タマホーム Research Memo(4):注文住宅の拡大と販売用不動産の売却益計上で第2Q累計は大幅増収増益に
1. 2019年5月期第2四半期累計業績の概要
タマホーム<1419>の2019年5月期第2四半期累計の連結業績は、売上高で前年同期比14.9%増の82,856百万円、営業利益で3,012百万円(前年同期は55百万円の損失)、経常利益で3,058百万円(同186百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純利益で2,048百万円(同598百万円の損失)と増収増益決算となった。
売上高は主力の住宅事業で注文住宅の販売棟数が順調に増加したほか、不動産事業においてオフィス区分所有権販売が本格的に売上貢献し始めたこと、並びに販売用不動産の一部売却を行ったことなどが増収要因となった。利益面では、住宅事業が販売商品の構成比変化(戦略的に利益率を抑えた「地域限定商品」の拡大)や広告費、販促費などを積極的に投下したこと等により損失が拡大したものの、不動産事業で販売用不動産売却益3,362百万円を計上したこと等によりカバーし、全体では大幅増益となった。
注文住宅の受注棟数は地域限定商品をけん引役に前年同期比21.0%増と業界平均を大きく上回る
2. 事業セグメント別動向
(1) 住宅事業
住宅事業の売上高は前年同期比5.2%増の63,898百万円、営業損失は1,795百万円(前年同期は822百万円の営業損失)となった。売上高の内訳(グループ間取引含む)は、注文住宅事業が前年同期比6.5%増の60,822百万円、リフォーム事業が同20.3%減の2,454百万円、その他が同16.8%増の745百万円となり、リフォーム事業のみ減収となっている。営業損失が拡大(利益率で1.4ポイント悪化)したが、これは注文住宅事業において戦略的に粗利益率を2%ほど抑えた「地域限定商品」の販売構成比が前年同期の約5割から約7割まで上昇したこと、受注拡大に向けた集客施策の一環として各店舗におけるイベント開催数を増やすなど、広告宣伝費や販促費、人件費を積極的に投下したことが要因となっている。
注文住宅の受注棟数は前年同期比21.0%増の5,525棟、受注高で同19.8%増の93,031百万円となり、同業大手5社平均の同期間における成長率(約9%増)を大きく上回り、市場シェアの拡大傾向が続いている。新しく5店舗を出店し(うち、3店舗は移転)、モデルハウスやショールームのリニューアルも13ヶ所で実施するなど営業体制の強化を図ったほか、創業20周年の来場キャンペーンを行うなど集客につながるイベント※を積極的に実施したこと、地域ごとのニーズに合わせて開発した「地域限定商品」の販売エリアを前期末の37都道府県から5県追加し42都道府県に拡大して拡販を行ったことなどが要因だ。同社は地域No.1戦略を推進しているが、シェアトップまたはトップをうかがえる位置まできている県は前期の4県から8県に拡大しており、シェア拡大戦略は順調に進んでいると言える。
※特に人気の高いイベントとして、「トミカ・プラレールわくわくパーク」が挙げられる。トミカやプラレールは小さい子どもに人気があるため、同社が販売ターゲットとするファミリー層の集客につながっている。
販売棟数は前年同期比5.7%増の3,561棟、平均販売単価は同0.7%増の1,708万円となっている。受注好調により、第2四半期末の受注残は約7,800棟と2018年5月期の販売棟数(7,913棟)に匹敵する水準まで積み上がっており、現状は施工能力がひっ迫しているエリアにおける協力会社の開拓が課題となっている。なお、「地域限定商品」の未販売エリアは残り5県(山口県、沖縄県、長崎県、熊本県、高知県)となるが、沖縄を除けば既に高いシェアを持つエリアのため、現時点で商品化の予定はないと言う。
リフォーム事業は、受注高が前年同期比8.1%減の3,013百万円となった。同社が販売してきた住宅のうち入居後10年を経過した物件を中心に、保証延長工事等の受注活動を展開したものの、熊本地震によるリフォーム対応が一巡したことが減少要因となっている。売上高も同20.3%減の2,454百万円となり減益要因となった。ただ、足元では受注も回復傾向に転じているようで、通期では増収増益が見込まれている。
なお、2018年は6月に大阪北部地震(最大震度6弱)、9月に北海道胆振東部地震(最大震度7)と立て続けに大きな地震が発生したが、これら地震の発生によって同社の建築した住宅で半壊、全壊したケースは1例もなく、耐震性に強い住宅であることが改めて証明された格好となっており、注文住宅の受注好調の一因になっていると考えられる。
(2) 不動産事業
不動産事業の売上高は前年同期比96.1%増の15,087百万円、営業利益は同873.2%増の4,372百万円と大幅増収増益となった。前述した通りオフィス区分所有権販売事業が本格的に立ち上がったことや、販売用不動産売却益を計上したことが要因となっている。
事業別の売上動向(グループ間取引を含む)を見ると、戸建分譲事業は販売棟数が前年同期比25.4%増の217棟、売上高が同15.0%増の6,339百万円と好調に推移した。資金回転率を重視した10区画以下の小規模分譲地を中心に仕入、販売を行ったことが奏効した。一方、マンション事業については大型プロジェクトが完売したことにより同88.6%減の116百万円となった。現状、新規の分譲開発案件はないため、当面は中古マンションのリノベーション販売などを検討していくことにしている。サブリース事業は同7.6%増の1,164百万円と堅調に推移した。なお、その他売上7,567百万円(前年同期は144百万円)の中にオフィス区分所有権販売と販売用不動産(博多区、土地959平方メートル、建物4,219平方メートル)の売却額(非開示)が含まれる。販売用不動産の売却益が3,362百万円であるため、増加分の大半は販売用不動産の売却と考えられるが、オフィス区分所有権販売についても営業を本格始動させたことから、売上高で10億円以上の規模になったと見られる。
(3) 金融事業
金融事業の売上高は前年同期比4.5%減の511百万円、営業利益は同15.4%減の163百万円と2年ぶりに減収減益に転じた。住宅火災保険の付保率は前年同期比で同水準を維持したものの、つなぎ融資の取扱件数が減少したことにより減収減益となった。つなぎ融資に対する顧客への営業提案力が弱かったことが理由で、下期以降は提案力を再強化するほか、生命保険販売にも注力していくことで収益性を図り、通期で増収増益を目指していく。
(4) エネルギー事業
エネルギー事業は太陽光発電設備の発電量が安定して推移したことで、売上高は前年同期比7.8%増の489百万円、営業利益は同17.7%増の227百万円と堅調に推移した。
(5) その他事業
その他事業の売上高は前年同期比6.0%増の2,869百万円、営業利益は16百万円(前年同期は84百万円の損失)となった。売上高は住宅事業における販売棟数増加に伴い、子会社で展開する家具・インテリア販売など住宅周辺事業が好調に推移した。利益面でも住宅周辺事業の増収効果が寄与している。
なお、国内のホテル関連事業に関しては2016年3月に開業した「タマディアホテル羽田」(客室数160室、宿泊料8,000~12,000円)の稼働率がインバウンド需要の効果もあって90%超と引き続き好調に推移している。また、ホテル関連事業の第2弾として「タマキャビン大阪本町」(客室数88室(122床)、宿泊料は平均で4,000~8,000円)を2018年3月に開業した。立地は大阪中心部にあり、最寄駅から徒歩5分圏内と利便性も良いため、今後の稼働率上昇による収益貢献が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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