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アクアライン Research Memo(1):IT武装で水まわり緊急修理業界トップ3に躍進


■要約

アクアライン<6173>は、1994年に広島で創業された水まわり緊急修理サービスを中心とする会社である。生活に欠かすことのできない「水」をテーマに、住環境の充実、生活の質の向上に貢献し、ステークホルダー(消費者、従業員、取引先、株主・投資家、社会)にとっての「FIRST BEST」であることを目指している。水まわり緊急修理業界は家屋の築年数経過などを背景に成長しており、同社は全国展開大手3社の一角を占める。“ブルーカラーをIT武装する”事業コンセプトのもと、既存の水道工事業者に対して様々な差別化を行いサービスレベルを高めた。当初はエリア別の子会社を競わせる方式で全国展開したが、2008年にスケールメリットを生かすために子会社を吸収合併し、本社機能を東京に移した。「水」に関連したミネラルウォーターの販売及びウォーターディスペンサー取扱事業(ミネラルウォーター事業)、業界特性が類似するパーソナルジム事業(ヘルスケア事業)も手掛けている。2015年8月に業界初の上場(東証マザーズ)を果たした。

1. 水まわり緊急修理市場とビジネスモデルの特長
水まわりの緊急修理の市場規模は約800億円と推定され、住宅の築年数増加による水まわり設備の老朽化などにより、緩やかな成長が続いている。プレーヤーとしては、地場の水まわり工事を行う工務店が高齢化などの要因で廃業が続いており、同社を含む全国展開大手3社が成長する構図である。大手の中では、(株)クラシアン(本社:横浜)の規模が大きく、次いで(株)イースマイル(本社:大阪、東京)、同社は業界3位のポジションであり、唯一の上場企業である。

同社は独自のビジネスモデルの特長は、“ブルーカラーをIT武装”しサービスレベルと効率を上げている点である。具体的には、(1)機動的なマルチメディア広告宣伝、(2)自社運営の24時間コールセンター、(3)IoT搭載車両、(4)あんしんAI音声自動監視、の4点を挙げることができる。特にIoT搭載車両は同社の大きな特長であり、車両を動く店舗・倉庫と位置付けることで、拠点をなくし、直行直帰を可能にしている。「あんしんAI音声自動監視」は顧客との会話の品質を高めるための最新の仕組みであり、音声言語認識技術を用いてあらかじめ指定された禁止語句を会話から自動抽出し、問題のある単語や大きな声などが検知されると自動で本部へアラートが表示されるアプリケーションである。

2. 業績動向
2020年2月期第2四半期は、売上高が前年同期比2.5%増の2,962百万円、営業損失が36百万円(前年同期は148百万円の利益)、経常損失が37百万円(同149百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失が38百万円(同94百万円の利益)と増収減益の決算となった。売上高に関しては、水まわり緊急修理サービス事業が前年同期比で横ばい、ミネラルウォーター事業の伸び及びヘルスケア事業の計上が成長をけん引した形だ。主力の水まわり緊急修理サービス事業で横ばいだった要因としては、2018年末から続く外部Webサイト企業経由の集客減(ポータルサイトの広告ペナルティ)の影響が大きい。補完策として自社ホームページによる集客を強化しTVCMも増やし、成果が上がり始めた段階である。営業利益に関しては、広告費の増加及び売上総利益の減少が影響し減益となった。広告費の増加に関しては外部Webサイト企業経由の集客減に起因する補完策として自社サイト経由にシフトしたためであり、戦略的投資である。売上総利益の減少は、繁忙期(下期)を前にサービススタッフの人材確保を行った結果である。第2四半期の利益水準は同社計画(未公開)どおり。上場来初の上期赤字決算となったが、繁忙期を前に自社集客力強化及び人材確保が一定程度できた点をポジティブに評価したい。

2020年2月期通期の業績予想は、売上高で前期比16.3%増の6,742百万円、営業利益で同46.4%増の269百万円、経常利益で同43.7%増の265百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同141.8%増の166百万円と期初の業績予想を据え置いた。売上高に関しては過去最高を更新する予想である。増収をけん引するのは全社売上高の約9割を構成する水まわり緊急修理サービス事業である。第2四半期時点での全社売上高進捗率は43.9%と低めであり、下期の売上高予想は3,779百万円(前年同期比30.0%増)とチャレンジングだが、同事業は12月-1月が繁忙期であり十分挽回可能だ。プラス要因としては、2018年末からの減収要因であった外部Webサイト企業の集客力が戻りつつあることや自社集客が軌道に乗ったこと、上期の人材確保及び教育の効果が下期に期待できることなどが挙げられる。営業利益の予想269百万円は、前期(183百万円)からは46.4%の大幅増だが、最高益だった2018年2月期(385百万円)からすれば低い水準である。下期の営業利益は305百万円、売上高営業利益率は8.1%を予想する。過去に遡ると、同社の下期の売上高営業利益率は一過性の減益要因が発生した前期を除くと8%以上の実績を残してきた。弊社では、前期のマイナス要因(外部Webサイト集客の減少、人材確保未達)が2020年2月期は解消に向かっており、十分に計画達成ができると予想している。

3. 中長期戦略
今後の成長には、人員不足の解消が不可欠である。同社の1人当たり売上高は過去数年にわたり20百万円前後で推移しており、1億円の売上増のためには5人の増員が必要な計算となる。2020年2月期は65人増の326人、2021年2月期は74人増の400人と増員計画はアグレッシブなものである。人材難の中で大量増員を行うために、新卒の積極採用(2020年2月期実績7人)、シニア層を含めた40代から50代の採用拡大などを強化し、前期に手応えをつかんでいる。さらに準備が進んでいるのが「加盟店制度の立ち上げ」である。同社は「サービススタッフ全員が正社員」が大きな特徴だったが、働き方改革がトレンドとなるなかで、多様な働き方を許容する体制にシフトする。具体的には、個人事業主や地場の水道工事会社に「水道屋本舗」の屋号を使用許諾し、修理を委託する。軌道に乗れば人員不足解消に大きく寄与することが期待される。早ければ2020年2月期中にも第1号が誕生する予定だ。

また、サービススタッフの定着率を向上させるために教育研修の更なる充実を図っている。これまで1ヶ月だった新人研修期間を2ヶ月に伸ばし、現場同行が主だったものに新設した研修センターでの座学も増やした。“いつでも学べる”ように研修用動画も準備中だ。

4. 株主還元策
同社は株主への利益還元を重要課題としており、配当を実施している。配当の基本方針としては、必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を行うとしている。2016年2月期から継続して増配・維持及び配当性向の増加を行ってきた。2020年2月期は期末の配当金25円、配当性向30.4%と増配を予想する(期初予想据置き)。

■Key Points
・“ブルーカラーをIT武装する”事業コンセプトで水まわり緊急修理業界トップ3に躍進
・2020年2月期第2四半期は増収減益。が自社集客力強化に手応え
・2020年2月期通期は過去最高売上高、利益V字回復を予想。前期のマイナス要因(外部Webサイト集客の減少、人材確保未達)をどの程度解消できるかがカギ
・人員体制増強を狙い加盟店制度の導入を準備中。教育手法も改善し定着率向上を図る

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)



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