戸田工業 Research Memo(7):中期経営計画「Vision2026」を遂行、営業利益率5%達成目指す(1)
戸田工業は中期経営計画「Vision2026」を策定し、2030年の将来像を見据え、事業ポートフォリオマネジメントを強化することで、2027年3月期までに売上高385億円、営業利益率5%を目指しています。特に電子素材事業では、磁石材料の従来用途に加え、自動車の電動化に対応する希土類系材料と成形品のビジネスを拡大する計画です。誘電体材料についてはMLCCの小型化に対応し、ナノ粒子化を進めることで、2027年3月期に売上高20億円、営業利益率8%を目指します。新材料開発としては、東北大学との協力で、「NanoTerasu」を活用した新素材開発にも取り組んでいます。
1. 中期経営計画「Vision2026」
同社は2030年度のありたい姿の実現に向け、選択と集中の加速による事業成長を推し進めるため、事業ポートフォリオマネジメントの強化を図っている。中期経営計画「Vision2026」を策定し、2027年3月期に売上高385億円、営業利益率5%を目指す。
2025年3月期予想についてLIB用材料は大幅な減額修正を行ったことから、2025年度計画、2026年度計画の達成のハードルが高まったと言わざるを得ない。しかし実際の中身としては、事業ポートフォリオマネジメント強化の実行に沿い、成長、次世代分野においては想定を上回る数字を示すものが多い。このため同社で重要視するのは収益性の向上であり、2027年3月期における営業利益率5%以上の達成が重要で、現在の「Vision2026」を達成すべく愚直に選択と集中の実行を行うとしている。LIB用材料での見直しによる売上高の目標修正は必要ではあるものの、収益性の営業利益率5%達成については低収益事業の統廃合により、MIX良化により営業利益率5%以上の達成が視野に入ると見られる。
2. 電子素材事業
2030年度のありたい姿の中心となるのが電子素材事業であり、2024年3月期の売上高181億円、営業利益8億円に対し、「Vision2026」最終年度の2027年3月期には売上高285億円、営業利益19億円を目指す。
(1) 磁石材料
磁石材料は従来用途に加え、自動車の電動化を睨んで「希土類系材料」と「成形品ビジネス」を拡大する。中心となるボンド磁石材料は、自動車用の希土類ボンド磁石の拡大が鍵となる。現在EVの普及が一服しているが、同社の希土類ボンド磁石は電動ウォーターポンプ(EWP)向け、電動パワステ向けなどに拡大が期待される。特にEVではバッテリーの温度とモーターの冷却、熱風の管理、吸気インタークーラーからの熱の調節などシステム性能を維持するために効率的な熱マネージメントが必要で、EWPは中心的な役割を果たす。EWPでは軽量化、軸インサート成形が可能なボンド磁石が多く使われるが、高温対応や耐環境性、高磁気特性の要求が高まり、高性能な希土類ボンド磁石の需要が拡大している。すでに同社のボンド磁石全体での希土類ボンド磁石の売上構成比は40%まで高まり、さらにこの比率が高まるだろう。今後、日本でもEV拡大により日系ポンプメーカーの採用が拡大するにつれて売上拡大が加速すると見られる。また、自動車用以外でも用途開発が進みつつある。一方、磁石成形事業については、江門協立の取り込みにより、素材から部品加工まで一貫生産体制が構築され、M&Aによるシナジー効果から江門協立は過去最高の収益が見込める状況となっており、今後、磁石成形事業の収益性向上が見込まれる。具体的には2027年3月期に売上高160億円、営業利益率10%を目標としているが、全体として収益の上振れも期待される。
また新材料開発では2024年4月に同社は東北大学と共同研究開発開始を発表した。世界最高レベルの高輝度放射光施設として注目を集める「NanoTerasu(ナノテラス)」(太陽光の10億倍明るい光「放射光」を使って、モノの構造や状態をナノ(10億分の1)レベルで可視化できる巨大な顕微鏡)が2024年4月に本格稼働。ナノテラスを活用し、自動車などの高温環境下で発生する希土類系材料の構造変化による磁気特性の低下に対し、その温度変化に耐える新素材開発を行う。今後、これらの施策の実現により、2030年度に向け、さらに収益の拡大が期待される。
(2) 誘電体材料
誘電体材料は、MLCCの小型化に対応したさらなる微粒子化を追求し、先端材料としての事業拡大を目指す。現在、環境対応車や自動運転支援の普及で、自動車1台当たりのMLCC使用数量が従来の1,000個〜3,000個程度から3,000個〜6,000個程度まで伸長している。また今後パワートレイン系、xEV系、ボディ系、走行安全系、インフォテインメント系、すべての分野で使用個数が拡大すると見られる。MLCCの内部構造は、チタン酸バリウム(BaTiO3:TB)からなる誘電体層とニッケルからなる電極層が積層された構造となっており、高性能化実現には電極層、誘電体層の薄層化・多層化が必要で、構成材料のナノ粒子化が求められる。内部電極では内部電極層(金属)と誘電体層との機械的接合強度を高めるためにTBナノ粒子が共材として必要となる。電極層の機械的強度を上げるのは、製造工程で電極層の割れや欠け防止のためで、MLCCの電気特性の低下や故障を防ぐ効果がある。共材は電極層と誘電体層の間の電界を均一化し、誘電体層の電気分極を高めるなど重要な役割を持つ。同製品の生産額は大きくないが共材として付加価値は非常に高い。今後はMLCCの高容量化で電極層のさらなる薄層化が進み、電極材料として100nm以下のNi粒子に20nm以下の共材が必要とされるなど、微細化が進むと見られる。また同社は共材供給に加え、分散体供給も始める。分散体は、粒子同士の凝集を防ぎ、均一な誘電体層を形成するために使用される。現在は一度乾燥してユーザーに出荷し、ユーザー側で分散剤を付加して利用しているが、湿式状態のままユーザーに提供できる分散体を開発中で、分散体で出荷できれば付加価値が高まるだろう。なお同社は今後、微細化ニーズに沿って高付加価値化を進め、2027年3月期には売上高20億円、営業利益率8%を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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