元徴用工訴訟を巡り、韓国政府傘下の財団が日本企業による賠償を肩代わりして裁判所に預ける「供託金」を韓国の全州地裁の職員が受理しなかったことについて、同地裁は15日、この職員の判断に対する財団側の異議申請を棄却した。
供託金は、賠償額相当の解決金を財団から受け取ることを拒否した被害者や遺族の分。受理されなければ、韓国政府の解決策が頓挫し、日本企業の韓国での資産を売却する「現金化」のリスクが残る可能性もある。
同地裁は解決金に関して、民法上、当事者が受け取り拒否の意思を示した場合は第三者による弁済が適用されないと判断。また、財団は賠償事案と利害関係がなく、財団と原告側で意見が分かれた場合は原告側の意思が優先されると指摘し、供託金を受理すれば「損害賠償制度の趣旨と機能を失わせる恐れがある」と説明した。
韓国外務省は16日、「抗告などの法的手続きを通じて裁判所の正しい判断を引き続き求めていく」との談話を発表した。
勝訴した元徴用工ら15人のうち、被害者と遺族計4人が日本側の謝罪がないなどとして解決金の受け取りを拒否。光州地裁などでも全州地裁と同様の理由で供託金不受理の判断が出ている。【ソウル日下部元美】
