P-京橋アートレジ Research Memo(6):一棟収益マンションの販売が好調で、2ケタ増収増益
京橋アートレジデンスの2024年度業績は、一棟収益マンションの販売が好調で、売上高が6,567億円と前年度比43.6%の増収を達成しました。この成長は、都市部の人口増加や賃貸需要の高まり、富裕層および海外投資家の増加によるものです。主力の不動産開発創造事業は売上高6,322億円を記録し、「CASA:カーサ」シリーズの開発によって大幅な増収を示しました。ESG関連事業も継続中で、今後は再生可能エネルギー事業の強化と資産の再配置を進める予定です。しかし、建築資材価格の上昇や人手不足の影響も考慮する必要があります。
1. 2024年11月期の業績動向
2024年11月期の業績は非常に好調で、売上高6,567百万円(前期比43.6%増)、営業利益946百万円(同26.8%増)、経常利益739百万円(同17.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益510百万円(同22.1%増)と2ケタ増収増益となった。期初予想との比較では、売上高で203百万円未達となったが、営業利益で88百万円、経常利益で36百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で47百万円の過達となった。
日本経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の回復などを背景に緩やかな回復基調が続く一方、中国の不動産市場停滞、ウクライナ情勢の長期化、緊迫化する中東情勢といった地政学リスクや日銀による金融政策の見直しなどにより、先行き不透明な状況が続いている。同社が属する不動産業界は、世界全体の不動産投資が弱含むなか国内は2ケタ増となり、引き続き継続的な成長を示している。また、安定収益が期待できる都内の一棟収益マンションに対する需要は、建築資材の高騰、人員不足や働き方改革を背景とした工期の長期化などによる建築工事費の高騰に留意する必要はあるものの、富裕層や国内投資家に加えて日本の低金利と円安を享受したい海外投資家により活発化している。東京23区の賃貸マンション市場も、継続的な都心部への人口流入数増加や分譲マンション価格の高騰などにより賃貸需要が増加、シングル向け、ディンクス向けともに家賃が上昇するなど堅調に推移している。このような環境下、同社は、東京23区において一棟収益マンション「CASA:カーサ」シリーズの開発に注力して事業基盤の強化に積極的に取り組むとともに、あかつき本社と提携して証券会社の持つ富裕層向けの販売を強化した。
この結果、売上高は新築マンション開発事業がけん引する形で大きく伸びた。利益面では、売上総利益率は下がったが、これは建設資材や人件費が高止まるなかでコロナ禍によって低位にあった地価が上昇したことが要因で、標準的な水準に戻ったといえる。販管費率は低下傾向が続いているが、ベースアップや賞与増など人件費は増加しているものの、固定費が大きく伸びる業態でないことが背景にある。ただし、今後業況拡大とともに人件費や業務委託費は増加するものと思われる。営業外損益で支払利息が増加したが、これは金利が上昇したためではなく、プロジェクト数が増加したことによる。なお、期初予想に対して売上高が未達になったのは、新築マンションの一部を販売から賃料収入を目的とした保有へとシフトしたことが要因である。営業利益が過達になったのは、販売価格が仕入時の予定より上昇したことが要因である。
新築マンション開発事業が好調、リノベーション再販も強いニーズ
2. セグメント別の業績動向
セグメント別の業績は、不動産開発創造事業が売上高6,322百万円(前期比45.8%増)、セグメント利益1,281百万円(同21.6%増)、ESG関連事業が売上高244百万円(同2.4%増)、セグメント利益57百万円(同9.2%減)となった。不動産開発創造事業は、新築マンション開発事業がけん引した。
不動産開発創造事業では、一棟収益マンション開発において、東京23区を中心に既存エリアを深掘りしたことで、主要ブランドである「CASA:カーサ」シリーズ14棟(前期比4棟増)の引き渡しにつながった。当初、16棟の引き渡しを予定していたが、いずれも利回りが良好なため、新たな企画を導入した物件を中心に保有に回すこととした。このため、売上高は当初予想と比べて未達となったが、販売価格が上昇していることもあって利益面では全体の収益をけん引する格好となった。新築戸建・宅地開発事業においては、東京都武蔵野市の戸建分譲開発「ブライトハウス武蔵野西久保」2棟及び東京都杉並区高井戸東の宅地分譲開発4区画の引き渡しを行った。リノベーション再販事業においては、東京都港区高輪のヴィンテージマンション2区画、中央区月島の区分所有1戸(コンパクトマンション)、江東区亀戸の同社が運用していた旅館1棟の引き渡しを行った。ヴィンテージマンションのリノベーション再販はニーズが非常に強いが、新築マンション開発事業に経営資源を集中していることもあり、今後しっかりと体制を構築する方針である。
ESG関連事業では、生活関連施設の保有事業において、東京都墨田区「CASA PIAZZA浅草本所(9戸)」と葛飾区の「CASA GRAZIE新小岩(10戸)」を、資産性、利回りともに良好のため、一棟収益マンション開発から自社保有に切り替えた。一方、保有資産が多くなってきたことから、資金効率などを考えて資産の入れ替えを進める予定で、今後、再生可能エネルギー事業で展開する太陽光発電について、新たな開発も進めるが、それ以上に売却を増やす考えである。もちろんSDGsの考え方を維持しており、学習塾や幼児教育、児童養護施設など暮らしに役立つ各事業は継続する方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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