米実業家のイーロン・マスク氏は21日、ソフトバンクグループ(SBG)、オープンAI、オラクルの日米3社が発表した米国での5000億ドル(約78兆円)の人工知能(AI)事業について、「彼らは実際はお金を持っていない」として、実行困難との見方を示した。オープンAIは真っ向から否定しており、同社を敵視するマスク氏の「言い掛かり」の可能性がある。
マスク氏は21日夜、事業を紹介するオープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)によるX(ツイッター)への投稿に返信する形で、出資者たちの資金不足の可能性を指摘。「ソフトバンクが確保しているのは100億ドル弱。確かな筋からの情報だ」とも投稿した。
これに対し、アルトマン氏は「間違っている。あなたは知っているはずだ」と反論。「国にとって素晴らしいことが、必ずしもあなたの会社にとって最適とは限らない。新たな役割において、あなたが主に米国を第一に考えるよう期待する」と投稿した。
事業計画で、誰がいくらを拠出するかの全体像はまだ示されていない。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、今後、事業への追加出資者が募集される予定で、約300億ドルの手元資金を持つSBGも新たな借り入れを計画しているという。
事業には、マイクロソフトや半導体大手エヌビディア、半導体設計大手アームなど名だたる企業が初期の技術パートナーとして参加する見通しだ。一方、マスク氏が2023年に立ち上げたAI開発「エックスAI」は含まれていない。
今回の事業を巡っては、トランプ米大統領もホワイトハウスでの発表に加わり「誰も経験したことのない巨額投資だ」と歓迎していた。それだけに、トランプ氏の盟友であるマスク氏の投稿について、WSJは「トランプ氏が支援する事業に冷や水を浴びせた」などと報じている。
マスク氏は15年設立のオープンAIの経営に携わったが、路線対立により18年に離脱。22年に対話型AI「チャットGPT」で旋風を巻き起こしたアルトマン氏をたびたび批判し、「設立理念に反し営利目的に走っている」として同社とアルトマン氏を提訴している。【ワシントン大久保渉】