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「なぜウクライナばかり」の声に考える 「これから」に生かすために


 「想像を超える支援をありがとう」「これ以上、求めるものはありません」――。日本で暮らすウクライナ避難民から、こんな言葉が聞かれた。ロシアの侵攻開始から1年となるのに合わせ、民間で最大規模の支援を展開する日本財団が2月20日に設けた記者発表の場での発言だった。一方で、手厚い支援については「なぜウクライナばかり」との疑問の声もある。日本財団ウクライナ避難民支援室の藤田滋さんは「今回の経験を『これから』につなげたい」と考えているという。【山田奈緒】

 日本は「閉鎖的」と言われる難民・移民施策をとってきた。だが、戦争という究極の緊急事態に直面し、ウクライナから逃れてきた人たちには官民ともに手厚い支援をしてきた。身元保証人のいない人は政府が、いる人は日本財団が日々の暮らしのためのお金を支給する。これまで日本に来た避難民は約2300人。財団の支援実績は約1900人に上る。

 財団は当初、支援対象の想定規模を「1000人」と発表していた。侵攻前の在日ウクライナ人の数(約1900人)や難民支援団体のヒアリングなどを参考に算出したが、来日のペースを踏まえて7月には「2000人」に修正した。

 支援の最大の目的は、安全な日本に来てもらい、生活してもらうことだった。生活費の支給や渡航費の補助、住環境整備にかかる経費の補助をする。「側面支援」として地域団体に助成金も出してきた。ただ、財団のこうした対応には、電話やメールなどで「なぜウクライナ避難民ばかり」と手厚さを疑問視するような意見が寄せられているという。

 「これまで難民支援や多文化共生のために活動を続けてきた人たちも、アフガニスタンやシリアの難民と比べて思うところはあるようだ」と藤田さん。ただ、単なる批判ではなく、これを機に社会が変わることへの期待も込められていると感じた。「私たちも、日本をより開かれた社会に変えたい思いが強い。ウクライナ避難民を最大限に支え、その経験を他の難民・移民、全ての外国人を支援する制度づくりに生かせれば」と話す。

 戦争の終息が見通せない中、多くの避難民たちは日本での長期的な生活を見据えている。今後のポイントとして、藤田さんは「思考の転換」を挙げる。避難民について、意識的にも無意識的にも「一時的に日本に逃れた、かわいそうな人たち」と捉えてしまう思考を、「日本社会に貢献してくれる人たち」と受け止め直せば、支援の幅は広がっていくとする。

 例えば、仕事の探し方。仕事を求める人と、人手がほしい企業をつなぐマッチングだけでは「不十分かもしれない」と考えているという。避難民へのアンケート(回答750人)では、約6割が大学卒業以上で、専門的な仕事でキャリアを積んだ人が多くいた。母国で積み重ねたキャリアを踏まえれば、その人にしかできない仕事を後押しする起業サポートなど、新たな支援策も考えられる。

 「自分のキャリアを生かし、日本社会に恩返しをしたい」と考える避難民は多い。避難生活の長期化の中、生きがいや暮らしの充実をどう図るかが重要な課題になってきた。藤田さんにとって、2022年6月にコルスンスキー駐日ウクライナ大使から財団に贈られたある言葉が一つのヒントになったという。「避難民への支援は未来への投資だと思ってほしい」

 財団は23年2月、さまざまな外国人が活躍できる社会に向けた支援制度を提言するため、有識者委員会を設けた。メンバーは、移民施策の専門家や難民支援の実務家、外国にルーツのある著名人ら。日本へ来る▽生活基盤を作る▽地域に定着して活躍する――の3段階に分け、課題を洗い出して議論する。

 委員会で整理する課題の一つは、身元保証人のあり方だという。政府の生活費支給の対象は身元保証人のない人に限られる。逆に言えば、避難民の身元保証人になる人は、それなりの負担を背負うことになる。藤田さんは「現場は身元保証人の大変さを実感している。経済状況も家庭事情もさまざまで、避難してきてほしいと呼び寄せた家族でさえ一緒に暮らせなくなる場合もある」と明かす。

 日本財団の有識者委は、各国の外国人施策も踏まえて議論を進めるという。カナダでは難民を民間で受け入れる場合、政府に認証された専門団体が支援を主導する仕組みがある。移民先進国とされるドイツでは、外国人を社会に統合していくために、国として語学や文化を教える仕組みを整えている。こうした事例に学びつつ、報告書を7月にまとめる予定という。

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