アイナボHD Research Memo(3):2016年9月期は増収増益、新規顧客開拓と大口工務店からの受注獲得に注力
(1) 2016年9月期
a)損益状況
2016年9月期は売上高で60,723百万円(前期比7.8%増)、営業利益で1,659百万円(同4.0%増)、経常利益で1,895百万円(同5.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,151百万円(同2.7%増)となった。主力事業の戸建住宅事業の売上高が8.4%増と好調であったことから営業増益となった。
営業利益の増減要因としては、売上増によるプラスが619百万円、マイナス要因としては新規連結子会社の影響77百万円、工事損失引当金85百万円、粗利率の低下(0.4ポイント)による影響272百万円、販管費の増加120百万円となっている。
セグメント及びサブセグメント別の状況は以下のようであった。
1)戸建住宅事業
戸建住宅事業の売上高は54,223百万円(同8.4%増)、セグメント利益は2,114百万円(同8.5%増)となった。市場全体(住宅着工件数)はやや低調であったが、新規顧客開拓に努めたこと、新商材、木質建材、サッシ等の重点商品の拡販を積極的に行ったことなどから増収となった。新規顧客開拓件数は665件(前期775件)であったが、比較的大口の工務店からの受注を獲得できたことから同金額ベースでは1,648百万円となり、ほぼ前年並みを確保した。
サブセグメント別では外壁工事が13,602百万円(前期比12.9%増)、住設工事が24,567百万円(同8.9%増)、建材販売が9,086百万円(同3.8%増)、住設販売が6,967百万円(同4.7%増)となり、すべてのセグメントで増収となった。
2)大型物件事業
大型物件事業の売上高は6,499百万円(同3.3%増)となった。タイル工事の売上高は2,594百万円(同7.2%減)となったが収益性は改善されている。セグメント営業利益は294百万円(同14.6%減)となったが、この中には前述の不良工事にかかる張替え費用(引当金)85百万円が含まれており、この費用計上を除けば実質は増益であった。
ただしこの事業部門は床用タイル工事は引き続き需要が期待できるが、全体としては今後減少が予想される。そのため同社ではリノベーション市場への展開などを進めている。過去においてもレンガから外壁タイル販売・住設機器販売へ、また近年では卸売中心から工事請負へと事業ドメインを変えてきた同社であり、今後も時代の変化に合わせて事業内容を変えていくことは十分可能だろう。
3)重点課題の達成状況
期初に重点課題としていた分野・商品別の状況は、新規開拓が1,648百万円(前期比0.6%増、達成率99.9%)、マリスト(タイル)が1,692百万円(同21.2%増、同89.6%)、アルティス(高級浴槽)が291百万円(同0.7%減、同72.8%)、太陽光発電システムが582百万円(同23.3%減、同57.9%)、サイディングが2,378百万円(同16.5%増、同84.9%)、木質建材が1,433百万円(同28.4%増、同105.7%)、サッシ(東京サッシ分を含む)が1,602百万円(同125.0%増、同71.2%)となった。
前期比では太陽光発電システム・アルティス(高級浴槽)以外は増収を確保した。特にマリスト、木質建材、サッシが好調であった。ただし目標値に対しては、木質建材以外は未達であった。
b)財政状況
2016年9月期末の財政状況を見ると、流動資産は23,226百万円(前期末比1,971百万円増)となった。主要科目では現金及び預金751百万円増、受取手形・完成工事未収入金等560百万円増、未成工事支出金445百万円増などであった。固定資産は7,738百万円(同487百万円増)となったが、内訳は有形固定資産が5,737百万円(同23百万円減)、無形固定資産608百万円(同519百万円増)、投資その他資産1,392百万円(同9百万円減)となった。無形固定資産の増加は主にのれんの増加406百万円による。この結果、資産合計は30,964百万円(同2,458百万円増)となった。
流動負債は12,557百万円(同1,734百万円増)となったが、主な変動は支払手形・工事未支払金等の増加577百万円、ファクタリング未払金の増加558百万円などであった。固定負債は1,374百万円(同28百万円増)となった。純資産は17,032百万円(同696百万円増)となったが、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加827百万円による。
c)キャッシュフローの状況
2016年9月期のキャッシュフローを見ると、営業活動によるキャッシュフローは2,002百万円の収入(前期1,047百万円の収入)となった。主な収入は税金等調整前純利益の計上1,765百万円、仕入債務の増加923百万円、一方で、主な支出は売上債権の増加290百万円などであった。投資活動によるキャッシュフローは612百万円の支出(同72百万円の支出)となったが、主に定期預金の預入による支出300百万円、無形固定資産の取得による支出176百万円など。財務活動によるキャッシュフローは838百万円の支出(同401百万円の支出)となったが、主に短期借入金の純減による支出484百万円、配当金支払いによる支出324百万円による。この結果、現金及び現金同等物は551百万円増加し、期末残高は8,323百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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