
三重県桑名市の観光施設「六華苑(旧諸戸清六邸)」(桑名市桑名)の庭園にある池で今、太平洋戦争末期の桑名空襲の痕跡を目にすることができる。浚渫(しゅんせつ)作業で水が抜かれ、池の底に爆撃であいた穴を塞いだ跡が出現したからだ。戦争の爪痕は戦後80年を経てもはっきりと残っていた――。
池は国の名勝に指定されている庭園の一角にあり、爆弾投下で掘れた穴をコンクリートで覆ったほぼ円形の跡を確認できる。市観光課によると、直径は約9メートルで穴の大きさから500キロ爆弾が投下されたと推定される。空襲に見舞われたのは終戦直前の1945年7月24日とみられる。
池の浚渫は約10年に一回行っており、今回は1月半ばから水を抜いた。来場者は池の底には入れないが、庭園から爆撃跡を眺めることができる。水を入れ始める今月下旬に遺構は再び水中に没する。
六華苑では他に洋館の車寄せも爆風で損傷。池の築山を掘り下げて造られた防空壕(ごう)跡も現存している。
六華苑を含む市中心部は戦時中、軍需工場があったことなどから米軍の標的とされ、何度も焼夷(しょうい)弾や爆弾が投下されて甚大な被害を受けた。
石神教親・六華苑長は「戦後80年の節目に桑名空襲の記憶を風化させないためにも、普段は見られない遺構を見て何かを感じ取ってもらえれば」と話している。【松本宣良】