セレコーポレーション Research Memo(9):長期経営ビジョン「ビジョン2030」を策定(2)
セレコーポレーションは長期経営ビジョン「ビジョン2030」の一環として、人的資本を重視し、企業価値向上を図る経営戦略を進めています。同社は「人財の活性化」「人財育成」「人財獲得」「待遇・制度整備」を柱に、役職定年制や週休3日制導入、新卒及び中途採用の強化を実施。また、ジョブ型雇用制度を進め、社員のエンゲージメントを高める施策を展開しています。さらに、健康経営を推進し、残業時間の適正化や健康保障制度を導入し、ワークライフバランスの向上に注力。社員アンケートや女性役員と社員の懇談会を通じてダイバーシティも推進しています。これらの施策が企業価値の向上と財務的成果に貢献すると見られ、長期的な企業価値向上を目指しています。
5. 人的資本経営
同社では、人的資本を企業価値の向上や経営の根幹であると捉えている。「ビジョン2030」では、「人財の活性化」「人財育成」「人財獲得」「待遇・制度整備」の観点において、企業価値を最大限に創造するための施策を実行する。具体的な施策について、「人財の活性化」においては、役職定年制を導入するとともに、従業員のエンゲージメント向上に向けた各種施策、時間や場所にとらわれない働き方を推進する。「人財育成」においては、セレアカデミーの運営を通じて、経営陣・社員が持つべき判断基準・行動指針を明確にする。また、キャリアパスを定め次世代経営者の育成を進めるとともに、リスキリング(学び直し)の推進により専門性の高い人財を育成していく。「人財獲得」においては、企業価値の創造を支える専門性の高い多様な人財を採用する方針である。新卒・中途を含む採用戦略の策定や新卒者の育成体制の確立を進め、次世代を担う若手の採用にも注力する。また、ジョブ型雇用についても促進する。「待遇・制度整備」においては、平均年収900万円を目標に、ベースアップや業績配分の総原資見直しを行う。週休3日制導入についても検討を進めている。
また、人的資本経営の一環として、業務プロセスや統制を自動化・外注化し、高度な専門性を持つ人財の比重がより高い配置構成とすることで、高付加価値創造体制への構築強化を図る。
2025年2月期においては、主要分野で着実な進捗が見られた。営業利益に関しては、40億円の達成を目標に据えており、その進捗は現在までのところおおむね順調に推移していると評価できる。2024年3月からは、社員一人ひとりの役割と責任を明確にするジョブ型人事制度を導入し、個々の能力発揮を促進する体制を整えた。企業方針と組織運営、そして社員の職務(ジョブ)を統合し、組織のベクトルを一致させることで、組織全体のパフォーマンス向上を目指す。ジョブ型人事制度は導入から1年が経過しているが、全社的にジョブディスクリプション(職務記述書)の意識が徐々に浸透してきている段階である。ただし、現時点では制度の実行段階にまでは至っておらず、各人の実際の職務内容との整合性を図るさらなる制度化が今後の課題である。制度の形骸化を防ぐためにも、今後はジョブディスクリプションの内容と実務をより精緻にすり合わせる必要があると考えられる。この制度は導入して終わりではなく、運用段階においても継続的にモニタリングを実施し、柔軟に改善を図る姿勢が示されており、制度運用の実効性を高める取り組みと言える。
人的資本経営の観点では、「働き方改革」と「well-being(幸福の追求)」の両立を中核に据え、従業員アンケートの実施(2024年10月)や、体系的な教育機関としての「セレアカデミー」の開校など、教育・研修体制の強化が進んでいる。中途採用においても2024年3月から2025年5月までに18名が入社している。また、前述のジョブ型制度が導入されており、人事制度が刷新されている点も人的資本の強化方針と一致している。労働環境の魅力を高める観点からは、週休3日制の実現に向けた年間休日の段階的な拡大がなされており、2024年2月期には120日、2025年2月期には126日(有休取得率は85%を維持)、2026年2月期には132日へとさらなる増加が計画されている。加えて、利益計画が達成されれば、これをさらに拡大する方針である。
人財の活性化のうち健康経営の観点では、全社員を対象とした医療保障保険の導入や人間ドックの受診推進、さらにインフルエンザ予防接種などが継続的に行われている。労働時間の適正化にも注力しており、20時にはパソコンを強制的にシャットダウンする措置を導入することで、2025年2月期の平均残業時間は月8時間15分に抑制されている。これに加えて、時差勤務制度を導入するなど、仕事とプライベートの境界を明確にする試みもなされており、社員のワークライフバランスの向上に資する取り組みと言える。こうした取り組みが高く評価され、同社は経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人」に2025年3月時点で8年連続で認定されている。また、「健康優良企業(金の認定)」についても、健康企業宣言東京推進協議会より7年連続(2024年)の認定を受けており、健康経営の領域で極めて高い水準の取り組みを維持していることが裏付けられている。
「企業価値の極大化と物心両面の「しあわせ」の実現」という「ありたい姿」への具体的な取り組みとして、女性の活躍に向けて女性役員と女性社員の懇談会が開催され、キャリアプランや育児との両立、働き方、リスキリングといった多岐にわたるテーマについて率直な意見交換が行われた。これにより、現場の声を施策に反映し、ダイバーシティ経営の深化が期待される。内部統制体制の強化についても、2025年3月より順次、現業部門において専門性の高い人財を「内部統制専担者」として配置している。これにより、業務プロセスの可視化とルールの徹底が図られ、コンプライアンスの強化とともに業務効率の向上にも資する運用を開始している。さらに、アパート専門メーカーとしての競争力を高めるため、技術開発室を新設し、構造、構法、遮音、耐震、省エネといったハード面からの商品開発を強化している。ソフトとハードを分業体制とすることで、より専門的かつ迅速な課題解決を目指しており、同社の中核事業における差別化戦略の実効性を高める布石といえる。
同社の「ビジョン2030」は単なる定量目標に留まらず、人財投資や健康経営、ガバナンス強化、商品開発といった多面的な施策を通じて、着実にその実現へ向けた歩みを進めていると分析できる。弊社としては、人的資本に対する積極的な投資姿勢と、その運用におけるPDCAサイクルの構築が極めて評価に値すると考える。また、労働環境改善やダイバーシティ推進、内部統制の強化といった非財務的指標の充実が、今後の財務的成果に寄与する可能性が高いと見ており、ビジョン実現に向けた推進体制は中長期的な企業価値向上において有効であると判断する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)
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