フルサト・マルカHD Research Memo(6):中期経営計画「UNISOL」
フルサト・マルカホールディングスは、中期経営計画「UNISOL」に基づき、独自のソリューションで顧客の課題を解決することを目指しています。計画は2022年から2026年までの期間で、基盤構築と成長加速の2ステージに分かれています。2026年には売上高1,800億円、営業利益58億円などの定量目標を掲げ、事業再編や新ブランド『UNISOL』の導入が予定されています。また、株主還元策として2024年よりDOE3.5%以上を目標に配当を拡充する方針を発表し、サステナビリティ経営の強化も行っています。市場環境悪化で一部の目標値を見直しましたが、2025年以降の成長回復を期待しています。これらの取り組みを通じ、グループ全体のシナジー効果が向上し、利益率や株主還元の充実が期待されています。
1. 中期経営計画「UNISOL」
フルサト・マルカホールディングス<7128>は10年後のありたい姿として「UNIQUE SOLUTIONS」を掲げ、ユニークなアイデアで現場が抱える様々な課題に自ら向き合い、一番に選ばれる「ソリューション・パートナー」を目指すとしている。そして中期経営計画「UNISOL」(2022年12月期~2026年12月期)では、ロードマップとして前半の2年(2022年12月期~2023年12月期)を基盤構築(成長軌道回帰)の1stステージ、後半の3年(2024年12月期~2026年12月期)を成長加速化の2ndステージと位置付けている。なお定量目標値については、機械・工具分野では自動車産業を中心とする設備投資需要の減少、建設資材分野では資材価格高騰や建設業の働き方改革に伴う工期長期化など、市場環境悪化の影響で2024年12月期実績が計画を下回ったため、2025年2月14日付で最終年度2026年12月期の目標値を見直して売上高1,800億円、営業利益58億円(既存事業で44億円、シナジー・戦略積み上げで14億円)、営業利益率3.2%、調整後EBITDA(=営業利益+減価償却費+のれん償却費±その他の一過性の費用・収益)78億円、ROE5.7%としている。
基本戦略は、既存事業領域での差別化「深掘」、新たな事業領域への展開「挑戦」、SDGsへの取り組み強化「サステナビリティ」としている。「深掘」領域では多様化する顧客ニーズへの対応としての商材・技術・サービスの機能補強、アライアンスも活用した総合ソリューション力の強化、知見融合による戦略分野の取り組み強化など、「挑戦」領域ではグループの機能・知見・強みを組み合わせた新たな付加価値の創出、スマートファクトリービジネスへの取り組み強化、「モノ」から「コト」へのビジネスモデル転換など、「サステナビリティ」領域では事業を通じた社会課題解決への貢献、CO2排出量削減への取り組み、働きがいのある職場環境の整備などを推進する。
2024年12月期の進捗状況として、「深掘」領域においてはシナジーとして5.6億円の効果を創出するとともに、プラットフォーム機能充実に向けた成長投資として約28億円を実行(ティーエス プレシジョンを子会社化、アルムに出資、EUREKAに出資)した。ただし「挑戦」領域においては、これまで目ぼしい成果が発現していないことを課題と認識し、グループ内再編を含めてシナジー最大化や新事業分野への展開を積極推進する方針としている。
第一弾として2025年1月に同社、フルサト工業、ジーネット、マルカの管理本部の事業を承継したUNISOL ビジネスパートナーズを設立した。業務の効率化と品質向上を通じてコーポレート部門の人員の更なるスキルアップを図り、将来の経営における中核人財の育成も目指す。2025年3月には監査等委員会設置会社に移行し、コーポレート・ガバナンス体制を一層充実させる。また同社は2026年1月1日付(予定)で商号をユニソルホールディングスに変更する。グループ内再編に合わせて、同社グループの共通ブランドである「UNISOL」に即した商号とする。グループ内再編では2026年1月を目途にマルカとジーネットが合併して商号をユニソルとする。この合併時にマルカの建設機械部門を分社化、ジーネットの住設システム部門をフルサト工業に移管する。再編によって事業ねじれを解消し、セグメント中核会社による「事業責任の明確化」と「自分事化」によるシナジー創出を推進する。
