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SDエンター Research Memo(6):新規出店とリニューアルにおいて過去の成功事例を再現し、成長を目指す


■中長期の成長戦略

2. フィットネス事業への成長投資の加速
フィットネス事業の成長戦略の骨子は、新規出店とリニューアルだ。ともに設備投資を伴うものであり、この点で過去の成長戦略(内容は、ダイエットプログラムの販売による既存店売上高の拡大)とは大きく異なっている。

SDエンターテイメント<4650>が今回、成長のためとはいえ、投資の加速を決断した背景には、一言で言えば“成功事例”の存在がある。実際の成功事例を分析し、それを他の店舗や他の立地でも再現できるということに確信を得たことが今回の成長戦略の導入の決断につながった。その成功事例とは三重県の津藤方店のケースだ。

(1) リニューアル戦略の背景
同社は2016年10月、津店を閉鎖し、津藤方店として移転・リニューアルオープンした。津店のリニューアル直前の約1,900名の在籍会員数に対して、津藤方店は、約500名増の約2,400名の在籍会員数でスタートを切ることができた。このポイントは、従来会員をほぼそのまま維持できたため、リニューアル効果による新規会員の増加がそのまま純増につながったということだ。

2ヶ月間の休業を挟んだにもかかわらず、従来会員をほぼそのままキープできたのは、津店のスタッフに依存する要素が大きかったのは事実だ。彼らは日々のコミュニケーションを通じて会員との間で信頼関係を築き上げていたことがある。その上で、既存会員へのきめ細かいフォローや、つなぎとめのための臨時イベントなどを開催し、顧客流出の食い止めに成功した。

同社は津藤方店の事例をベストプラクティス(最良のお手本)としてマニュアル化し、全店舗で共有することを既に始めている。しかしこれだけでは津藤方店の成功を他店で再現できる保証にはならない。各店舗で顧客層や店舗スタッフと会員とのつながり、強みや弱みといった事情がまったく異なるためだ。そこで同社はグループ企業から店舗マネジメントのプロフェッショナルを出向で受け入れ、各店舗の問題点の洗い出しとリニューアルに際しての効果最大化のための施策の策定を進めている状況だ。今後、この店舗ごとのプログラムにのっとりつつリニューアルを進める方針だ。

(2) 新規出店戦略の背景
津藤方店の事例は、もう1つの重要な意義がある。それは、移転先の複合商業施設において、津藤方店の移転による商業施設への集客効果が高まったという結果を残したことだ。これを受けて、当該複合商業施設を運営する大手SCが、他の複合商業施設に対してもSDフィットネスをコアテナントの1つとして誘致することを既に検討しており、同社と当該大手SCとの共同出店という形で新規出店を進める方向で案件が進捗しつつある。このことは、これまで新規出店における好立地確保に苦労していた同社からすれば、環境が180度変わったことを意味する。資金面のみならず立地選定という実体面でもリスク低減につながると期待される。

新規出店については、さらに別の形態も計画されている。それは自社保有施設への出店だ。同社は北海道内に大型複合施設の自社物件を複数所有し、GAME事業など他の業態で利用している。この面積割を見直し、空いたスペースにSDフィットネスを新規オープンするというものだ。既にディノスパーク札幌白石店を閉鎖(2017年5月末)し、そこにSDフィットネス(「SDフィットネス札幌白石店」)を出店する準備が進んでいる。

同社は2017年3月末時点で15店舗のフィットネス施設を有している。これはSDフィットネス・ブランドのフィットネスジムのほかに、ホットヨガスタジオや加圧トレーニングスタジオなどの小規模な施設も含んだ数字だ。同社は今後3年間で5店舗新規出店し、2020年3月末時点で20店舗とする計画だ。この5店舗はすべてSDフィットネスの形態となる見通しだ。前述のように、同社はリニューアルによる既存店売上高の上昇と新規出店によるフィットネス事業の収益向上策により、フィットネス事業の売上高を2020年3月期において3,550百万円と計画している。

弊社では、フィットネス事業の成長戦略について、計画の内容に説得力があり、成功する可能性は十分高いと考えている。そう考える最大の理由は、前述のように、成功した実績があることだ。過去の成長戦略では高収益性のダイエットプラグラムの販売が中核だったがそれは成功には至らなかった。今回の成長戦略には成功の実績があり、それを再現していくことで成長を成し遂げようというものだ。既存店の売上拡大はリニューアルだけに依存しているのではなく、有料プログラムの頻繁な導入・更新などの地道な施策や物販拡大などでも実現している。また新規出店では、自社物件への出店や大手SCとの共同出店により、好立地の確保が期待されるほか、リスクも抑制できると見通しだ。さらには、RIZAPグループによるスポーツアパレルへの進出やヤマノホールディングス<7571>からのスポーツ事業の買収がある。SDフィットネスはこれらのグループ内の動きとシナジーを追求しやすいポジションにあり、この点でも期待が高まる。

上記の新規出店計画とは別に、同社は提案型店舗としての「ランニング&コンディショニングジム」開設準備を進めている。これは高い実績を有する陸上指導者の弘山勉(ひろやまつとむ)氏をヘッドコーチに、オリンピック3回出場の実績を持つ弘山晴美(ひろやまはるみ)氏をアドバイザーに迎え、ランニングとコンディショニングについての専門性を高めた独自性の高いジムで、今夏のオープンを目指している。こうした新たなコンセプトの事業モデルを自社で確立し、既存のSDフィットネスとのシナジーを追求してフィットネス事業全体の収益拡大を図る考えだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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