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星好きを増やしたい 映画にもなったコンテスト、発案した教諭の願い


映画「この夏の星を見る」が、新型コロナ禍で活動に制限を受けた中高生たちを描き、全国で公開される。この映画は、茨城県の土浦三高科学部の岡村典夫教諭が発案した「スターキャッチコンテスト」を中心に進行する。この実際のコンテストは、学生たちが手作りの望遠鏡で指定の天体を捉えることを競うもので、岡村教諭の夢はこのコンテストを全国に広めること。映画は辻村深月さんの小説を原作に、コロナ禍中の中高生がオンラインで繋がり、星を介して交流していく様子を描く。岡村教諭の熱意は、星を通じて科学教育の底上げを図りたいというものであり、映画の公開を心待ちにしている。

 新型コロナ禍で部活動を制限された中高生たちを描いた映画「この夏の星を見る」が7月4日から全国公開される。作中で中高生が取り組む「スターキャッチコンテスト」は、手作りの望遠鏡のレンズに指定された天体を素早く収めることを競う。茨城県立土浦三高の科学部顧問、岡村典夫教諭(63)の発案で2015年に始まった実在のコンテストだ。映画にも天体監修として携わってきた岡村教諭は「星好きを増やし、スターキャッチコンテストを全国に広めたい」と夢を膨らませている。

 映画はKADOKAWAから23年に出版された辻村深月さんの同名小説が原作。コロナ禍で部活動の制限を受けながらも、オンラインによるスターキャッチコンテストを通じて茨城と東京、長崎の中高生がつながっていく物語だ。劇中に登場する「砂浦三高」天文部は土浦三高の科学部がモデルになっている。

 コンテストの構想が生まれたのは、岡村教諭が福島県内の高校の天体観測会に講師として招かれた時の経験からだ。塩ビ管でできた手作り望遠鏡を持参し、生徒たちに「倒しても大丈夫だから」と望遠鏡を使ってみるよう促したところ、生徒たちは操作に夢中になった。それまでの観測会では高価な望遠鏡をのぞいてもらい、星が美しく見えれば子どもたちの満足度も高いと考えていたが、そうではないと気付いたという。「頭を殴られた感じがした。みんなで望遠鏡を作ってコンテストをしたら盛り上がるのでは」

 そうして始まったコンテストは県内の高校の科学部などが集まり、天文台併設の宿泊施設「プラトーさとみ」(常陸太田市)で毎年11~12月に開催している。

 映画は土浦三高やプラトーさとみなど、県内で多くのロケが行われた。小説化の段階から協力してきた岡村教諭は24年9~10月、長崎・五島列島や東京でのロケに同行し、出演者に望遠鏡の構え方の指導なども行ったという。

 実は、辻村さんとの出会いは約15年前にさかのぼる。岡村教諭は当時勤務していた県立水戸二高で、生徒たちと300年以上前に使われていた筒がないタイプの望遠鏡を再現した。長さは10メートルに及び、2010年12月、民放のバラエティー番組でも紹介された。それを見た辻村さん側から連絡があり、11年3月に生徒たちと取材を受けるはずだったが、東日本大震災が発生し実現しなかった。21年になって再び辻村さん側から連絡があり、小説化に至った。

 出版後はうれしい反響もあった。本を読んだ群馬県内の高校生から「スターキャッチコンテストをやりたい」と連絡があり、群馬県内で今秋の開催に向けて準備を進めている。

 映画では生徒たちが各自の机にパーティションを設置して昼食をとる場面などが描かれ、薄れつつあるコロナ禍の記憶を思い起こさせる。また、岡村教諭がモデルになった天文部の顧問が他校の顧問らに生徒たちへの思いを述べるシーンがある。コロナ禍で部活動や修学旅行が中止になった生徒たちに「失われた」という言葉を使うことへの抵抗感を吐露する。岡村教諭はこうしたコロナ禍の描写に「切なくなったし、失われたと言いたくないという気持ちにも共感した」と語る。

 授業でのインターネットの活用が充実するなど、得られたものもあった。「生徒たちには『いつか歴史の教科書に載る時代を生きている。失われて嫌な時代だったと思うのではなく、逆に楽しんで』という話をよくした」と振り返る。映画を通じ、コロナ禍で得た教訓を忘れないでほしいとの思いもある。

 岡村教諭は県内外で天体観測会を年60回以上開く。天文の普及だけでなく、根底には日本の科学教育の底上げを図りたいという熱意がある。「映画を見た人が星を見たい、望遠鏡を扱ってみたいと思ってくれたらうれしい」。星好きの子どもが増えることを願いながら、公開を心待ちにしている。【鈴木敬子】

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