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メディシノバ Research Memo(5):NASH/NAFLD向けP2治験は良好なデータ結果により早期終了


■メディシノバ<4875>の開発パイプラインの動向

2. タイペルカスト
タイペルカストは杏林製薬が経口タイプの喘息薬として開発したもので、抗線維化作用・抗炎症効果も持つ。2002年に独占的・全世界(日本、中国、韓国、台湾を除く)での再許諾可能な開発販売のライセンスを取得した(点眼薬を除く)。現在、2つの適応領域において開発を進めており、その動向は以下のとおり。

(1) 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は近年、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病などの合併疾患として認識されるようになった肝臓疾患で、過度のアルコール摂取がないにもかかわらず、アルコール性肝障害と類似した病気の進行をたどり、肝硬変や肝細胞がんに至る病気である。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の患者数は米国で3,000万人以上、このうち肝細胞にダメージ(炎症、線維化、結節など)がある脂肪肝をNASHと呼び、850万人以上の患者がいる(米国の成人有病率約12%)。NASH患者に肝臓の線維化が進むと通常は元に戻らず、肝硬変に進行する。NASH発症の機序はまだ解明されておらず、複数の製薬企業が開発を進めているがFDAによって認可された治療薬はいまだ出ていない。

タイペルカストには抗線維化作用があるほか、血清中性脂肪を減少させる効果も確認されており、NASHから肝硬変への進行を抑制するなど治療効果が高いと見て開発を進めている。なお、2015年4月にFDAよりファストトラックに指定されている。

2016年3月より高中性脂肪血症を伴うNASH及びNAFLD患者を対象としたP2治験(最大40名予定)は、2018年4月に発表した中間解析データ(被験者15名)が極めて良好だったことから、早期終了したことを同月に発表した。具体的には、治療期間8週間で主要評価項目の1つであった血清中性脂肪の値が、治療前平均値260.1mg/dlから治療後は185.2mg/dl(p=0.00006)と統計的に有意に減少し、また、安全性や許容性も良好だったことを受け、本治験を早期に終了し、次のステップに向けての準備に着手している。今回の治験で血清中性脂肪を大きく低減させる効果が確認できたこともあり、NASH/NAFLD患者だけではなく、より多くの患者に有効な可能性が考えられるとしている。また、2つ目の主要評価項目であったコレステロールのクオリティ評価データについては、2019年後半のAASLD(米国肝臓学会議)で発表する意向を示しており、今後の開発方針についても最も効果的な戦略で進めていく方針としている。2019年3月に東京慈恵医科大学と肝臓疾患に及ぼす臨床効果についての共同研究を開始することを発表したのも、その一環と考えられる。

なお、NASHに関しては患者数が今後も世界的に拡大していくことが予想されており、治療薬の市場規模としては世界でピーク時に350~400億ドルと試算する調査機関もあり、医薬品業界の中では最も市場性の大きい疾患の1つとなっている。米国ではメガファーマからバイオベンチャーに至るまで複数の企業が開発にしのぎを削っており、同社の今後の開発動向が注目される。

(2) IPF(特発性肺線維症)治療薬
IPFとは、様々な原因により肺(肺胞・間質)が炎症を起こし線維化することで、肺が硬化・縮小し肺機能の働きが著しく低下する病気である。症状としては息切れや乾いた咳が出始め、症状が進行すると自発的呼吸が困難となり、酸素吸入器が必要となる。現在は根治療法がなく、症状の進行を抑制する薬が複数ある程度で、患者の3分の2は診断からの生存期間が5年以内となっている。米国での患者数は約13万人で、希少疾患である。

タイペルカストは抗線維化作用があることからIPFに対する治療効果(症状の進行を遅らせる効果)が期待されており、FDAが2014年10月にオーファンドラッグに指定したのに続いて、2015年9月にはファストトラックにも指定している。2016年3月よりペンシルベニア州立大学にてP2治験を開始している。同治験では中等度から重度のIPF患者を対象としており、最長3ヶ月間のスクリーニング期間を設け、治療期間として12ヶ月間を予定している。主要評価項目としては、治療前と治療後における呼吸機能検査(肺活量等)の変化となる。単一医療施設での治験となるため、治験終了予定時期については未定だが、予定登録者数15名に対して12名の登録が完了している。

現在、米国で承認されている治療薬はロシュ社やベーリンガー・インゲルハイム社の製品があるがいずれも症状の進行を遅らせる薬となっている。市場規模としては米国で2025年までに30億ドルの規模に達するとの調査機関の予測もあり、P2治験の主要評価項目において良好なデータが得られれば、注目度も上がってくるものと思われる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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