
藤井聡太名人(22)に永瀬拓矢九段(32)が挑戦し、大阪府泉佐野市のホテル日航関西空港で9日から指されていた第83期名人戦七番勝負の第3局(毎日新聞社、朝日新聞社主催、大和証券グループ協賛、泉佐野市など地元共催)は10日午後7時28分、藤井名人が永瀬九段に102手で勝ち、3連勝で3連覇に王手をかけた。持ち時間各9時間のうち残り時間は永瀬九段43分、藤井名人38分。第4局は17、18の両日、大分県宇佐市の宇佐神宮で行われる。
1日目は、最近のタイトル戦では珍しい相矢倉戦になり、千日手の可能性を残して封じ手となった。藤井名人の封じ手4四銀引から2日目の対局が始まった。藤井名人の5五銀(54手目)で4手前と同じ局面に戻ると「千日手になるかも」と検討室は色めき立った。
しかし永瀬九段は38分考えて7九角(55手目)と千日手を回避すると、5八歩(57手目)、9八歩(67手目)と辛抱の手を重ね、反撃のチャンスをうかがう。
着々とポイントを重ねた藤井名人は3八歩(74手目)からと金を作って優位を広げにいくと、6四歩(82手目)~6五歩(88手目)と厳しく敵陣に迫り、そのまま勝負を決めた。
解説の稲葉陽八段は「6四歩は見えづらい手ですが、急所を突いていて全ての駒が攻めに働き、指されてみればなるほどという手。3八と(78手目)からの寄せの組み立ては見事で、藤井名人の視野の広さが表れました」とたたえた。【丸山進、最上聡】
藤井名人の話
相矢倉はかなり久しぶりなので距離感が難しかった。封じ手局面はあまり自信がなく、千日手の打開はあまり考えていなかった。6四歩~6五歩が速い攻めになるので指しやすくなった可能性はあると思った。
永瀬九段の話
相矢倉にするのは自然だと思ったが早い段階で力戦っぽくしてしまい、先手番で勝てていない要因が何個か見えた気がする。2日目は千日手にすべきだった。主導権が握れず、面白くない将棋にしてしまった。