外国にルーツを持つ幼児や親との意思疎通に苦心する保育士や幼稚園教諭に役立ててもらおうと、かながわ国際交流財団が「受け入れガイドブック」を作成した。神奈川県内で生まれる新生児の18人に1人は外国ルーツとされ、多言語対応に戸惑う保育士らへの支援の必要性から企画。日本語や日本の習慣を知らない親への配慮などを盛り込み、「頼りになる1冊」となっている。【遠藤和行】
財団によると、外国人の子どもの支援として、小学校や中学校では通常授業と別枠の授業を設けるなどの配慮がある。一方、財団に寄せられる相談から、保育園や幼稚園には十分な支援がなく、保育士や幼稚園教諭が個人の努力で手探りの対応を余儀なくされているという。
財団はまず県内でも外国人比率が高い綾瀬市で実態把握を試みた。3~6歳の外国籍の子どものうち2020~21年に保育園にも幼稚園にも未入園の割合を調べたところ41%で、日本人の未就園(4・8%)に比べ8・5倍だった。
また、市内の保育園・幼稚園計24園に実施したアンケートでは、回答した22園のうち21園に外国人の園児が在籍し、残る1園も過去に在籍。保護者との意思疎通が大きな課題で、「電話で用件を伝えづらい」「感染症による出席停止の理解を得られない」などの回答があった。財団はこうした状況を受け、ガイドブックを企画した。
A4判のカラー、20ページ。「受け入れ準備」や「保護者とのコミュニケーション」など8章で、強調したい事項は漫画で織り込んだ。
「準備」の章では、事前に家庭内で使う言語や、両親が話せる母語以外の外国語、宗教、生活習慣、食事などを確認しておくと入園後に対応しやすくなると紹介した。
漫画の一つは、保護者が園から「水筒に水かお茶を入れてきて」と伝えられたエピソード。園側は「お茶」を「麦茶」と想定していても、保護者は「お茶にはカフェインが入っていて苦く、子どもが飲むものではない」と麦茶と想定できずに疑問に思うという。さらに、国によってはレモンティーやミルクティーを連想するとして、すれ違いになると例示した。
財団が運営する「外国人住民のための子育てサイト」や、国などの役立つホームページも紹介している。
財団は「保育士や幼稚園教諭に読んでもらいたい一方、保育士らの個人の努力では追いつかない現状がある。自治体の職員も読んで理解してほしい」と話している。
ガイドブックは、同財団のホームページから無料でダウンロードできる。