ガーデン Research Memo(5):企業再生型M&A、不動産ノウハウ、店舗運営ノウハウに強み
ガーデンは、企業再生型M&Aと不動産ノウハウを強みとして、外食産業で独自の地位を築いています。特に、同社の再生型M&Aは、複数の飲食企業からノウハウを集め、店舗の業態転換を行い高収益化を実現するなど、ビジネスの基盤を強固にしています。加えて、不動産ノウハウを活用し、有利な物件をいち早く取得し、収益化を図っています。これにより、例えば新宿区での店舗集中展開が可能となり、高い利益率を実現。また、ガーデンはブランド力のある「壱角家」や「山下本気うどん」を武器に、効率的な店舗運営を行っています。これらのブランドはファブレス化により、一定の品質を維持しながら低コストで運営可能です。さらに、同社の販売促進策はスマホアプリとSNSを活用しており、これが広告費削減と顧客誘因に効果的です。
2. 同社の強み
同社の強みは、企業再生型M&A、不動産、ブランド力・店舗運営といったノウハウにある。なかでも企業再生型M&Aノウハウと不動産ノウハウは他の外食企業にない強みで、同社のビジネスを特徴付けている。また、企業再生型M&Aノウハウと不動産ノウハウに裏打ちされた同社のブランド力・店舗運営ノウハウについても強みである。ほかに、同社独自の販売促進策も強みと言える。
(1) 企業再生型M&Aノウハウ
2000年以降、カラオケボックスの事業譲受に始まり、店舗物件や立地・ブランド・人材の面で好条件を有する飲食事業12社の株式などをM&Aにより取得してきた。これにより、様々なM&A企業から事業や立地、ブランド・商品、教育システム、商流、オペレーション、アセット運用といったノウハウを集約することができ、譲受した店舗を業態転換や移転などによって最適な形態にブラッシュアップして高収益化する、同社独自の多店舗展開ノウハウを構築した。こうした企業再生型M&Aノウハウは、たとえ業態転換などの施策がうまくいかなくても、すぐに他の強いブランドに入れ替えるなど、同業他社とは違って最適解を導き出しやすいノウハウにもなっている。また、自社で業態開発したり店舗開発したりする一般的な場合に比べて、ブランドや店舗が収益化するまでの時間を大幅に短縮することができ、同社の成長を促進する基盤となっている。具体例として、駅前好立地ながら不採算だった「チカラめし」は、「壱角家」に業態転換することで店舗利益を確保できた(「壱角家」の出店加速にもつながった)。「山下本気うどん」は、材料や味は良かったものの当初2等地立地だったことで苦戦していたが、1等地立地への移転したうえ、女性向けに味や雰囲気を変えたことで大ヒットブランドとなった。このようにM&A自体が成長ドライバーにもなっているのだが、上場が完了するまでのここ数年は計画に組み込めなかった。しかし、交渉を継続的に行ってきたため、上場が完了した現在、M&Aが再開される日も近いと弊社では考えている。
(2) 不動産ノウハウ
同社は、2016年の不動産事業参入以来蓄積してきた不動産ノウハウを、主力の飲食事業に徹底活用している。このため、仲介業者や公の情報を利用するしかない同業他社に比べて、先取りした有力な物件情報によって優良物件を早く抑えることができ、優良物件ゆえ収益化までの期間を短くすることもできる。すなわち、同社が運営する店舗売買サイト「飲食店居抜き買い取り.com」に来訪した売却希望者の物件や、物件オーナーから借主探しを直接依頼された“同業”不動産業者の物件、不動産業者専用の情報交換ネットワークシステムに上がった物件など、市場に出ていない上流の不動産情報にもアクセスできる。したがって、利益を確保しやすいため足の速いターミナル駅の超1等地の情報に早期にアクセスでき、さらにブランド力のある複数業態を展開していることからビル1棟の売却・賃貸にも対応できる。特にコロナ禍を契機に超1等地から外食の撤退が相次いだこともあって、こうした強みが同社の出店を押し上げることとなった。結果的に、例えば新宿区だけで27店舗を集中展開する(新宿にはまた出店余地がある)などドミナント※エリアを形成することになった。ドミナントには、看板効果による認知度上昇や店舗間の人材応援、スポットワーカーの募集、食品ロスとチャンスロスを回避する食材の素早い移動などに効果があり、高い利益率の一因にもなっている。なかでも1等地での看板効果は抜群で、ビル1棟丸ごと広告に利用すればさらに効果は大きくなり、店舗を訴求するための広告費がほぼ必要のない状況になったようだ。