また持続的な企業価値の向上を図るため、2024年3月28日付で「持続的な企業価値の向上に向けて~資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応~」を公表している。ROE(自己資本利益率)は2023年12月期時点で6.6%と改善傾向にあるものの、期待株主資本コスト約7.0%(同社基準により算出)を下回る水準であり、さらにPBR(株価純資産倍率)が1倍割れの市場評価にとどまっているのは、シナジー具現化の取り組みが市場の評価を得られていないことにあると分析した。こうした現状分析を踏まえ、市場評価改善に向けた具体策として、財務レバレッジを活用した200億円規模の成長投資、機動的な自己株式取得などによる株主還元の強化、IR活動の強化、新たな個人株主の呼び込みによる売買取引の活性化などへの取り組みを強化する方針だ。
株主還元目標「DOE3.5%以上」を2025年12月期に前倒し達成見込み
2. 株主還元策
株主還元については2024年4月15日付で株主還元方針の変更を発表した。従来は連結配当性向35%程度を基本として、最低年間15.00円の安定配当につとめるとしていたが、変更後は普通配当については中長期的な株主還元目標を「DOE(株主資本配当率)3.5%以上」として、継続的に増配を行うことを基本方針とした。DOEについては2024年12月期より段階的に引き上げ、次期中期経営計画(2027年12月期〜2029年12月期)でのDOE3.5%の達成を目指す。また普通配当に加え、特別配当や自己株式取得などを活用し、利益水準や財務状況に応じて機動的に株主還元の追加を実施するとした。
この基本方針に基づいて、2024年12月期の配当は2023年12月期比41.00円増配の107.00円(第2四半期末30.00円、期末77.00円=普通配当45.00円+特別配当32.00円)、2025年12月期の配当予想は2024年12月期比6.00円減配の101.00円(第2四半期末30.00円、期末71.00円)とした。2025年12月期は合計ベースでは減配の形となるが、普通配当ベースでは26.00円増配(普通配当は2024年12月期が年間75.00円、2025年12月期が年間101.00円)となる。また普通配当で算出したDOEは2024年12月期が2.7%、2025年12月期(予想)が3.5%となり、株主還元目標「DOE3.5%以上」を前倒しで達成する見込みだ。
また2024年5月13日に株主優待制度の変更(優待内容見直し及び長期保有優遇)を発表した。従来は保有株式数2区分に応じてグルメギフトを贈呈していたが、変更後は保有株式数による区分を3区分とし、さらに継続保有期間に応じて金額の異なるQUOカードを贈呈する。基準日は毎年12月末時点、対象は1単元以上保有株主で、2024年12月31日対象より実施した。
サステナビリティ経営への取り組みも強化
3. サステナビリティ経営
同社はサステナビリティ経営に対する取り組みも強化している。2022年2月にサステナビリティ委員会を設置し、5つの基本テーマとして、(1)地球環境との「調和・共生」を図る(事業活動における環境負荷軽減)、(2)「モノづくり産業」の持続可能性を支える(生産設備・建築現場の自動化・省力化提案による生産性の向上)、(3)「安心・安全・快適な社会」を実現する(製品・商品の安心・安全かつ安定的な供給体制)、(4)働く意欲を高め、成長と社会への貢献を促す(ダイバーシティの推進)、(5)公正で誠実な企業活動を推進する(リスク管理・危機管理体制の強化)、を掲げている。
グループシナジーが高まる可能性に注目
4. 弊社の視点
同社の2024年12月期連結業績は市場環境悪化の影響で大幅減益となったが、期後半には機械の受注が回復傾向となっており、2025年12月期は成長基調への回帰が期待できるだろうと弊社では考えている。そして同社の強みは「モノづくり」市場において顧客の生産現場の課題を顕在化させて解決策を提案するソリューション力であり、中期経営計画「UNISOL」の2ndステージについては定量目標値を下方修正したものの、取り組み中のグループ内再編などによってグループシナジーが加速度的に高まる可能性があり、これに伴って利益率の向上や株主還元の一段の充実も期待できるだろうと弊社では注目している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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