紀文食品 Research Memo(1):最繁忙期の年末年始を前に、中期経営計画が順調スタート
紀文食品が国内水産練り製品市場でトップシェアを持ち、特に年末年始の繁忙期を前にした中期経営計画が順調にスタートを切っています。紀文食品はスーパーマーケットやコンビニエンスストア向けに水産練り製品を提供しており、長年の研究に基づく独自技術とチルド物流サービスが強みです。同社は2038年に100周年を迎えるにあたり、「総合食品グループ」を目指し、2027年までに売上高1,203億円、営業利益60億円を目指す中期経営計画を開始しました。2025年3月期の中間業績では売上高が前年同期比0.8%増、営業利益は405.4%増であり、計画は順調に進行中。今後は国際展開と国内再編といった戦略的施策に力を入れ、持続的成長を目指します。
1. 会社概要
紀文食品<2933>は、紀文ブランドで定評のある水産練り製品のトップメーカーで、主にスーパーマーケットやコンビニエンスストア向けに販売している。水産練り製品は蒲鉾や竹輪、さつま揚、はんぺんなどを総称した食品で、原材料となる魚が各地で異なるため、それぞれの地方で様々な種類の製品が作られてきた。同社は、日本各地の水産練り製品のフルライン化をいち早く進めるとともに、チルド物流や販売手法を確立したことで、約3,000億円と言われる国内水産練り製品市場でトップシェアを獲得するに至った。こうした国内食品事業のノウハウを生かし、食品関連事業では外部企業にチルド物流サービスを提供、海外食品事業では健康志向を背景に魚食化が進むアジアや欧米で水産練り製品などの販売拡大を進めている。
2. 同社の強み
同社は、フルラインの水産練り製品、全国を網羅するチルド物流サービス、小売との信頼に基づく販売力といった強みを集積することで、強力な紀文ブランドを構築してきた。水産練り製品は、長年続けてきた魚肉・大豆・鶏卵・鶏肉畜肉の4つのタンパク特性の研究を基盤に、独創的な技術と柔軟な発想によって様々なシーンに合わせて開発されている。チルド物流サービスでは、集荷から配送までの全工程で低温度管理を実現したことで、製品を全国へ安定かつ安全に配送することができ、同業も含め多くの食品メーカーが利用している。販売力は、直接取引によってスーパーマーケットやコンビニエンスストアなど様々な小売と信頼関係を深めてきたほか、SNSやブランドサイトなどを活用したプロモーションを通じて消費者に直接、積極的に訴求している。
3. 中期経営計画
「日本の食の力でWell-beingな世界に貢献する食の総合グループ。」というビジョンの実現に取り組むため、メルクマールとして創業100周年を迎える2038年を目標に、同社は「総合食品グループ」「開発型企業」「グローバルカンパニー」を目指す長期経営戦略を策定した。その第1弾として、持続的な成長体質を構築する第1次中期経営計画(2025年3月期〜2027年3月期)を策定し、2027年3月期に売上高1,203億円、営業利益60億円を目指す。目標に向けて同社は、国内食品事業と食品関連事業の安定成長及び海外食品事業の力強い成長を実現する「成長戦略の推進と新たな価値創造」、ROICを向上し稼ぐ力を強化する「資本効率の改善」、サステナブル経営による「経営基盤の整備」の3つの基本戦略を展開する方針である。
4. 業績動向
2025年3月期中間期の業績は、売上高47,759百万円(前年同期比0.8%増)、営業利益546百万円(同405.4%増)となった。国内食品事業はやや苦戦したが、その他の事業が好調だったこと、原材料価格の安定、事業ミックスの良化などにより大幅増益となった。中期経営計画についても、国内食品事業の再編などすでに様々な施策が動き始めており、順調なスタートとなった。2025年3月期の業績見通しについて、同社は売上高110,951百万円(前期比4.2%増)、営業利益4,727百万円(同0.2%増)を見込んでいる。最繁忙期の年末年始を控え、中間期の好業績に続いて下期も順調に進行しているようだが、原材料価格の再上昇を想定しているため、やや保守的な業績予想となっている。
■Key Points
・紀文ブランドで定評の水産練り製品のトップメーカー。フルラインの品揃えなどに強み
・中期経営計画を策定、新たな価値を創造することで2027年3月期営業利益60億円を目指す
・2025年3月期中間期の大幅増益、好スタートの中期経営計画、通期予想はやや保守的
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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