図1 ミトコンドリアのネットワーク(イメージ)
図2 コントロール細胞でのミトコンドリアネットワーク形成
図3 マイトリガーゼの減少によるミトコンドリアネットワーク形成の阻害
大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区 社長:上原 茂]は、長年取り組んできたミトコンドリア、老化細胞、肌老化に関する研究において、ミトコンドリアに存在する酵素「Mitochondrial Ubiquitin Ligase(マイトリガーゼ)」の減少が、肌細胞のダメージ修復に重要な役割を持つミトコンドリアネットワークの形成を妨げることを発見しました。このことから、若返りの鍵「マイトリガーゼ」を活性化することができれば、ミトコンドリアネットワークが正常に形成され、肌老化に抵抗できることが期待されます。
画像 : https://newscast.jp/attachments/d1PR4blUlLp8zmZZBV35.png
【研究背景】
ミトコンドリアは生命の機能や生存において非常に重要な細胞小器官です。ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを生産し、網状のネットワーク構造を形成することで細胞全体にそのエネルギーを巡らせて細胞の機能を維持しています。しかし、紫外線や酸化ストレスなど、様々な要因でミトコンドリアのネットワークは崩壊してしまいます[参考文献1,2]。細胞の機能を維持するためには、ミトコンドリアがネットワークを再形成することが重要です[参考文献3]。
本研究では、細胞のダメージ修復におけるミトコンドリアのネットワークの重要性に着目し、マイトリガーゼとミトコンドリアネットワーク形成の関連性について調べました。
画像 : https://newscast.jp/attachments/WpLS1aApIEkedsqr1YY4.png
図1 ミトコンドリアのネットワーク(イメージ)
【研究成果】
1. 肌細胞がダメージを受けると、ミトコンドリアは一時的に分裂し、その後ネットワークを再形成する
細胞がダメージを受けたあと、正常な肌の細胞ではミトコンドリアのネットワークがどのように変化するかを調べました。正常な細胞(コントロール細胞)では、細胞がダメージを受けた直後はミトコンドリアが分裂し、一時的にミトコンドリアネットワークの形成が阻害されるものの、数時間後にはミトコンドリアネットワークが再形成されることが確認されました(図2)。
画像 : https://newscast.jp/attachments/LcKfkFAUhPPNlcZD1FOB.png
図2 コントロール細胞でのミトコンドリアネットワーク形成
2. 若返りの鍵「マイトリガーゼ」が減少すると、ミトコンドリアネットワークが形成されない
次に、マイトリガーゼを減少させた肌の細胞を用いて、細胞がダメージを受けた後のミトコンドリアネットワークの変化を調べました。マイトリガーゼが減少した細胞では、細胞がダメージを受けた直後だけでなく、その後もミトコンドリアネットワークが形成されないことが明らかになりました(図3)。
画像 : https://newscast.jp/attachments/XNMEetb0JPRwzh5jFWit.png
図3 マイトリガーゼの減少によるミトコンドリアネットワーク形成の阻害
【まとめ】
細胞がダメージを受けた後の修復にミトコンドリアネットワーク再形成が必要です。しかし、今回の研究で、マイトリガーゼが減少していると、細胞がダメージを受けた後にミトコンドリアがネットワークを再形成できないことがわかりました※1。
これまでの研究で、加齢によって肌のマイトリガーゼが減少することを確認しています※2。また、マイトリガーゼが減少した肌細胞では、酸化ストレスによるDNAダメージの修復力が低下することも確認しています※3。さらに、今回の研究では、マイトリガーゼが減少した肌細胞が酸化ストレスを受けた後に、ミトコンドリアネットワークを形成できないことも確認しました。
細胞にダメージが蓄積すると肌老化が進行してしまいます。今回の研究から、マイトリガーゼが肌老化に重要な役割を果たしている可能性がより明確になりました。このことから、若返りの鍵「マイトリガーゼ」を活性化できれば、ミトコンドリアネットワークが正常に形成され、肌老化に抵抗できることが期待されます。
私たち大正製薬は、健康で美しくあり続けたいと願う生活者の方々に向けて、これからも美しい肌に繋がる先端の美容研究を進め、その研究成果をお届けしてまいります。
※1 本研究成果は、2024年11月27日~29日に開催された第47回日本分子生物学会年会にて発表した内容の一部となります。
※2 2024年4月17日発表リリース
『若返りの鍵「マイトリガーゼ」と肌老化の関係を多角的に解明~コラーゲン、老化マーカー、肌細胞の動きへの影響~』
URL:https://www.taisho.co.jp/company/news/2024/20240417001535.html
※3 2024年12月5日発表リリース
『若返りの鍵「マイトリガーゼ」の新知見~肌が受けたDNAダメージを自ら修復する力は、マイトリガーゼの減少で阻害~』
URL:https://www.taisho.co.jp/company/news/2024/20241205001776/.html
【用語説明】
■ Mitochondrial Ubiquitin Ligase(マイトリガーゼ):柳茂教授(学習院大学)が2006年に発見したミトコンドリアに存在する酵素。ミトコンドリア内の不要になったタンパク質に「ユビキチン」という目印をつけて(ユビキチン化)分解を促すなどの役割を担っている。
■ ミトコンドリアネットワーク:ミトコンドリアが形成する3次元構造。ミトコンドリアは融合と分裂を継続的に繰り返しながら、連続したネットワークを形成し、エネルギー産生量を高めている。
【参考文献】
[1] Jugé, R., Breugnot, J., Da Silva, C., Bordes, S., Closs, B., &Aouacheria, A. (2016). Quantification and Characterization of UVB-Induced Mitochondrial Fragmentation in Normal Primary Human Keratinocytes. Scientific reports, 6, 35065.
[2] Garcia, I., Innis-Whitehouse, W., Lopez, A., Keniry, M., &Gilkerson, R. (2018). Oxidative insults disrupt OPA1-mediated mitochondrial dynamics in cultured mammalian cells. Redox report : communications in free radical research, 23(1), 160–167.
[3] Yapa, N. M. B., Lisnyak, V., Reljic, B., &Ryan, M. T. (2021). Mitochondrial dynamics in health and disease. FEBS letters, 595(8), 1184–1204.
PR_ミトコンドリア研究で新事実.pdf
: https://newscast.jp/attachments/eC1149GpTSE7AJn7jI1U.pdf