およそ4・65人に1人が中学受験を選択――。首都圏模試センターの分析による首都圏の小学生の受験率だ。担当者は「中学受験ブームが到来し、過熱しているのは間違いありません」と話す。
だが、受験勉強という「スタート」には立ったものの、入試を受けるには至らず、取りやめた子どもたちの数字は明らかではない。
受験を断念、母ミチコさんの場合
その一人、東京都内に住むミチコさん(54)の長女(16)は、かつて中学受験を考えて机に向かっていた。
あのころを振り返り、ミチコさんは、ブログに思いをつづる。タイトルは「中学受験やめました」。勉強にやる気を見せない娘。一方で、受験の日は刻一刻と近づく。娘に対する言葉がきつくなっていった。
<自分から受験したいって言ったくせに、なぜちゃんとやらない>
<どうせ無理なんだから教材全部捨てなさい>
<他の子が普通にできていることがどうしてあなたにはできないの>
<受験の本番まであと○日、本番の日は待ってくれない>
正念場の6年生の夏。ついに、娘は「SOS」を発する。
「私はダメな子なの」
涙ながらに訴える姿に、我に返った。どれだけ娘を追い詰めていたのか、と。
<わが子に当たり続けてきたこの私。親にこんなふうに言われ続けたら。ムスメがやる気をなくすのも至極当然>
受験はやめた。思い起こせば、インターネットで目に留まったのは、成功体験記ばかりだった。同じように悩む人がきっといるはずだ。それが、あの日々を記録し、赤裸々に「反省」をつづる理由だ。
今後の動向は
首都圏模試センターによると、2023年の首都圏の私立、国立中学校の受験者総数(推定)は過去最多の約5万2600人となり、1999年(3万9300人)に比べ約1・3倍に。受験者数は15年から9年連続で増加する。
だが、この数字には含まれない。中学受験をめぐり、苦しみ、迷い、選択を迫られた人たちが大勢いる。【坂根真理】