ジェイ・エス・ビー Research Memo(4):物件管理戸数の増加等により、期初予想を上回る好決算を達成
ジェイ・エス・ビーの2024年10月期の業績は、国内経済の緩やかな回復と学生数の増加を背景に、物件管理戸数の増加が好影響を及ぼし、売上高、利益ともに期初予想を上回る結果となりました。特に、学生マンション事業に注力し、物件管理戸数が前年比9,525戸増の94,978戸に達し、入居率は依然として高水準の99.9%を維持しました。これにより、売上高は69,529百万円(前年同期比9.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は7,452百万円(同56.1%増)となりました。また、グランユニライフケアサービスの全株式売却による特別利益も寄与しました。自己資本比率も47.4%に達し、業界平均を上回る収益性を示しています。
1. 2024年10月期の業績概要
2024年10月期における我が国経済は、雇用・所得環境の改善により個人消費が増加し、設備投資においても持ち直しの動きが見られる等、国内経済は緩やかな回復傾向にある。一方で、物価上昇や世界的な金融資本市場の変動、地政学リスクなど、国内外における経済的な見通しは不透明な状況が続いた。ただ、同社グループの主たる顧客層である学生の動向は、2024年度の大学(大学院を含む)の学生数が295.0万人と前年度比4.2千人増加(文部科学省「令和6年度学校基本調査」)しており、同社グループにとっては良好な市場環境が継続している。
こうした経営環境のなかで、同社の主力事業である学生マンション事業において、物件管理戸数は2023年11月の学生ハウジングの子会社化も寄与し、前期比9,525戸増の94,978戸となり、入居率は99.9%と引き続き高水準を確保した。以上から、2024年10月期の同社の業績は、売上高69,529百万円(前期比9.0%増)、営業利益8,106百万円(同12.8%増)、経常利益7,886百万円(同11.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,452百万円(同56.1%増)と、10期連続の増収増益となった。親会社株主に帰属する当期純利益の増益率が高いのは、学生マンションに経営資源を集中するために、高齢者住宅事業を中心的に担っていたグランユニライフケアサービスの全株式の売却に伴い特別利益を計上したことによる。
売上高及び利益は、いずれも期初予想を上回る好決算であった。売上高は、新規物件開発の積極展開による物件管理戸数の増加や高水準の入居率確保による賃貸関連売上高の伸長に加え、第2四半期までの入居関連費用の体系見直しによる四半期ずれの影響も期間の経過とともに解消している。従来は入居金や年間管理費等を入居時に一括徴収していたが、顧客ニーズの変化に対応して、一部物件では入居者が月払いを選べるように変更したためだ。ただ、月払いの金額は、1年間合計では年払いより高くなるように設定している。
売上高の増収に加えて、販管費が計画を下回ったことが、営業利益以下の各利益における計画を上回る大幅増益につながった。販管費が計画を下回ったのは、取締役による経費使用に関する疑義が判明したことで対象取締役が業績連動報酬の受給を辞退したことや、当期は社員の中途採用が計画ほど進まなかったことが影響している。ただ、そうした特殊要因を除いても、推進中の中期経営計画達成に向けて順調なスタートを切ったと言えよう。
なお不動産賃貸管理事業においては、賃貸入居需要の繁忙期である第2四半期(2~4月)に新規契約件数が増加することから、売上高は上期の割合が大きく、利益も上期に偏在する傾向があることに留意が必要だ。実際、学生マンションの入居者入れ替わりは年度末・年度始めに集中しており、売上高・利益計上の時期に大きな偏りが生じる。同社でも第2四半期に売上高・利益計上が集中し、第1、第3、第4四半期は、主に入居者募集の準備として費用を計上する期間となっている。結果として、売上高・営業利益の四半期ごとの変動はあるものの、物件管理戸数の増加に伴って、年度単位では着実に右肩上がりで推移している。
安全性・収益性指標は業界平均を大きく上回る
2. 財務状況と経営指標
2024年10月期末の資産合計は79,973百万円(前期末比13,327百万円増)となった。流動資産19,773百万円(同5,713百万円増)は、主として現金及び預金が5,596百万円増加したことによる。現金及び預金の大幅増は、グランユニライフケアサービスの売却と新規入居者からの契約金によるものだ。固定資産60,200百万円(同7,613百万円増)は、主に自社所有物件の増加に伴い有形固定資産が7,012百万円増加したことによる。
流動負債13,780百万円(前期末比1,731百万円増)は、主として未払法人税等が1,287百万円、前受金、営業預り金及び契約負債が771百万円それぞれ増加したことによる。前受金、営業預り金及び契約負債の増加は、入居者が増えたことによる。固定負債28,296百万円(同4,742百万円増)は、主として長期借入金が4,565百万円増加したことによる。以上の結果、有利子負債残高は26,034百万円(同3,866百万円増)となった。また、純資産合計37,897百万円(同6,853百万円増)は、主として親会社株主に帰属する当期純利益の計上と配当金の支払いにより利益剰余金が6,789百万円増加したことによる。
利益の蓄積に伴い、2024年10月期末の自己資本比率は47.4%と高水準であり、D/Eレシオ(負債資本倍率)も0.69倍の低水準を維持するなど、高い財務の安全性を確保している。自己資本比率は、2024年3月期の東証プライム市場不動産業平均の33.0%を大きく上回っている。また、同社のROAは10.8%、ROEも21.6%と、2024年3月期の東証プライム市場不動産業平均のROA3.9%、ROE8.8%を大きく上回り、収益性も極めて高い。同社のメイン事業がサブリース(貸主から賃貸物件を借り上げ、入居者に転貸する)であることが、高収益体質の理由と考えられる。
2024年10月期末の現金及び現金同等物の残高は、前期末比5,596百万円増加し、17,249百万円となった。営業活動による資金の増加8,173百万円は、主に税金等調整前当期純利益10,988百万円、非資金項目である減価償却費1,672百万円、関係会社株式売却益2,980百万円、法人税等の支払額2,346百万円によるものである。投資活動により使用した資金5,252百万円は、主に自社所有物件の新規開発に伴う有形固定資産の取得による支出9,186百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入3,324百万円によるものである。財務活動による資金の増加2,680百万円は、主に長期借入れによる収入5,980百万円、長期借入金の返済による支出2,543百万円及び配当金の支払額663百万円によるものである。
以上の結果、会社が自由に使える現金を示すフリー・キャッシュ・フローは、前期のマイナス4,861百万円から2,920百万円に増加しており、事業の安定と成長に充当する資金が増加している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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