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自社で保有する金型を無償で保管するよう下請け業者に強要したとして、公正取引委員会は18日、日産自動車とトヨタ自動車のそれぞれの系列の自動車部品製造2社について、下請け法違反(不当な経済上の利益の提供要請)を認定し、再発防止を勧告した。
自動車産業などの製造業では、部品作りに使う金型を下請けに保管させる行為が横行しているとされる。不適切な取引慣行とみて公取委が監視を強める中、日本を代表する企業グループによる違反が相次いで発覚し、担当者は「トップのリーダーシップで自主点検すべきだ」としている。
今回勧告を受けたのは、日産の完全子会社でエンジンやトランスミッション(変速機)を製造する「愛知機械工業」(名古屋市)と、トヨタが24%の株式を保有し自動車用バネなどを製造する「中央発條」(同)。
公取委によると、愛知機械工業は遅くとも2023年8月以降、取引先5社に対し、自社で保有する金型415個を無償で保管させた。中央発條も同4月以降、取引先24社に計608個を無償保管させていた。2社は違反を認め、保管費用として、愛知機械工業は1925万円、中央発條は572万円をそれぞれ取引先に支払ったという。
2社は新たな発注予定がないにもかかわらず取引先に保管を強要していた。期間は長いもので10~20年に及び、最大で5トンに上る巨大な金型もあった。違反の背景には「補給品がいつ必要になるかわからない」との意識もあったとされるが、長期間使っていない金型はさびの除去などが必要となり、2社は保管費用だけでなく、急きょ使う場合のメンテナンス費用も取引先に負担させていた。
金型保管を巡る下請け法違反は長く摘発されてこなかったが、中小企業庁の指摘などを受けて公取委が監視を強化。違反の認定は23年3月の初勧告以降、今回で11件目となる。一方、下請け業者が金型を保有しているように見せかけ、実際には廃棄を許さず保管を強要する摘発逃れのような問題も指摘されている。【渡辺暢】