戸田工業 Research Memo(1):微粒子合成技術を深化させ、微粒子の可能性を世界の可能性に変える
戸田工業<4100>は、磁器の絵付け、歴史的建造物などに欠かせない顔料である弁柄の製造業として1823(文政6)年に創業、2023年11月に創業200周年を迎えた老舗化学素材メーカーである。酸化鉄で培った独自の技術と情熱で微粒子の可能性を深化させ、光学レンズ研磨剤用高純度酸化鉄、一世を風靡したオーディオ・ビデオテープなどで使われる磁性酸化鉄、複写機・プリンター向けのトナー用材料、自動車や家電などで使用されるモーターやセンサー用磁石材料、スマートフォンで多用される積層セラミックコンデンサー(以下、MLCC)向け誘電体材料、電気自動車(以下、EV)向けリチウムイオン電池(以下、LIB)用材料などで事業を拡大してきた。現在、機能性顔料事業(着色材料・トナー用材料、触媒)と電子素材事業(磁石材料、誘電体材料、軟磁性材料、LIB用材料、ハイドロタルサイト)の2事業で事業展開している。
1. 2025年3月期の業績概要
2025年3月期の連結業績は売上高31,667百万円(前期比20.7%増)、営業損失648百万円(前期は117百万円の利益)、経常損失1,411百万円(同1,168百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失3,563百万円(同3,581百万円の損失)と厳しい決算となった。事業セグメント別において機能性顔料事業は売上高8,071百万円(前期比0.7%減)、セグメント利益1,009百万円(同20.5%増)となった。売上面では収益基盤事業とする触媒向けが好調に推移、一方でトナー用材料等が需要減退し微増に留まった。利益面では製品価格是正や原価低減、諸経費削減などを行い収益性が改善し増益に転じた。電子素材事業は売上高24,121百万円(同29.9%増)、セグメント利益は1,212百万円(同52.7%減)となった。売上面では磁石材料及び誘電体材料は需要が好調、また軟磁性材料を取り扱う韓国の戸田マテリアルズ(株)の連結子会社化で売上が大幅増となった。一方、利益面では前駆体を扱うカナダの子会社戸田アドバンストマテリアルズInc.(以下、TAM)のEV市場の成長鈍化による不振から1,370百万円のセグメント利益減が大きく影響、大幅な利益減(この分を除くと前期比0.9%増の2,582百万円)となった。この結果、両セグメント利益の合計は2,221百万円(同34.6%減、金額にして1,177百万円減)となったが、全社費用が2,870百万円(同12.5%減)と経費削減などの効果があり、営業損失転落ながら前期からの減益幅は765百万円に留まった。カナダ子会社分を除くと営業利益で722百万円となり、一過性の費用を除くと増益を確保していることになる。ただし、営業外で持分法による投資損失427百万円(前期比1,100百万円悪化し損失に転落)、為替差損194百万円(前期比641百万円減となり為替差損に変化)が影響、経常損失は1,411百万円(前期比2,579百万円悪化)、さらに特別損失に関係会社整理損や減損損失、固定資産圧縮など2,189百万円を計上、前期比では2,745百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純損失は前期比ほぼ横ばいの損失計上を余儀なくされた。
2. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期の連結業績は売上高29,000百万円(前期比8.4%減)、営業利益900百万円(前期は648百万円の損失)、経常利益600百万円(同1,411百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益200百万円(同3,563百万円の損失)と予想した。売上高はカナダの前駆体売上がなくなること、中国の景況感を含めた磁石材料の伸び悩みから減収予想も、営業利益では一時費用がなくなり、コスト削減が継続され、黒字転換を見込む。経常利益は依然として持分法による投資損益が冴えないと見られるが、ボトムから多少の改善、特別損失も大きなものがない見通しで親会社株主に帰属する当期純利益は黒字転換する予想としている。
3. 中長期の成長戦略
同社はパーパス「微粒子の可能性を、世界の可能性に変えていく。」を掲げ、2024年6月に中期経営計画「Vision2026」(2025年3月期〜2027年3月期)を策定、2030年度のありたい姿の実現に向け、事業ポートフォリオマネジメントの強化を打ち出した。具体的には、成長事業には磁石材料、誘電体材料を位置付け事業を拡大させる。次世代事業には軟磁性材料、環境関連材料を位置付けた。軟磁性材料は、海外の連結子会社とともに成長を図り、環境関連材料は、開発品の事業化を目指す。収益基盤事業には触媒材料を位置付け高付加価値を維持する。一方で、LIB用前駆体、着色顔料、トナー用材料などは再生・転換事業として位置付け、合理化を推進し、利益確保を目指す。2025年3月期はEV市場の低迷など、外部環境の大きな変化で中計に掲げた収益予想に対し大幅未達となっており、現状ではさらなる環境悪化も懸念される。このような環境下において同社は売上拡大を指向するよりも、成長事業において的確に付加価値を上げて拡大し、再生・転換事業ではコスト削減による利益の維持を指向し、売上高が中計予想を大きく下回っても、中計におけるKPIの一つである売上高営業利益率5%確保の早期達成を目指す。
■Key Points
・2025年3月期は前期比20.7%増収も子会社清算等の(減損は特別損失なので)一時費用がかさみ営業損失
・2026年3月期は前期比8.4%減収ながら、一時費用減で営業利益の黒字転換を予想
・外部環境激変で「Vision2026」の目標未達の懸念から、収益性重視の経営による利益拡大を見込む
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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