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富士ソフト Research Memo(4):顧客の価値向上に資する多彩なICTサービス・プロダクトを提供(1)


■事業内容

富士ソフト<9749>の報告セグメントは、SI事業、ファシリティ事業、その他事業の3つから成る。主力のSI事業はシステム構築とプロダクト・サービスに大別され、さらにシステム構築は組込系/制御系ソフトウェアと業務系ソフトウェア、プロダクト・サービスは狭義のプロダクト・サービスとアウトソーシングに細分化される。また、ファシリティ事業はオフィスビルの賃貸、その他事業はBPOサービスやコンタクトセンター、再生医療等を行っている。

1. 屋台骨である組込系/制御系ソフトウェア
SI事業のシステム構築区分に属する組込系/制御系ソフトウェアは、全社売上高の25.0%(2021年12月期上期)、同営業利益の25.5%(同)を占める屋台骨であり、セグメント利益率も全社ベースを上回っている。2020年12月期上期の実績は、売上高が前年同期比0.3%増、営業利益が同6.6%減、セグメント利益率は6.7%(前年同期比0.5ポイント低下)であった。売上高が2020年12月期下期(前年同期比3.1%減収)から回復に向かうなかで減益となった要因は、一過性の不採算案件発生と販促強化を目的とする前向きなコスト積み増しであり、今回の増収減益を下期に向けての懸念材料と捉える必要はない。

四半期ごとの受注獲得ペースを見ると、2020年12月期第2四半期から2021年12月期第1四半期まで前年同期比5%程度の減少が続いていたわけだが、2021年12月期第2四半期には同5.7%増に転じ、2021年12月期第1四半期末に前年同期末比1.5%減の水準まで落ち込んでいた受注残高は同第2四半期末には同0.8%減まで回復している。社会インフラ系の好調が持続するなかで、車載分野やFA分野などコロナ禍による悪影響があった領域でも回復の兆しがみられることに、同社は確かな手応えを感じている模様である。

組込系/制御系ソフトウェアは、特定の機能を提供するために当該機器に組み込まれたマイクロコンピューター等で動作するソフトウェアであり、同社のテクノロジーは、自動車や携帯電話、TVやエアコンなどの家電製品、プリンター等のOA機器、ロボットや半導体製造装置の生産設備、信号機などのインフラ設備、CTやMRIといった医療機器など、多種多様な製品・機器で活用されている。

同社は、同領域で国内トップクラスの実績を蓄積しており、FA(Factory Automation)等の機械制御系や自動車関連に強みを有する。車載向けに限定すれば実質的にすべての国内完成車メーカーに納入しており、国内トップシェアを誇っている。AIやロボットによる生産性革命や自動車産業におけるCASE(Connected:コネクティッド化、Autonomous:自動運転化、Shared/Service:シェア/サービス化、Electric:電動化)の推進、社会インフラ系でのIoT活用、といった大きな潮流に対応する同社の「AIS-CRM」戦略は中長期的な収益機会の獲得に繋がる公算が大きいと考える。

2. 業務系ソフトウェア区分ではDX市場の開拓が進む
SI事業のシステム構築区分に属する業務系ソフトウェアは、全社売上高の28.4%(2021年12月期上期)、同営業利益の24.4%(同)を占める大きな柱である。2020年12月期まで4期連続で増収・2ケタ増益を達成、2021年12月期上期も売上高が前年同期比10.4%増、営業利益が同28.1%増となり、セグメント利益率は5.7%と同0.8ポイント上昇した。また、四半期受注高は2020年12月期第2四半期をボトムにその後は回復・増勢傾向が継続、2021年12月期第2四半期には前年同期比41.0%の大幅増となり、2021年12月期上期末の受注残高は前年同期末比26.3%増となっている。

同領域は、オーガニックな事業拡大に加え、補完的M&A戦略が奏功し、現在では、流通業、金融業、サービス業、製造業、ネットビジネス、社会インフラ、教育、文教、医療、公共機関など幅広い業種に対し、店舗・受発注システムや生産・販売・在庫管理などの基幹システム、勘定系システム、情報システム、ネットサービスといった様々なソリューションを、コンサルティングから開発、システム構築、サポートまでワンストップで提供できる体制を確立している。

国内ITサービス市場の主戦場に位置する業務系ソフトウェア領域については、1)オンプレミス(サーバー等のITシステムを自社内の設備で運用すること)からクラウドサービス利用へのシフト、2)「守りのIT(業務の効率化がメイン)」から「攻めのIT(事業の創造がメイン)」への進化、など既存プレイヤーにとって逆風になりかねない市場の構造変化が起こっている。この中にあって同社は、「変化はチャンスなり」の精神で積極的な人材投資による受託開発強化を明確に打ち出し、実行している。まさに、「挑戦と創造」という社是にふさわしい経営判断であったと考える。

この点、近年の業務系ソフトウェアの好調は、「AIS-CRM」戦略の推進を含めて、流通・サービス分野のeコマース化やデジタルコンテンツ分野の需要拡大、システムインフラ構築を中心とした分野における様々なデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)対応の加速、働き方改革をテーマとしたICT利活用の推進、セキュリティ強化等を目的とする仮想化技術導入の高まり、といった時代の流れや市場構造の変化に応えるサービスを的確に提供した結果だと言える。

また、同社は既存プレイヤーにとって「不都合な真実」という一面を持つ「アマゾンエフェクト」(アマゾン・ドット・コムの急成長に伴い様々な市場で進行している混乱や変革などの現象)を直視した事業戦略を推進してきたわけだが、2020年1月には事業部を新設してネットビジネス分野での取り組みを一段と強化している。これまでの成果にコロナ禍による巣ごもり消費の拡大も手伝ってEC分野ではBtoC向けに加えBtoB向けの案件も好調であり、中長期的な成長トレンド持続が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)


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