アンジェス Research Memo(4):早老症治療剤「ゾキンヴィ」の売上高は2025年12月期に2倍増となる見通し
日本の製薬会社アンジェスは、早老症治療薬「ゾキンヴィ」の売上が2025年までに倍増する見通しだ。この薬は2024年に販売を開始し、患者の死亡率を72%減少させる効果があると報告されている。一方、アメリカの塩野義製薬と共同開発中のNF-κBデコイオリゴDNA、慢性椎間板性腰痛症の治療に関する第2相臨床試験も進行中で、長期の痛みの軽減が確認された。この新薬は、腰痛治療における画期的な進展となる可能性があり、2025年までの試験完了を目指している。
2. ゾキンヴィ
同社は、HGPS及びPDPL治療剤「ゾキンヴィ」について、2024年1月に厚生労働省より製造販売承認を取得し、2024年5月27日より販売を開始した。乳児早老症とも言われるHGPSはLMNA遺伝子の突然変異により、ファルネシル化※された変異タンパク質であるプロジェリンが生成されることによって発症し、症状としては深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚、全身性脂肪性筋萎縮症、脱毛症、骨格形成不全、動脈硬化の促進などがある。平均寿命は14.5歳と報告されている致死性の高い疾患である。また、PDPLはLMNAやZMPSTE24遺伝子の変異によりプロジェリンに類似したファルネシル化タンパク質を生成し老化を促進する。「ゾキンヴィ」は、核膜と強固な結合を形成するファルネシル化した変異タンパク質(核の不安定化と早期老化を惹起)の蓄積を阻害する作用を持ち、HGPS患者の死亡率を72%減少させ、平均生存期間を4年程度延長させるというデータもある。安全性については、多くの患者が10年以上にわたって「ゾキンヴィ」治療を継続しており、副作用も嘔吐や下痢、悪心等でその大半が軽度または中等度のものである。なお、HGPS及びPDPLの世界における患者数は600人程度で、HGPSは日本でも難病指定され、患者数は数名程度と報告されている。
※ タンパク質に行われる修飾の一種。ファルネシル化酵素により、タンパク質の末端には疎水性のプレニル基が結合する。末端が疎水性になったタンパク質は、その疎水性の部分を細胞膜内に挿入するため、タンパク質は細胞膜(細胞の内側)につなぎ留められる。つまり、ファルネシル化されたタンパク質は、細胞の内側の細胞膜上に存在するようになる。
「ゾキンヴィ」の患者1人当たりの年間売上高は薬価ベースで1億円強(卸販売会社経由での販売となるため、同社の売上高はやや割り引かれる)が見込まれる。現在、6人の患者がリストアップされ、順次服薬を開始しているようで、2024年12月期第3四半期累計の売上高は185百万円、商品売上原価として122百万円を計上した。服薬当初は副作用を確認するために少量からスタートし、徐々に適量まで増やしていく。売上高としては、2024年12月期の約2億円から2025年12月期は2倍に増加する見通しだ。なお、仕入れについては円建てで行っているため、為替変動が収益に与える影響はない。
NF-κBデコイオリゴDNAの慢性椎間板性腰痛症を対象とした第2相臨床試験は2025年内の完了を目指す
3. NF-κBデコイオリゴDNA
NF-κBデコイオリゴDNA(開発コード:AMG0103)は、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬品」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を担う転写因子となるタンパク質(NF-κB)に対する特異的な阻害剤である。NF-κBがゲノムの特定の配列領域(炎症を引き起こすゲノム)に結合し、スイッチが入ることで痛みなどの炎症の原因となるタンパク質が生成されるが、NF-κBデコイオリゴDNAを体内に入れることで、炎症を引き起こすゲノムとNF-κBが結合しにくくなり、炎症の原因となるタンパク質の生成を抑制する。
2023年3月に塩野義製薬と国内第2相臨床試験への協力に関する契約を締結(開発費の一部を負担)し、同年10月から第2相臨床試験を開始した。予定症例数を92例※とし、最初の2例で最大投与量となる20mgの安全性試験を実施、安全性及び忍容性が確認されたことを受け、10mg群、20mg群、プラセボ群の3群(各30例、単回投与)に分類した比較試験を実施する。観察期間は12ヶ月間で、有効性については「痛み」の指標となるNRSスコアの変化で評価する。現在、全体の1/3まで被験者登録が進んでいるもようで、当初の予定よりも遅れ気味ではあるが、今後は、治験施設を増やしながら2025年内の被験者登録完了を目指す。順調に進めば2027年前半にも臨床試験の結果が発表される見通しだ。結果が良好だった場合にはライセンスアウトする意向だが、塩野義製薬との協議次第となる。
※ 対象者は18~75歳で3ヶ月以上持続する腰痛を有し、腰痛のNRSスコア(自己申告による痛みの指標)が臀部痛や下肢痛のNRSスコアよりも大きく、腰痛に対する保存的治療で効果が不十分な患者とする。スクリーニング時点の腰痛のNRSスコアは4~9の患者(中等度から強い痛み)で、かつ、投与実施日当日及び前日のNRSスコアが4~9の患者。
国内の臨床試験に先駆けて米国で実施した後期第1相臨床試験(プラセボ対照無作為化二重盲検試験、25症例、観察期間12ヶ月)の結果は、安全性及び忍容性に問題がなかったほか、有効性においても投与量3群(0.3mg、3.0mg、10.0mg)のうち最大投与量群において投与後早期に腰痛が大幅軽減し、腰痛の軽減も12ヶ月後まで継続したことが確認された。慢性椎間板性腰痛症に関しては、一般療法としてステロイド注射が行われるケースが多いが、ステロイド注射が一時的な対症療法であるのに対してAMG0103は炎症を抑制する効果があるほか、椎間板の高さを回復させることで腰痛の症状が長期にわたって改善した可能性がある。
慢性椎間板性腰痛症で苦しむ患者に対しては、現在内服・外用薬治療など対症療法が主に行われている。AMG0103は単回投与で長期間の効果持続が見込まれるため、患者のQOL向上にも貢献する。開発に成功すれば、慢性椎間板性腰痛症に使用される世界初の核酸医薬品となる可能性があり、国内での臨床試験の結果が注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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