※ 小売業で、一定の地域内に集中した店舗展開を行うこと。ドミナント戦略により、経営効率の向上や地域シェアの拡大を図ることができ、同業他社に対して優勢(ドミナント)を確保できる。
一方、不動産事業では大型商業施設で好条件物件を確保するノウハウも有しており、最近ではショッピングセンター内のフードコートなどへの出店を増やしている。フードコートへの出店は席が最初から用意されており、おおむねどの業態も路面店(居抜き物件、スケルトン物件)の半額程度の投資で済む。またセルフサービスで従業員も少なくて済み、営業時間が11時〜20時と短くても入客数や利益が路面店とあまり変わらないため、投資回収も路面店の1年半〜2年に対して4ヶ月〜1年と短くなっている。客層については、インバウンドも多い路面店に対して価格志向の強いファミリーが中心であることから、その分価格設定を低く抑えることになるが、フードコート内でも店舗営業利益率は同社「壱角家」の22%以上を確保しているようだ。
(3) ブランド力・店舗運営ノウハウ
同社は「壱角家」や「山下本気うどん」といった強力なブランドを有している。こうしたブランド力は看板効果などで増殖できるが、その源泉は「いつもの味」にある。もちろん「いつものサービス」や「いつもの雰囲気」などもブランド力の重要な要素である。ただし、1店舗のみを切り盛りするならいざ知らず、多店舗展開するなかでブランド力を引き上げ維持することは難しい。そこで同社が強みとしているのが、過去のM&Aや業態転換で積み上げられマニュアル化された、繁盛店(来客数の増加及び利益率の高い店舗)のための効率的な店舗運営オペレーションである。特に同社の主力である「壱角家」は店内で調理をせず、工場も持っていない(前述)。こうしたファブレス化により料理は店内で簡単にセットアップするだけで良いので、属人化を廃して「いつもの味」を維持することができ、この結果QSCA向上に徹底注力できるので、「いつものサービス」や「いつもの雰囲気」も維持できる。また、調理をしないので水道光熱費が安く、厨房施設もコンパクトで済む。調理経験の浅いスタッフや外国人スタッフでも調理が可能で、育成コストは下がり24時間営業も可能となる。このように店舗が急増しても固定費が増えない仕組みのため、成長するほど全体で高水準の営業利益率を確保しやすくなり、新興とはいえ外食業界トップクラスの待遇も可能となった。
(4) 販売促進策
販売促進にも同社の強みがある。同社の販売促進策は、スマートフォンアプリとメディアを活用したものが中心である。スマートフォンアプリについては、各業態において、割引商品や限定商品などの販促活動、ポイント戦略に活用しているだけでなく、来店データの蓄積・分析を行うことで顧客個々に応じたクーポンの配信や新商品の告知を行い、顧客の来店動機を喚起している。メディアについては、かつてはテレビや雑誌での露出を重視していたが、現在ではパブリシティとSNSマーケティングが中心となっており、広告費を引き下げる原動力にもなっている。パブリシティに関しては、ドミナントされた駅前好立地やビル1棟丸ごとの看板が目立ち、また、「山下本気うどん」のキラー商品の見た目が映えるため、マスコミや有名人のSNSに取り上げられることが多く、同社の知名度を引き上げている。現在ではこうした効果を逆に同社が利用して、メディアやSNSを意識した戦略的マーケティングも展開している。なお、同社の人気上昇に伴い、メーカーや有名シェフ、ショッピングセンター運営者などが商品開発のコラボレーションや出店を要請してくることも多くなったようだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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