。同社は「安全と品質は全てのものに優先する」という経営理念の下、人員不足が品質や安全に影響する可能性がある案件については、受注を見送る方針を徹底している。
2026年5月期中間期時点で、人員不足などを理由に見送った案件は12件(総戸数1,034戸)に上り、見積金額は300億円超と、前期の通期受注実績を上回る規模となっている。現状の施工キャパシティは年間売上高200億円程度にとどまり、人材不足が成長のボトルネックとなっている。
この機会損失を成長へ転換するため、人的資本投資を最優先とし、施工体制を抜本的に強化する。併せて、協力会社との連携深化やM&Aによる人材確保を通じ、優良案件を適正な利益率で確実に獲得できる体制への移行を目指す。
4) 安全品質管理
「安全と品質は全てのものに優先する」という理念の下、管理体制を一段と強化する。社内専門部署による定期パトロールに加え、杭工事や配筋、生コン、内装下地に至るまで、第三者機関による施工監査を自主的に導入している。コストや手間を惜しまない品質管理が、デベロッパーからの高い信頼と継続受注につながっている。
5) 業務効率化(DX推進)
現場の生産性向上と労働時間削減に向け、全社を挙げてDXを推進している。2024年度に発足した建設ディレクターグループが、現場社員の事務作業や帳票作成をデジタルで支援する体制を構築し、2024年度には現場社員の時間外勤務を前年度比36.6%削減した。
また、施工管理ツール「ANDPAD」を活用し、現場情報をリアルタイムで共有・管理することで、品質維持と業務効率化の両立を実現している。
■株主還元策
配当性向30%を下限とし、2028年5月期まで毎期増配を計画
2025年5月期の1株当たり配当金は年間42.00円とし、前期比11.00円の増配となった。2026年5月期は年間44.0円と、前期比で2.0円の増配を予想している。
創業20周年となる2031年5月期に向けた中長期ビジョン「First VISION 2031」では、フェーズ1の2028年5月期までの配当計画を更新した。安定的、かつ持続的な利益成長に応じて、段階的な株主還元を行う方針であり、2027年5月期には年間50.0円、2028年5月期には年間58.0円を計画している。さらに、フェーズ2の最終年度であり創業20周年となる2031年5月期には、配当性向40%を目安として検討する。
配当以外の株主還元策として、株主優待制度を実施しており、保有株式数と保有期間に応じてQUOカードを進呈している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 渡邉 俊輔)
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