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不動産不況で再加速する中国の「鉄あまり」 過剰生産で貿易摩擦再び


トランプ政権が発動する鉄鋼・アルミへの新たな関税措置が、米中間で長年の摩擦となっている中国の過剰生産問題を再燃させている。中国の鉄鋼産業は過去数十年間、急成長を遂げたが、過剰な供給が引き起こす価格低下と輸出増加によって、米国や他の諸国からの貿易制裁を受け続けている。中国政府は市場の縮小と再編を進める方針を示しているが、具体的な解決策はまだ不透明だ。鉄鋼業界のみならず、その他の産業における過剰生産も米欧との摩擦原因となっており、問題の解消は見通せない状況が続く。

 米トランプ政権による鉄鋼・アルミニウム製品への関税強化が12日に発動する。低迷する米国鉄鋼業界の保護が目的だが、1次政権時代に発動した際は、過剰生産で安価となった中国製鋼材の流入を防ぐのが狙いだった。習近平指導部も対応に乗り出しているが、解決への道のりは険しい。

 中国東北部の遼寧省鞍山市。旧満州で操業していた日本の昭和製鋼所の流れをくむ鉄鋼メーカー「鞍鋼集団」を中心とする「鉄の町」で、煙を上げる巨大な工場が林立し、街中の市場には建材用のさまざまな種類の鉄鋼製品が山積みにされていた。

 地元の男性は「鉄に関連する仕事が多いが、街の景気は良くない」と嘆く。鞍鋼集団は粗鋼生産量で世界首位の中国宝武鋼鉄集団、2位の欧州アルセロール・ミタルに次ぐ世界3位だが、上場子会社の鞍鋼股份の2024年決算は、71・9億元(約1500億円)の赤字となった模様だ。「鉄鋼市況の低迷が続いている」(同社)として、損失は23年から2倍以上に拡大した。

 中国の鉄鋼産業は00年代以降、経済成長に合わせて生産量が拡大してきた。24年の粗鋼生産量は10億509万トンで、世界生産の過半を占める。だが、多くの事業者が参入して供給過剰となって大幅に値下がりした製品が、国内で行き場をなくして海外輸出に向かうと各国が反発。日本鉄鋼連盟によると、15~16年の反ダンピング(不当廉売)調査の開始件数は15年は26件、16年は29件に及び、米国はトランプ1次政権時代の18年に鉄鋼に25%、アルミに10%の関税を課した。

 米国はその後、日本や欧州連合(EU)などの鉄鋼製品は事実上関税の適用除外としたが、中国は関税措置が残っている。鉄鋼に関しては今回新たに中国に対して追加関税が加わるわけではない。

 中国政府は、鉄鋼業界の過剰生産問題に対し、国主導で企業間の合従連衡を進めて対応しようとしてきた。ただ、20年夏に表面化した不動産不況が長期化し、新築住宅の建設などが低迷する中で、国内の「鉄あまり」は解消されないまま。安い中国産鋼材が海外に輸出される事態が再加速し、24年の中国製鋼材への反ダンピング調査の開始件数は29件に達し、各国との貿易摩擦を再び招いている。

 中国政府は3月11日に閉幕した全国人民代表大会(全人代=国会に相当)で報告書を公表し、「鉄鋼産業の縮小・再編を推進する」方針を打ち出した。

 関係者からは「明確な減産のシグナルだ」(アナリスト)との期待の一方「本格的な減産には雇用削減にも踏み込まざるを得ないが、反発は大きい」(鉄鋼業界幹部)と具体策が出ることを疑問視する見方も出ている。

 中国の過剰生産問題は24年、電気自動車や太陽光、風力発電などでも米欧などの強い反発を招いてきた。長年続く鉄鋼問題の解決はなお見通せない。【北京・松倉佑輔】

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