
世界14億人のキリスト教カトリック信徒の新たなトップが決まった。4月に死去したフランシスコ前教皇の後任を決める選挙(コンクラーベ)で8日、米国出身のロバート・プレボスト枢機卿(69)が第267代教皇に選ばれた。この時を待ち望んでいた信徒らは歓喜に沸いた。
待ちわびた決着に歓喜
「ブラボー」「ワンダフル」
強い西日が差す8日午後6時(日本時間9日午前1時)すぎ、バチカンのシスティーナ礼拝堂の煙突から白い煙が噴き出し、鐘の音が響き渡ると、サンピエトロ広場に集まった数万人の信徒らから大きな歓声が上がった。
自国の国旗を振ったり、祈りをささげたりする人々。涙を流す人もいた。コンクラーベは7日夕方から始まった。8日午前までの計3回の投票では決着せず、信徒らは待ちわびていた。
新教皇の名前知り「誰?」
ただ、間もなく新教皇がプレボスト氏だと明らかになると、群衆から「誰?」と驚きの声も漏れた。プレボスト氏は一部の欧州メディアなどで選出の可能性があるとして名前が挙がっていたものの、「有力候補」と盛んに報じられていたわけではなく、意外な人選と受け止めた人も少なくなかったようだ。
教皇名がレオ14世に決まったプレボスト氏は午後7時20分ごろ、広場を見下ろすサンピエトロ大聖堂のバルコニーに姿を現した。信徒らに手を振るなどした後、イタリア語で演説に臨んだ。
「平和が皆さんと共にありますように」
これが最初の言葉だった。紛争が絶えない世界情勢を意識してか、「武力に頼らず、持続する平和」の意義も強調した。活動拠点のペルーの人々に向け、スペイン語で語りかける場面もあった。見つめる信徒らからは温かい拍手がたびたび起こった。
「世界を一つにする『橋』かけて」
レオ14世が大聖堂内に引き上げ、慣例のセレモニーが終わると、広場では歌や踊りで喜びを表す信徒たちの姿も見られた。
米国出身の教皇が誕生するのは初めて。ローマの大学に通う米国人のウィリアム・ジョーダンさん(21)は「米国人が選ばれることは予想していなかった」と笑顔で話した。そして「今、(トランプ米政権下で)世界の分断が起きている」とした上で、レオ14世にこう期待を寄せた。
「フランシスコ前教皇のリベラルな路線を引き継いで、世界の人々を一つにするために『橋』を架けてほしい」【バチカン福永方人】