徳島県知事選では、自民党県連が推薦した現職の飯泉嘉門氏(62)が元自民衆院議員の後藤田正純氏(53)に6選を阻まれた。20年の県政運営や全国知事会長としての実績を訴えたが、多選批判を封じられなかった。
「力不足に心からおわび申し上げる。本当に申し訳ありません」。飯泉氏は集まった支持者らに頭を下げた。
2019年の前回選でも後藤田氏が支援した元自民県議に多選批判を許し、薄氷の勝利を味わった。2月の出馬記者会見では「知事にモノが言えない構造があることに思い至らなかった」と県民感情をおもんぱかり、5期目の退職金の受け取り辞退まで表明した。
「限界を超えろ」。選挙戦では、自身に言い聞かせるようなキャッチフレーズを書いたのぼりを手に、03年の初当選以来というつじ立ちに取り組むなど「どぶ板」ぶりを見せた。肩からぶら下げたスピーカーを通して、「他の候補は昨年から走り回っている。出遅れ感が否めないが、何としても勝ち抜かなければ」と必死のアピールを繰り返した。
国政転身騒動も尾を引いた。21年衆院選の直前、県議会で「知事(の立場)では限界がある」と発言。衆院徳島1区からのくら替え出馬を模索したが、環境が整わず断念した。知事選出馬に際しても「変心」の説明に追われ、県民の理解を十分得られなかった。
元自民参院議員の三木亨氏(55)も立候補。保守が3分裂したことで、県内首長や有権者の支持も分散し、現職の強みを生かせなかった。【植松晃一、井手千夏】