
千葉大と上智大の研究グループは8日、サハラ砂漠にあるエジプトの2カ所のオアシスで起きている地盤沈下を衛星の観測データから突き止めたと発表した。地下水のくみ上げが原因とみられ、特に農地で地表面が下がっていた。
調査対象は、エジプト中部の「ハルガオアシス」と、そこから西に約160キロの「ダハラオアシス」。主要産業は農業で、合わせて600平方キロの農地で小麦などが栽培されている。どちらも雨がほぼ降らず、地下水が唯一の水源という。
研究グループは、欧州宇宙機関(ESA)の観測衛星が2017~21年に集めたデータを使用。「合成開口レーダー(SAR)」と呼ばれるセンサーを使って地表面を解析し、どのくらい地盤が下がっているか地図で色分けして示した。
その結果、いずれのオアシスも年平均約10ミリのペースで沈下していた。また、23年の現地調査で、地表が下がって基礎が浮いた井戸が複数あることも判明。これは地盤沈下が起きた際の典型的な現象という。
研究グループはオアシスの地盤沈下を確認し、地図で表示したのは世界初としている。調査を主導した千葉大大学院の浜侃(あきら)助教(農業気象学)は、地下水に依存するオアシスはサハラ砂漠北東部に集中していると指摘。「今後水量が減り続ければ最悪、農業が続けられず土地が枯れる危険性がある」と述べた。
また「世界では乾燥地で人口と食料生産の増加が見られる。持続可能な生活を営むために地下水の状況を可視化・モニタリングできる方法を開発したい」と話した。【中村聡也】