ロシアの侵攻を受けるウクライナの情勢を巡り、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は6日、トランプ次期米大統領に対して、側近らから停戦へ向けた複数の提案がされていると報じた。トランプ氏は7日の米NBCとのインタビューで、「プーチン露大統領と話をすると思う」と発言し、その対応に注目が集まっている。
報道によると、提案はいずれも、ウクライナにおけるロシアの占領地域は現状のまま維持し、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)への加盟に向けた動きを停止することを推奨している。ウクライナ政府がNATOに少なくとも20年間は加盟しないと約束する見返りに、将来的なロシアの再攻撃に対する抑止力を高めるため、米政府が兵器供給を続ける案も浮上しているという。
ただ、トランプ前政権の関係者はWSJ紙に「安全保障に関する問題では多くの場合、トランプ氏は直感的に自ら判断を下す」との見方を示した。
トランプ氏はNBCとのインタビューで、「(6日以降)たぶん70カ国の首脳と話をした」と説明した。ウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議をしたとする一方、プーチン氏とはまだ話していないという。
ウクライナ情勢を巡っては、トランプ氏は「戦争を終わらせる」と繰り返し発言し、「大統領就任前に解決する」などとも豪語してきた。トランプ氏は「取引」を好むだけにその対応が焦点となっている。
一方、米国務省のミラー報道官は7日の記者会見で、トランプ氏が停戦の主導に意欲を見せていることについて、「交渉の時機はゼレンスキー氏が決めるべきであり、我々や他国が押し付けるべきことではない」と述べた。
ミラー氏によると、バイデン政権は来年1月までの残りの任期中に、これまでに連邦議会で可決されたウクライナへの軍事支援のうち未実行のものについて、早急に実施する考えだ。トランプ政権発足後の支援継続が不透明なことが背景にある。
米メディアによると、議会で可決された支援のうち、60億ドル(約9117億円)以上に相当する分がまだ実行されていない。ミラー氏はウクライナへのその他の支援についても、「同盟国と協議している」と語った。【ワシントン松井聡】