アートネイチャ Research Memo(7):販促の見直しなどで新規売上に回復の兆し
アートネイチャーは、新規売上の回復を図るため、様々な販促策を見直しその効果が出つつあります。特に、ウェブやSNSの活用、新たな商品の投入により、女性向け製品で回復の兆しが見え始めています。コロナ後、旅行や外食に消費が集中し、ウィッグの優先度が下がったことが原因で売上が低迷していましたが、「ジャスミー」などの女性向け新商品が好スタート。また、男性向けでは、テレビCMや無料相談サイト「HAIRの部屋」が新規顧客の関心を引いています。2026年3月期の業績見通しでは、売上高および利益の増加を予測しており、特に女性向け事業に注力する計画です。
2. 新規売上の課題と対策
コロナ禍以降、「ジュリア・オージェ」やアフターサービス、増毛商品のリピートは順調に回復したが、オーダーメイドウィッグの新規の売上が男女とも苦戦を続けている。この要因は、アフターコロナにおける個人消費がモノより旅行や外食などサービスに集中したためウィッグ購入の優先順位が下がったこと、「反響営業」を取り巻く環境がやや変化してきたことにある。「反響営業」はこれまでテレビCMや新聞広告、イベントを通じて主に電話で反響を得ていたが、インターネットの時代になってメインターゲットの中高齢層でもWebによる問い合わせや、ふらっと来店しての問い合わせ(特に女性が多い)が増えているが、そうした変化への対応が不十分だったことなどに課題が残った。また、女性の場合は、1つ前の旗艦商品「フィーリン」が爆発的ヒットとなった反動もあり、回復に時間がかかっていることも要因と考えられる。男性の場合は、ウィッグや増毛に対してまだ規模は小さいものの、発毛や育毛を謳う企業の広告が目につくようになり、毛髪の課題解決への入口で選択肢が増えたことも要因として挙げられ、そうした企業を競合として意識する必要が出てきた可能性がある。なお、低価格ウィッグ販売する企業が増えていたが、アフターコロナでは高価格ウィッグを販売する企業以上に苦戦している。
業界全体も新規顧客の獲得に苦戦しているようだが、同社はこうした課題に対して様々な対策を講じている。販促については、WebやSNS、AIの活用、出店施設との連携を重視した手法も取り入れるようになった。男性向けウィッグでは、試行錯誤しながらも新たなテレビCMを投入、一方で高性能AIによる無料相談サイト「HAIRの部屋」を開設した。女性向けでは、リピートが好調のため現状の販促方法を基本的に変えず、長らく旗艦商品の座にあった「フィーリン」に代わって2025年10月に「ジャスミー」を投入した。また、リピート専門の店頭のスタイリストと「反響営業」のカウンセラーや理美容の従業員が連携し、来店した見込み客への対応力を強化している。この結果、男性向けのテレビCMは検証中だが「HAIRの部屋」が好感触、「ジャスミー」も「フィーリン」ほどではないものの女性向け新規売上を押し上げはじめるなど、回復の兆しが見えてきた。
新規売上の回復や販管費効率化で2ケタ増益予想
3. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期の業績見通しについて、同社は売上高47,623百万円(前期比9.9%増)、営業利益2,778百万円(同27.4%増)、経常利益2,844百万円(同26.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,464百万円(同78.2%増)を見込んでいる。中期経営計画「アートネイチャーAdvanceプラン」の最終年度となるが、この間の新規売上の低迷や物価上昇などを背景に目標を見直している。一方で、足元で女性向け新規売上が回復傾向に入ったことによるオーダーメイドウィッグの安定化、増毛商品と既製品(「ジュリア・オージェ」)のさらなる拡大、新規領域(現在非公表)への進出などを果たし、次期中期経営計画につなげる考えである。
増収に向けては、特に女性向け事業の回復と女性向け既製品事業の伸長に注力する計画である。「反響営業」に関しては、従来通り魅力的な新商品を年2回投入してプロモーションで「反響」を得る。ちなみに「ジャスミー ラウンドフィット」は好スタートの模様である。一方、「反響営業」以外の販促策も積極的に実施する方針である。路面店での対応では来場数が比較的多かった主要都市で成約につながる工夫を凝らし、開封率の高いLINEでは内容のブラッシュアップを検討、プチ催事などでカウンセラーと街の美容室オーナーとの連携も増やす。夏の暑い期間は、ウィッグにこだわらず増毛の提案も行う。また、高価格帯「レディースアートネイチャー」と中価格帯「ジュリア・オージェ」の店舗では相互に商品を買えるようにするなど女性向け事業間の連携を一層強化し、顧客ニーズとの齟齬で発生する機会ロスを抑制する。好調の「ジュリア・オージェ」では新規出店を増やす。低価格帯の「NAO-ART」では、客数の取れる施設へのスクラップ&ビルドやテレビ通販を強化する。
増益に向けて、売上総利益率については、原材料高や円安・物価高の影響、新領域進出のコスト影響を織り込んでやや低下を想定している。一方、販管費については、引き続き人員拡充や処遇改善を進めるが、2025年3月期上期にタレントの使い方などテレビCMで試行錯誤した広告費については、同下期以降に進めた効率化を2026年3月期も継続するほか、様々な経費を効率的に使用し、販管費率を改善して大幅な営業増益につなげる考えである。なお、新領域の採算は、売上高とコストでイーブンと見ている。足元の4月は女性向け新規売上が苦戦しているが、これは納品(売上計上)が3月と5月以降に偏ったことが要因で、4月の受注が2ケタ近く伸びていることを考えると、引き続き「ジャスミー」投入以降の回復傾向を続けていると見てよいだろう。なお、トランプ関税については、フィリピンとバングラデシュの工場は原価率が低いうえ米国への輸出がないため、影響はないと思われる。
セグメント別では、男性向け事業において、高付加価値商品の開発や、原材料高に応じた既存モデルの価格改定、イベントやインターネットを通じた訴求の強化、商談でのAIシミュレーターの活用など、新規顧客獲得と既存顧客定着に向けた施策を検討しており、増毛商品を中心に増収を見込んでいる。女性向け事業と女性向け既製品事業においては、男性向け事業同様に、高付加価値商品の開発や原材料高に応じた既存モデルの価格改定を検討するほか、新たな販売チャネルの開拓、女性向けオーダーメイドウィッグと既成品ウィッグ間のさらなる連携強化、Web活用による販促コストの削減、イベントの開催による新規開拓などの施策を展開することで、2ケタの増収を見込んでいる。なかでも「レディースアートネイチャー」の増毛商品と「ジュリア・オージェ」がけん引するが、オーダーメイドウィッグも2ケタ近い伸びを予想している。近年の実績から少し高い伸びに見えるが、これは、足元を含む前下期以降の回復傾向に加え、駅ナカなどでの仮説店舗や広告手法、販促物の投下手法、テレビCMの投下方法など、前期にトライしてきた諸施策が同社の新たなノウハウとして蓄積され、活用が見込まれることが背景にある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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